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十話「ディアーナ・フォークト、初めての謝罪」
しおりを挟む「おはようございます、お父様、お母様、お兄様」
「おはようディアーナ、もう体調はいいのかい?」
「心配したのよ」
「顔色は良さそうだね」
今日は体調が良いので、食堂で家族とご飯を食べることにした。
「はい、もうすっかりよくなりました。ご心配をおかけしました」
ペコリと頭を下げるとお父様とお母様とお兄様は、キョトンとした顔をしていた。
私が頭を下げるのがそんなに珍しいのかしら?
「お兄様は私を助けるために池に飛び込んでくださったとか、助けて下さりありがとうございます」
「可愛い義妹が溺れていたら飛び込むのは当然だろ?」
お兄様が爽やかにほほ笑む。ああっ、かっこいい!
漫画のフリード様は二十一歳、成人して大人の色気を纏ったフリード様もいいけど、幼さの抜けきらない美少年時代のフリード様もいい! 眼福!
自分の顔に熱が集まっているのが分かる。このままフリード様と見つめ合っていたら体が溶けてしまう~~!
フリード様から目を逸らし、自分の席につく。
両親を見ると、私とフリード様を交互に見て、にこやかにほほ笑んでいた。
義理の兄妹が仲良くしているのが嬉しいのかな?
「あのお父様、あの日私に付いていた使用人たちのことなのですが……」
確かメイドが一人と橋の修理をしていた執事が一人。
あの人たちの忠告を聞かず池に落ちた。心配をかけてしまった、もしかしてお父様に叱られたかもしれない。彼らにもちゃんと謝りたい。
「ああ、あの者たちなら部屋で謹慎させている。重い罰を与え屋敷から追い出すつもりだ」
「止めてくださたい!」
私は椅子から立ち上がっていた。
お父様とお母様、お兄様が驚いた顔で私を見ている。
「あの二人はちゃんと私の事を止めてくれました。橋は修理中だ、近づいては行けないと、その忠告を無視し橋を渡ったのは私です。罰するなら私を罰してください! 彼らに罪はありません!」
私の言葉に三人は目を見開いた。
「お父様、お母様、お兄様、私今までわがままで世間知らずで人でなしでしたわ。迷惑ばかりかけて申し訳ありません」
その場で深く頭を下げる。
顔を上げるとお父様がぽかんとした表情で口を大きく開けていた。
「それから使用人達を一箇所に集めていただけますか? 今まで酷い態度をとって来たことを謝りたいのです」
お父様とお母様とお兄様は私の話を聞き、唖然としている。
「でぃ、ディアーナが頭を下げた……」
「ディアーナが人に謝るだなんて……」
「ディアーナ、池に落ちたときもしかして頭を打った?」
三分ぐらい経過して、三人から出てきた言葉はこれだった。
ディアーナ……今までどんな生活してたのよ。
「あの、私もこの春十三歳になりましたし、生活態度を改めようかと……」
この場を乗り切ろうと、作り笑いを浮かべる。
再びの沈黙。
む、無理があっただろうか?
十三年間、わがまましまくってきた娘がいきなり使用人に謝罪したいなんて言ったら、家族に怪しまれるよね~~!
「すっ……素晴らしい! さすが我が娘!!」
「ディアーナは可愛らしくて天使だと思っていたけど、心も天使だったのね!」
「大人になったね、ディアーナ」
お父様とお母様が号泣している……!
フリード様がニコニコと笑顔を浮かべている!
「ディアーナ、最高!」
「ディアーナ、愛しているわ!」
「良い子だね、ディアーナ!」
お父様とお母様に泣きながら抱きしめられ、フリード様に頭をよしよしされた。
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