【完結】転生したら少女漫画の悪役令嬢でした〜アホ王子との婚約フラグを壊したら義理の兄に溺愛されました〜

36話「厳しい家庭教師」第二王子視点

――コーエン・グランツ第二王子視点――


兄上の監修のもとスケジュールが組まれるようになってから三日が過ぎた。

俺は本宮殿にある自室から、離宮に移され、父上と母上に会う事も、友達と会うことも禁止された。

初日に昨日まで俺を教えていた家庭教師が全員首になったことを知る。今までの家庭教師ならテストの点をごまかしても、サボって遊びに行っても多目に見てくれた。気に入らなければ首にすればよかった、天国だった。

今までの家庭教師の代わりに来たのが、幼少の頃の兄上を教えていた教師たち。

こいつらの厳しさは今まで教わってきた家庭教師の比ではなかった。

手が止まるとムチが飛び、問題を間違えるとムチが飛び、定期的に行われるテストの成績が悪いとまたムチで打たれる。

しかも普通のムチではない、打たれると雷に打たれたみたいにビリビリする特殊なムチだ。

朝六時から夜十二時まで、食事とトイレと睡眠の以外はずっと勉強している。

楽しみの食事も、味の薄い野菜しか入ってないスープと硬いパンとサラダのみ。

子羊のステーキも、キャビアも、フォアグラも、ロブスターも出て来ない。デザートに苺のケーキもフルーツタルトもついてこない。十時と三時のおやつもない。

家庭教師は二言目には、

「王太子殿下を教えしたときはもっと楽だった」

「三歳のときの王太子殿下は、今のコーエン殿下の百倍は賢かったです」

「王太子殿下はわずか五歳でこの国の法律を暗記し、算術・天文学・古代文字を習得されていました。それに比べてあなたはもうすぐ十三歳になるのに、簡単な算術すらまともにできない、古代語どころか国語も満足に習得していない、嘆かわしいことです」

兄上と俺を比較して悪口を言ってくる。

「止めた！　止めた！　止めた！」

今は心休まるトイレタイム。監視の護衛も口うるさい家庭教師もいない。

窓から抜け出すチャンスだ！

父上と母上に会いに行こう！　俺が兄上に虐待されていると伝えよう！

父上と母上ならきっと助けてくださる！
兄上を叱りつけてぎゅっという目に合わせてくださるはずだ！

「覚悟していてくださいよ兄上！　俺をこんな目に合わせたことを後悔させてあげます！　泣きべそかいて謝っても許して上げませんからね！」

父上と母上にしかられる兄上を想像すると、自然と口元が緩んだ。

俺はトイレの窓から抜け出し、本宮殿へと向かった。

玉座の間にいる父上と母上に兄上の悪行を報告してやる！

最後に笑うのは俺だ！