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二十三話「トントン拍子に事は進み」③
しおりを挟む「王太子の近衛隊に入るることは、僕にとっても悪い話じゃないからね」
「フリードは一筋縄じゃいかなくてね、王太子の近衛隊に入る条件として夕方に二時間の休憩を要求されたよ」
「二時間の休憩ですか?」
「それも三年間毎日だ。妹が学園に入学したら、帰宅する時間に迎えに行きたいと言われてね」
「えっ?」
王太子殿下のお言葉に思わずお兄様の顔を仰ぎ見る。三年間帰宅時間に学園に迎えに来るとか、フリード様過保護すぎます。
「清楚で可憐なディアーナに悪い虫が付いたら困るからね」
フリード様が私の目を見てにっこりとほほ笑む。
そんな要求をするフリード様もフリード様ですが、それを呑む王太子殿下も王太子殿下です。
「王太子殿下、わがままを言ってすみません。ご迷惑ではありませんか?」
おずおずと王太子殿下に尋ねる。殿下の近衛隊が二時間も休憩をとるなんて。
「そのくらいの条件ならどうとでもなります。こちらとしては他の人間に剣神持ちを取られるより、条件を呑む方がずっといいんですよディアーナ嬢」
王太子殿下が爽やかな笑顔で答える。
お父様は槍聖持ち、お母様は魔法の才能をお持ち。私が考えてるより、フォークト公爵家は王家にとって重要な存在なのかもしれない。
「王太子殿下、隣国からの客人が着く時間です」
王太子殿下のお付きらしき方が、次の予定を知らせる。
「もうそんな時間? 残念だなディアーナ嬢とはもう少し話をしたかったのに」
「本日はお忙しい中わざわざお越しいただきありがとうございました、王太子殿下」
「堅苦しい挨拶はいらないよ、フリードの愛らしい婚約者殿には次はいつお会いできるかな?」
「アーサー、ディアーナは僕の婚約者だ、ちょっかいをだすようなら親友でも容赦はしないよ」
フリード様がギュッと私を抱き寄せ、王太子殿下を睨む。
相手は王太子殿下ですよ、不敬罪に問われますよ。
「怖いな、ちょっとお話がしたいって言っただけだろ。女を寄せ付けなかったフリードがここまで大切にするディアーナ嬢に興味が湧いたんだよ」
王太子殿下がニコニコと笑いながら言う。笑顔の仮面を被っている感じがする。本心が読めない人だ。
「ディアーナ様とフリード様は、来月王宮で開かれるお茶会に出席します」
王太子殿下のお付きの人が答える。
「来月王宮だ開かれるお茶会? フリードもディアーナ嬢も行くのかい?」
「はい、王太子殿下」
「ディアーナが出席するパーティーなら当然僕も出席するよ」
今日の婚約披露のパーティーに来れなかった貴族もいる。フリード様はそういった方たちにも私を婚約として紹介したいらしい。
「そうか二人とも、出席するのか……」
「王太子殿下、お時間が」
「分かったもう行く、フリードまた学園で、ディアーナ嬢またお会いしましょう」
「ごきげんよう王太子殿下」
「今日は来てくれてありがとう、アーサー」
フリード様が王太子殿下を呼び捨てにするたびにドキドキしてしまう。二人は親友だから名前に敬称をつけないで呼び合っているのでしょうが。学園ならともかくこういう場ではどうなのでしょう?
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