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4話「信頼」
しおりを挟む「ライも私が妹を虐めていたって思ってる?」
「まさか!
わたくしは男と見れば誰にでも媚を売る娼婦のような女の戯言を信じたりしませんよ。
アバズレ女の言うことを真に受けるのは、間抜けな第一王子ぐらいですよ」
ライの言葉を聞いてホッとした。
「お嬢様が馬鹿王子との婚約を破棄されねいてよかった」
「私から婚約を破棄したんじゃなくて、向こうから破棄されたんだけどね」
「どちらでも同じです。
今お嬢様は誰のものでもない」
「私の心は四年前からずっとライのものよ」
「わたくしとの約束を忘れていたのに?」
「それはごめんなさい」
「許します。
あの日お嬢様は号泣していた。
わたくしの言葉がお嬢様の耳に届いていなかったのでしょう」
確かライが旅に出る前に何かお願いされて、「何でもするから必ず帰ってきて!」と言ったような気がする。
「もう一度言います。
お嬢様、わたくしと結婚してください」
「はい、喜んで」
私は笑顔で答えた。
「私ね、王子から婚約破棄されて、侯爵令嬢の身分も剥奪されて、この国の人には妹を虐めた悪女として認識されてるの?
ライはそれでもいい?
こんな私でもお嫁にしてくれる?」
「身分がなくてもお嬢様は素敵なレディです。
誰に喧嘩を売ってでも絶対に娶ります」
「ありがとう、ライ!」
「わたくしの方からも一つだけ。
わたくしはこの国の王族に喧嘩を売りました。
お嬢様はそんなわたくしでも受け入れて下さいますか?」
「もちろんよ!
王族への喧嘩上等!
ライと一緒なら逃亡生活も楽しそうだもの。
あっ、でもライが刺客に追われて怪我しちゃったら……」
「その心配は無用ですよ、お嬢様。
わたくしはSランク冒険者ですから。
それに……お嬢様、少しの間耳を塞いでいて下さい」
私が耳を塞ぐと、ライが頭上に向け手をかざし魔法弾を放った。
一瞬ののち、天井はきれいに吹き飛ぶ。
塔の外には、満天の星空が広がり、星の明かりに照らされ沢山のドラゴンが空を飛んでいた。
「ワイバーンに、バハムートに、リヴァイアサンに、ウロボロスに、ケツァルコアトルに、ブラックドラゴンに、レッドドラゴンに、イエロードラゴンに、グリーンドラゴンにブルードラゴン……っっ!!
こっ、こんな数のドラゴンが……どうしてここに?!」
「旅の途中で出会ったわたくしの眷属たちです」
「ライの眷属……?!
こんなにたくさん??」
「一匹のドラゴンを倒して眷属にしたら、次の日から『俺とも勝負しろ!』と言って喧嘩をふっかけてくるドラゴンが、次から次に現れまして……」
「それでこの数のドラゴンが仲間になったの?」
「そういうことです」
一匹見たら五十匹、みたいなことがドラゴンでも起こるのね。
「だからお嬢様、逃げる必要なんてないんです。
この数のドラゴンを従えるSランク冒険者に喧嘩を売ったらどうなるか、この国の王族と重臣たちに教えてやりましょう」
そう言って、ライはニッコリと笑った。
今ライの後ろに黒いオーラが見えるのだけど、気のせいかしら??
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