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25話「ディアーナは誰にも渡さない」フリード視点
しおりを挟む――フリード・フォークト視点――
ルーデンドルフ伯爵家の次男として生まれた僕は、八歳でフォークト公爵家の養子になった。
フォークト公爵家の一人娘ディアーナ・フォークトと結婚し、跡を継ぐという名目で。
僕が初めてフォークト公爵家を訪れたとき、ディアーナはまだ五歳だったを。
金色のふわふわした髪、サファイアのようにキラキラと輝く髪、珊瑚色をしたぷるぷるの唇、雪のように白い肌……真紅のドレスを着たビスクドールのように愛らしく、可憐な少女に僕は一目恋に落ちた。
この愛らしい少女を将来自分のお嫁さんに出来る、そう考えると背中に羽が生えたみたいにふわふわとした気持ちになった。
ディアーナは僕が将来の結婚相手だとは知らなかったようだ。幼いディアーナは兄が出来たことを無邪気に喜んでいた。
それでもいいと思った、ディアーナが年頃になるまでは優しい兄でいよう。
フォークト公爵家の養子に入って五年が過ぎたある日。日に日に可愛くなっていくディアーナに僕の理性は崩壊しかけていた。
お茶や誕生日パーティーを開けば、ディアーナと年の近い令息はディアーナに夢中になった。ディアーナに話しかけて取り入ろう、あわよくば自分が婚約者に……と考えて近づいてくるものが増えた。
ディアーナは僕の婚約者だ! ディアーナと将来結婚するのは僕だ! ディアーナに近づこうとした令息たちは少々手荒に牽制しておいた。
ディアーナの婚約者は僕だ、僕はそのためにフォークト公爵家の養子になった。だが五年が過ぎても公の場で婚約者として発表されていたない。
このままディアーナの兄のままだったら……成長したディアーナに婚約を拒否され、ディアーナに甘いフォークト公爵夫妻がディアーナの要求を受け入れたら……僕たちの婚約を発表する前にディアーナを他の誰かに奪われたら……そう考えると不安で不安で気が狂いそうだった。
その頃の僕はアホだった。ディアーナが兄のように慕ってくれているだけでも十分幸せなのに、ディアーナに異性として意識してほしいと欲を出してしまったのだから……。
ある日僕はいつものようにディアーナに添い寝し、絵本の読み聞かせをしたあと、ディアーナの唇に口づけた。
ファーストキスを奪われたディアーナは驚いた顔で僕を見ていた。
そこでやめればよかったのだが愛らしいディアーナに歯止めがきかなくなり、ディアーナの服を脱がせ、胸の飾りに口づけ、パンツの中に手を入れた。
パンツを脱がそうとしたとき、ディアーナに泣いて騒がれて、ベッドから追い出された。
次の日から、ディアーナは僕と口を聞いてくれなくなった。
兄のように慕っている相手に性的な目で見られたんだのだ、ディアーナが戸惑うのも無理はない。
その戸惑いは次第に嫌悪感に変わり、ディアーナは僕と話をするどころか、目を合わせることもしなくなった。
自業自得とはいえ、ディアーナに無視される日々はとても辛かった。こんなことなら優しい兄のポジションのままでいればよかったと後悔した。
ディアーナが僕を無視するようになってからも、僕はずっとディアーナを思っていた。
いつかこの思いがディアーナに届くと信じて、できる限りのことをした。
だがディアーナが僕に心を開くことはなかった。
ディアーナとの関係が改善しないまま時だけが無情に過ぎ、僕は王立学園に入学する年になっていた。
本当は三年間寮生活を送るのが決まりだけど、お父様とお母様にわがままを言って、週末だけ公爵家に帰ってきていた。
相変わらずディアーナには無視されていたけど、無理を言って帰ってきて良かったと思っている。
まさかディアーナが池に落ちて溺れるなんて。
ディアーナの叫び声を聞いたとき、僕は池に飛び込んでいた。
岸に上げたディアーナはぐったりしていたて、このままではディアーナが死んでしまうのではないかと、うろたえた。
必死で人工呼吸をするとディアーナは息を吹き替えした。
ディアーナの看病と称して、ディアーナが目を開けるまでディアーナの側についていた。
髪をなで、ディアーナの名を呼ぶ。
絵本のお姫様のように口づけで目を覚ませば……と思い、何度か口づけした。
そうして目を覚ましたディアーナは僕をうっとりした目で見て「愛しのフリード様」と呼んだ。
目覚めたディアーナは人が変わったように穏やかで優しい性格になっていた。
幼い頃のディアーナはとても優しくて愛らしい性格の子だったから、昔のディアーナに戻ったようだと思った。
ディアーナはいつの頃からかわがままを言うようになり、使用人に辛く当たるようになった、まるで何らかの強制力に支配されているみたいに……。
その強制力から開放され、本来の性格に戻ったように僕には見えた。
池で溺れてからディアーナは僕を警戒しなくなった。もしかしたら池で覚えたショックで記憶が混乱しているのかもしれない。
僕はこの機を逃さず、名実ともにディアーナの婚約者になろうと計画した。
六月には王室主催のお茶会が開かれてる。第二王子の婚約者選びと側近選びの場であることは公然の秘密だ。
ディアーナがそのお茶会で第二王子に見初められたら……! 僕は戦慄した。
ずっとディアーナが他の男に奪われたらどうしよう、という不安が心の底にあった。
別の世界の預言書にディアーナと第二王子の婚約が決定事項として書かれているような、底しれない不安。
第二王子のコーエン様は、親友のアーサーの弟。
だが第二王子がディアーナを婚約者に選んだら、僕は迷わず第二王子を殺し、ディアーナを連れて国外に逃亡するだろう。
そうなったらフォークト公爵家も実家のルーデンドルフ伯爵家もお取り潰しだ。
でも僕は、僕に心を開いてくれたディアーナを手放したくなかった! 僕に好意的な目を向けているディアーナの瞳に他の男を映したくなかった!
ディアーナを第二王子の婚約者なんかにさせない! ディアーナは僕の婚約者だ!
池で溺れてからディアーナは僕に好意を寄せているようだ。
自分のことを「私ももう十三歳、子供ではありません」と言ってるし。
三年前のことを怒っているか尋ねたら「いいえ全然! 全く気にしておりませんわ! お兄様!」と答えたし。
僕のことを好きかどうか尋ねたら「す……す、す、す、好きです! 大好きです!!」と言ってくれたし。
部屋に絵本の読み聞かせに言ってもいいか尋ねたら「だ……だめじゃありません! ぜひいらしてください! お兄様ならいつでも大歓迎てす! お待ちしております!」と快く了承してくれた。
「大歓迎」ね、言質は取ったよ。撤回はさせない。
三年前、絵本の読み聞かせ中にした行為を許してくれたんだね、嬉しいよ。
ディアーナに性的なイタズラをした僕を、部屋に招き入れるということは、ディアーナは性的な行為を受け入れる心の準備ができたというこだと、僕は都合よく解釈した。
お父様とお母様がディアーナが僕との婚約を受け入れてくれたと言ってたし。
遠慮なくディアーナの初めてを奪わせてもらうよ。今度は泣いても叫んでも途中でやめないからね。
ディアーナの処女は僕のものだ。
僕はディアーナの部屋に行き、絵本の読み聞かせをし、ディアーナの処女を奪った。
ディアーナを傷物にしてしまえば、他の誰かに横恋慕されてもディアーナを渡さなくて済む。たとえ相手が第二王子でも、ディアーナが傷物では婚約者に出来ない。
お父様とお母様に婚前に性行為をしたことを伝えたら若干引いていた。
でもこれでディアーナは他の人のお嫁にはなれない。「僕が責任を取ってディアーナと結婚します! 幸せにします!」お父様とお母様に頭を下げ、頼み込んで正式に婚約の書類を整え、盛大に婚約発表パーティーを開いてもらった。
王室に婚約の届け出を出しただけでは安心出来なかった。公の場で僕たちが愛し合っていること、ディアーナが婚約者であることを知らせたかった。だから盛大に婚約披露のパーティーを開いてもらった。
もうすぐ王室主催のお茶会が開かれる。打てるだけの手は打った。
だけどなんでだろう? そこはかとない不安が胸の中に残るのは……。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
※※※更新遅くなりました。
新作小説を投稿しました。
「卒業パーティーで【真実の愛を見つけたから婚約を破棄する!】と言い放った王太子が、翌日【側室になって仕事だけしてくれ!】と言ってきた」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/596473892 #アルファポリス
全18話、最終話まで予約投稿済みです。よろしくお願いします。
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