【完結】転生したら少女漫画の悪役令嬢でした〜アホ王子との婚約フラグを壊したら義理の兄に溺愛されました〜

まほりろ

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39話「王妃陛下」王妃視点

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――シェーン・グランツ王妃視点――



お茶会の数時間前、玉座の間を訪れ私の考えを陛下にお伝えましたの。

相手は筆頭公爵のフォークト家、陛下からも援護射撃していただかないと。

その場にはアーサーもおりましたわ。アーサーがいるなら都合がいいわ、アーサーにも協力してもらいましょう。

私の話を聞いて陛下は渋い顔をなさり「お前はもうコーエンには関わるな」とおっしゃり首を横に振りました。

陛下は私に息子に会うなとおっしゃるの? なんて非道な! 私はコーエンの母親ですよ!

今日はコーエンの婚約者と側近を決める大事な日なのよ! 陛下がそんな弱気でどうするのですか!

アーサーが憐れむような目で私を見る。

「母上の考え方は危険ですね、それではフォークト公爵家とルーデンドルフ伯爵家の力を得るどころか、両家の心が王家から離れてしまう。

ディアーナ・フォークトとフリード・フォークトは愛し合っています。二人を引き裂くようなことをすれば、フォークト公爵家とルーデンドルフ伯爵家はこの国を去り、王家に刃を向けるでしょう。それはグランツ国にとって大きな損失です。

それ以前にボクはフリードの友としてフリードを失いたくない。愛し合う二人を守りたい。

母上のお考えはボクの守りたいものの障害になります。ボクも出来るなら生みの親に手荒なことはしたくありません。母上、どうかお考えを改めて下さい」

アーサーは私に説教をした。息子の分際で偉そうに!

「嫌よ! 私はコーエンの婚約者にフォークト公爵家のディアーナ嬢を選ぶわ! 側近はフォークト公爵家のフリード公子にするって決めているの! 親に指図するんじゃないわ! 何様のつもりよ!

天才だと持てはやされていい気になっているんじゃないの? この際だからはっきり言っておくわ、私はあなたよりコーエンが可愛いの! コーエンだけいればいいの! 私はコーエンのためなら何でもするわ! それが親と言うものでしょう!

コーエンのためなら他の誰を犠牲にしても構わないわ! 私自らの手を血に染めることもいとわないいわ! 何が何でもディアーナ・フォークトをコーエンの婚約者にするわ! フリード・フォークトをコーエンの側近にするのよ! 分かったらあなたは引っ込んでなさい!!」

私がアーサーを叱りつけると、アーサーは氷のような冷たい目で睨んできました。

何よ……! 普段は何を言っても眉一つ動かさないくせに、何で今日はそんな怖い目でじっと見てくるのよ!

「残念です、

アーサーが私を【王妃陛下】と呼んだ。もしかしてそんな風に呼ばれたのは初めてかもしれない。

はお考えを改めては下さいませんでした、計画を実行します。よろしいですね、父上?」

「……仕方あるまい。それに王妃の生殺与奪権はもはや私の手を離れている」

アーサーが陛下に問うと、陛下は疲れた顔で首を縦に振った。

「ふ、二人で何の話をしているの……?」

アーサーが死ぬほど冷たい目で私を見据える。

には少々頭を冷やしていただきます」

「頭を冷やすってどういうこと……!」

私に温度のない目を向けるアーサーの華麗な顔が、悪魔に見えました。

背筋がブルリの震える、アーサーはこんな目をする子だったかしら? 分からないわ、私はアーサーを視界に入れてこなかったから……。

「陛下……!」

陛下に助けを求めるが、私と目を合わせようとなさらない。

を離宮にお連れしろ!」

アーサーの命で屈強の男が何人も入ってきて、あっと言う間に私を担ぎ上げた。

「ちょっと! 私に触れていいのは国王陛下とコーエンだけよ! 触らないで! 私を誰だと思っているの!」

私が暴れても男はビクともしない。

「助けて下さい陛下!! アーサー! あなたの命令ね! 助けなさい! 私はあなたの母親よ!」

アーサーが凍えるほど冷たい目で私をねめつけた。

「ひっ……!」

あまりの恐ろしさに声にならない声が漏れる。

「ボクはもうあなたを母親だとは思っていませんよ。それに先にボクを切り捨てたのはあなたですよ、

アーサーが妖艶なほど美しい顔でニコリとほほ笑む。穏やかな笑顔のはずなのに、心臓が凍えるほど冷たく感じるのはなぜかしら。

「連れていけ」

「離しなさい! 助けて! 私が悪かったわアーサー! あなたが小さい頃お気に入りのおもちゃを取り上げたことがあったわね、そのことをまだ怒っているの? 同じものを買ってあげるわ! いいえもっと上等なものを買ってあげる! だから……助けなさい!!」

私が泣いても叫んでも、アーサーは眉一つ動かさなかった。







「お金で買えないもの、替えの効かないものもあるんですよ、

ボソリと呟いたアーサーの言葉は私の耳には届かない。



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