【完結】転生したら少女漫画の悪役令嬢でした〜アホ王子との婚約フラグを壊したら義理の兄に溺愛されました〜

まほりろ

文字の大きさ
上 下
47 / 50

47話「夢の終わりに⑤」漫画のコーエンとユリアのその後

しおりを挟む

「ユリア毒殺未遂事件に続き、ユリアが暴漢に襲われる暗殺未遂事件が起きた。

こっちはゲオルグの手下を捕まえたらすぐに吐いたよ。パーティーでディアーナ嬢が一人になるタイミングを狙い、その道のプロだと言って暗殺の計画を持ちかけたら、簡単に乗ってきたとね。

ディアーナ嬢は王子の婚約者という立場上、どんなに忙しくても王室主催のパーティーには出席しなければならなかった。

パーティーでディアーナ嬢を一人にするのは婚約者のお前なら簡単に出来ただろう」

学園よりパーティーという場のほうが、ディアーナを油断させられると思った。思惑通りディアーナは簡単に誘いに乗ってきた。

「もちろん毒殺や暗殺計画に乗ったディアーナ嬢も悪い。だが彼女は王太后に麻薬を盛られ続け正常な判断能力を失っていた」

母上がディアーナに麻薬を盛っていたことを、俺は今日まで知らなかった。

「ディアーナは筆頭公爵の娘だもの手放せないわ」

母上がボソリと呟いた。

「その割にはディアーナ嬢を大事にしていませんでしたね? 麻薬を盛ってまで働かせるなんて異常だ」

「あなたが悪いのよアーサー! コーエンはいつも優秀なあなたと比べられ、馬鹿だ、愚か者だ、出がらし王子だと罵られ蔑まれてきた! だから優秀な女をコーエンの嫁にして周囲を見返してやりたかったのよ!

ディアーナの功績を全てコーエンの手柄にして、周囲にコーエンを認めさせていたのよ! そのコーエンがディアーナを排除しようとしていたとわね!」

母上がヒステリックに喚き、俺を睨んだ。

「それならコーエン本人を努力させるべきだ、ディアーナ嬢に負担を強いるべきじゃない」

兄上が鋭い目で母上をねめつける。

「コーエンの出来の悪さは私が良く知っているわ! 努力してもどうにもならない子もいるのよ!」

母上に面と向かって出来が悪いと言われてショックだった。母上はいつも俺を肯定してくれたから。

「コーエンの見た目は私によく似ているし、自らの手で育てたから愛情が強いのよ! 生まれてすぐ取り上げられたアーサーとは違うの! それに……出来の悪い子ほど可愛いのよ! それが親ってものなのよ! 悪い!」

母上の愛情は歪んでいた。

「ディアーナ嬢がコーエンの婚約者のままだったのは、母上がディアーナ嬢が起こした事件をもみ消していたからですね」

「そうよ! あれだけ時間とお金をかけて育てたのよ! 簡単に婚約破棄されてたまるものですか! ディアーナは死ぬまで使役するつもりだった! 手駒にして一生こき使ってやる予定だったのよ!」

母上が兄上に向かって吠えた。年を重ねても美しいと褒め称えられて母上の面影はない。醜く顔を歪ませ口汚く兄上を罵るおばさんがいた。

「ディアーナ嬢を婚約者に据えておきたい王太后と、ディアーナ嬢と婚約破棄したいコーエン。それぞれの思惑がお互いの計画を阻んでいたわけだ」

兄上が吐き捨てるように言った。

俺の考えと母上の考えは真逆だった。俺はディアーナとの婚約を破棄したかった、母上は是が非でもディアーナを正妃にしようとしていた。

母上がディアーナの罪をもみ消していたんだ、俺の計画が上手く運ぶわけがない。

「コーエンが卒業パーティーで断罪イベントなんて起こさなければ! フリードがディアーナを斬り殺さなければ! なんとでも出来たのよ……!

男爵令嬢なんかにそそのかされて卒業パーティーで問題を起こし、その上その女と結婚するために王位継承権を捨てると前王に進言までするなんて!

前王は卒業パーティーで騒ぎを起こしたコーエンの罪を追求し、王位継承権を剥奪し男爵家に婿入りさせるつもりだったのよ!

私が【コーエンの王位継承権を剥奪しコーエンを男爵家の婿にするなら自害するわ!】と前王を脅さなければあなたは男爵家の婿になってたわ! 

王位継承権を残したまま一代限りの公爵位を賜われたのは私のおかげよ!」

母上が苦しそうに叫び、眉を釣り上げ額に青筋を浮かぶ俺を睨めつけた。

俺が王位継承権を剥奪されず一代限りとはいえ公爵の地位につけたのは、父上が俺とユリアの真実の愛に感銘を受けたからではなかった。母上が父上を脅迫したからだったのか。

王位継承権を放棄し男爵家の婿に入っていれば、俺とマルクとゲオルグの三人でユリアを共有しても、俺以外の三人が罪に問われることはなかったかもしれない。

いや……男爵家ではマルクとゲオルグまで養えない。二人は次男なので実家の爵位を継げないから王都で職に付くしかない、そうなれば男爵領にはたまにしか来れなかっただろう。

公爵だったときは高い金を払い優秀な家令を雇い公爵家の仕事をさせていた。だが貧しい男爵家ではそんなものは雇えない。俺は男爵の地位に就き慣れない仕事をしなければならなかった。

学園の勉強も王子の仕事もサボっていた俺に、男爵家の仕事を適正に処理できたとは思えない。仕事に追われユリアと過ごす時間をろくにとれなかっただろう……。

学園でユリアとマルクとゲオルグと楽しい時を過ごせたのは、ディアーナが生徒会の仕事と王子の仕事を代わりにしてくれたから。

卒業後も四人で遊んで暮らせたのは、母上が父上に掛け合い俺に王位継承権を持たせたまま公爵にしてくれたから。

俺は何一つ自分では出来ない愚か者だ。

王位継承権を持つ公爵だったから遊んで暮らせた、だが俺が王位継承権を持っていたからユリアとマルクとゲオルグは殺された。


しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

転生ガチャで悪役令嬢になりました

みおな
恋愛
 前世で死んだと思ったら、乙女ゲームの中に転生してました。 なんていうのが、一般的だと思うのだけど。  気がついたら、神様の前に立っていました。 神様が言うには、転生先はガチャで決めるらしいです。  初めて聞きました、そんなこと。 で、なんで何度回しても、悪役令嬢としかでないんですか?

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました

みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。 ここは小説の世界だ。 乙女ゲームの悪役令嬢が主役で、悪役にならず幸せを掴む、そんな内容の話で私はその主人公の姉。しかもゲーム内で妹が悪役令嬢になってしまう原因の1つが姉である私だったはず。 とはいえ私は所謂モブ。 この世界のルールから逸脱しないように無難に生きていこうと決意するも、なぜか第一王子に執着されている。 そういえば、元々姉の婚約者を奪っていたとか設定されていたような…?

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

処理中です...