【完結】転生したら少女漫画の悪役令嬢でした〜アホ王子との婚約フラグを壊したら義理の兄に溺愛されました〜

十八話「これは絵本の読み聞かせ……ですよね？お兄様？？」②

「じゃあ始めようか」

フリード様が耳元でささやく。

有名声優さん似の艶やかなボイスに、腰が砕けそうになる。座っててよかった。立っていたら膝がガクガクしてみっともないことになっていた！

「昔々、あるところにシンデレラという美しい娘がおりました」

お兄様が持ってきた絵本を開く、絵本ってシンデレラだったんだ。

日本人が描いた漫画の世界だし、シンデレラがあっても不思議じゃないよね。

「シンデレラのお母さんは、シンデレラが幼いときに亡くなってしまいました」

シンデレラなら、大丈夫お話を知っているしハッピーエンドだと分かっているからみっともなく泣くこともない。

これが人魚姫やマッチ売りの少女だったら、内容が分かっていても号泣していたかもしれないけど。

それにしても、フリード様のお声、爽やかさの中に、色気があって、耳もとで話されるとたまらない。

もう少し長生きすればよかったなぁ、人気漫画だったからドラマCD化やアニメ化やゲーム化したかも？

あの漫画がエッチなゲームになってたら、フリード様がいやらしい言葉をささやくのをイヤホン越しに聞けたのね！　くっ、もう少し長生きしたかったわ！

「意地悪な継母と義理の姉たちは、シンデレラのお母さんのドレスを破き、笑いながら馬車に乗り込みました…………退屈だった？」

「えっ？」

「上の空みたいだから」

「そんなことは……！」

フリード様のお声に聞き惚れていましたとは、言えない。

「続きはディアーナに読んでもらおうかな？」

「はいっ？」

フリード様に絵本の読み聞かせ？　ただ聞いているだけのときよりハードルが高いよ！　私にできるかな？？

「だめかな？」

フリード様が小首を傾げる。

フリード様にお願いされて、嫌と言えるはずがない！

「大丈夫です！　私やります！」

「よかった」

フリード様がにっこりとほほ笑む。

この笑顔のためなら何でもします！

「ドレスを破られてしまったシンデレラは舞踏会に行けません。シンデレラはお母さんのドレスの前で涙を流しまし……た……！　……ぁっ」

いつの間にか腰に回されたフリード様の手が私のお腹を撫でた。

フリード様の反対の手が、ネグリジェ越しに私の太ももに触れている。

「どうしたの？　続けて」

フリード様の瞳には、相手を従わせる力強さがあった。