【完結】転生したら少女漫画の悪役令嬢でした〜アホ王子との婚約フラグを壊したら義理の兄に溺愛されました〜

二十四話「王太子の憂い」王太子視点

――王太子アーサー・グランツ視点――


王太子専用の馬車の中。

「来月の王室主催のお茶にボクも出る、スケジュールを開けておいてくれ」

「殿下、その日は鷹狩りに行かれるご予定では」

「鷹狩りはキャンセルだ」

「かしこまりました。ではそのように」

来月の王室主催のパーティーは、第二王子コーエンの花嫁選びと側近選びの場。

親友とその婚約者が出席するなら、ボクも見ておかないとね。

乳母と教育係に育てられたボクと違い、弟は母上の手で直に育てられた。

コーエンは勉強が出来ない。剣術の才能も魔法の才能もない。それならせめて努力をして人並みになればいいのに、全く努力をしない。

弟が得意なのは母上と父上の関心を引き、二人の愛情を独り占めすること。

今までお気に入りのおもちゃは全部弟にうばわれてきた、年上なのだから我慢しなさい、いずれお前は国王になるのだから他の物は我慢しなさい、国王になれない可哀相な弟に譲りなさいと言われ……。

だけどコーエン、今回ばかりはボクは譲るつもりはないよ。ボクの親友とその婚約者はお前には渡さない。

コーエンがフリードの剣神の才能が気に入って側近にしようとしてもさせない。

ディアーナ嬢の美しくしさを気に入り、婚約者にしようとしてもだめだよ。

あの二人はセットでボクに仕えてもらうからね。

フリードをボクの近衛隊に入れるには、ディアーナ嬢が鍵だ。フリードのディアーナ嬢への執着心は並外れている。二人にはいつまでも仲睦まじくいてもらわないとね。

コーエンも十三歳になるし、そろそろ分別をわきまえてもいい頃だね。