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44話「夢の終わりに②」漫画のコーエンとユリアのその後
しおりを挟むユリアと結婚した次の年の五月、父である代十五代国王ロバートが崩御した。
六月、王太子であった兄のアーサーが代十六代国王に即位。
七月、マルクとゲオルグが国王に呼び出され、王都に行ったまま帰らなくなり。
一週間後、朝起きたら横で寝ていたはずのユリアが消えていた。
マルクとゲオルグが帰って来ないのは兄上のせいだ、ユリアが消えたことにも兄上が関係している。
そう確信した俺は単身王都に向かった。
王宮に入ってすぐ近衛兵に拘束され、手を後ろで縛られた。
玉座の間に連れて行かれた俺は、無理やりひざまずかされた。
兄上が側近に命じ人払いをする、玉座の間には俺と兄上だけが残された。
「兄上これはどういうことですか! なぜ弟である俺を拘束するのですか! マルクとゲオルグが王都に行ったまま帰らないのはあなたのせいなのでしょう! ユリアの失踪にも関わっているのは分かっています!」
「キャンキャン吠えるな、しつけのなってない人間は野犬よりたちが悪いね」
兄上は眉一つ動かさずに冷淡に言い放った。
「なっ……!」
「それとボクは国王だ、次からは【陛下】と呼ぶように」
「俺は兄上の弟ですよ!」
「お前のような不出来な弟を持ったことを、今日ほど悔やんだことはないよ」
「くっ……! マルクとゲオルグ、それにユリアをどこにやったのですか! 返してください!」
「あの三人ならもういない」
「えっ……?」
「マルク・ベーア、ゲオルグ・ホーナー、彼らは臣下でありながら王子妃であるユリアと通じた、故に処刑した。二人は実家から勘当されたのでもはや家名すらない」
兄上が温度のない声で告げる。
「……っ!」
あまりの衝撃に俺は息をすることも忘れ呆然としていた。
「王子妃ユリアは夫以外のものと通じ夫以外の子を宿した罪で、王子妃の身分を剥奪し処刑した」
「……そんな…………っ!」
兄上の冷酷な仕打ちに目の前が真っ暗になる。
「俺は親友のマルクとゲオルグと同じ人を愛した! だから三人でユリアを共有しただけです! 処刑するなどあんまりです!」
やっとのことで絞り出した言葉を兄上が鼻で笑う。
「愚か過ぎて話にならない、そんな理屈が通るとでも思っているのか? だとしたらお前はボクの想像の斜め上をいくおバカさんだね」
兄上に死ぬほど冷たい目で睨まれた。
「お前も王族の端くれなら知っているだろう? 王子妃が伴侶以外の男と通じたらどうなるか」
「それは……」
分かっていたはずだ、教育を受けたはずだ、どうして忘れていた?
どうしてマルクとゲオルグとユリアを共有することが最善の道だと信じて疑わなかった?
「マルク・ベーア、ゲオルグ・ホーナー、ユリア・マウラー、三人を殺したのはお前だよ」
兄上の刃のように鋭い言葉に、心臓を抉られる。
「ユリア・マウラーの実家の男爵家は取り潰した。他の男をベッドに連れ込み不貞を働くようなあばずれを王子妃として送り込んだんだ、その責任は取ってもらわないとね」
ユリアの実家は取り潰された……。
絶望に打ちひしがれる俺に、さらなる災難がふりかかる。
「離して! 離しなさいよ! 私を誰だと思っているの!!」
扉が開いたのと同時に、母上の金切り声が聞こえてきた。
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