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29話「チョコレートフォンデュ」
しおりを挟む王室主催のお茶会だけあって、警備は厳重。
城の衛兵が一台一台馬車を止め、御者や同伴の使用人などのボディーチェックや手荷物検査を行っていた。
私たちの乗った馬車のがチェックを受ける番になる。だがフォークト公爵家の馬車だと分かると、招待状を見せるだけですんなりと通れた。
お茶会は中庭で行われるらしく、手入れの行き届いた庭園には、テーブルと椅子が整然と並び、テーブルの上には形の良いお菓子と美しいティーセットが並べらんでいた。
貴族の子息や令嬢がすでに集まり、いくつかのグループをつくり談笑していた。
王室付きの執事さんが、主催者の王妃様と第二王子のコーエン様が少し遅れて会場入りすることを告げる。
お茶会に招待されたのは、十歳から十四歳までの夜会デビュー前の少年と少女。
十四歳以上の方でも招待客の婚約者として出席は認められています。フリード様のように。
パーティーにはフリード様はお知り合いの方もいらしていたようで、フリード様はお知り合いに合われる度に「彼女の名はディアーナ・フォークト、僕の婚約者で最愛の人だよ」と紹介して下さいました。
今回のお茶会に参加した目的の一つが、一カ月前の婚約披露パーティーに出席されなかった方々への挨拶。
この婚約が政略的なものではないこと、私たちが深く愛し合っていることを多くの人に知ってもらう必要があります。
私の顔を見て顔を赤らめた貴族の令息の耳元で、フリード様が「ディアーナにちょっかいを出そうとしたら殺すよ」とささやいていた気がするのですが、私の聞き間違いですよね?
フリード様が会う人会う人の前で「愛しい人」「僕の女神」「愛している」「ディアーナなしでは生きていけない」などとおっしゃるので、恥ずかしさで顔が真っ赤に染まり腰が砕けそうになる。
ふらつく私をフリード様が支えてくれなかったら、幸せ酔いで倒れるところでした。
「皆さん、チョコレートフォンデュの用意ができましたよ」
王宮の執事さんがそう告げると、物珍しさもあってチョコレートの噴水? に皆の視線が集まる。
チョコレートは高級品。そのチョコレートをふんだんに使ったチョコレートフォンデュは、貴族の子息と令嬢しかいないお茶会でも注目の的でした。
貴族のお嬢様、お坊ちゃまといってもまだ子供。行儀などそっちのけで、皆が一斉にチョコレートフォンデュに向かって駆け出す。
「フリード様……!」
「ディアーナ!」
私は人の波にのまれ、フリード様とはぐれてしまいました。
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