78 / 83
後日談・九「双子」*
しおりを挟む――半年後――
「…………それからお姫様は王子様と幸せに暮らしました」
オルゴールをかけ、物語を聞かせる。
ソーンが腕の中でうとうとしている。
ボクはソーンをベビーベッドに寝かせた。
隣のベビーベッドではフェオが寝息を立てている。
フェオは寝付きがいいけど、ソーンは寝付きが悪い。ボクが抱っこしておとぎ話を聞かせないと眠らない。
ソーンが眠りにつきホッと息をつく。
「エアネスト、私以外のものに母上の形見のオルゴールを聞かせ、おとぎ話を読み聞かせるなどあんまりだ」
ヴォルフリック兄上に後ろから抱きしめられた。
「ヴォルフリック兄上、子供みたいなことを言わないでください。ソーンはヴォルフリック兄上の息子でしょう?」
子供達が眠ったばかりなので小声で話す。
「ソーンにかまけてばかりで、私のことはほったらしかしではないか」
ヴォルフリック兄上がボクの胸を服の上からなでる。
「待ってください、ヴォルフリック兄上」
兄上がボクのシャツのボタンを外していく。
赤ちゃんとはいえ子供たちが寝ている部屋でこんなみだらなこと……。
体を反転させられ口を吸われる。ヴォルフリック兄上の舌がボクの舌を絡めとる。
「ん、あっ……!」
服の中に手を入れられ、胸の突起をいじられる。
そんなとこに触れられたら、下半身がうずいてしまう。
唇を離されたとき、互いの間に銀の糸が引いていた。
「したい」
「ヴォルフリック兄上……」
下肢に熱が集まる。キスでとろんとろんにされてしまった。
最近子育てが忙がしくて、ヴォルフリック兄上とそういうことをしていなかった。
「ボクも……したいです」
ヴォルフリック兄上の唇にボクから口付ける。
「うわぁ~~ん!」
割れるような泣き声に、はっとする。
ベビーベッドを見ると、ソーンが泣いていた。
早くあやさないとフェオも起きちゃう。
「私より、ソーンが大事か?」
ソーンの元に向かおうとしたら、ヴォルフリック兄上に手を強く握られ、真顔で尋ねられた。
赤ん坊(しかも息子)相手に本気で嫉妬しないでほしい。
「うっ、うっ……うえ~~ん!」
「大変、フェオも起きちゃった」
「待て、答えをまだ聞いていないぞ……!」
ヴォルフリック兄上が真剣なまなざしをボクに向ける。
これはヴォルフリック兄上が一番ですと言わないと、永久に離してもらえないかも。
「ヴォルフリック兄上が一番大切です」
ヴォルフリック兄上の顔を見て、ニッコリとほほ笑む。
「そうか」
ヴォルフリック兄上の顔がパッと輝く。
「ヴォルフリック兄上はフェオをあやしてください、ボクはソーンをあやしますから」
これで子供たちをあやせる。
「まて、私がソーンをあやす」
ヴォルフリック兄上がソーンを抱き上げる。
「ギャァァァァーー!!」
ソーンが火がついたように泣き出した。
ソーンはヴォルフリック兄上が抱っこすると、いつも大泣きするのだ。
「もう、だから言ったでしょう?」
ソーンがヴォルフリック兄上の頬をペチペチとたたく。
ボクはヴォルフリック兄上の腕から、ソーンを抱き上げる。
「よしよし、ソーンはいい子だね、泣かないで」
「キャッ、キャッ」
ボクがあやすと、ソーンは泣き止んだ。
「こいつ、わざとやっていないか?」
ヴォルフリック兄上がソーンを威嚇(いかく)するように鋭い視線を向ける。
「そんなわけがありませんよ、ソーンは赤ちゃんなんですから。兄上はフェオをあやしてください」
フェオはベビーベッドでわんわん泣いているのだ。一人で二人を同時にあやせないのが双子の親のつらさ。
「わかった」
しぶしぶといった顔で、ヴォルフリック兄上がフェオを抱き上げる。
「キャッ、キャッ」
ヴォルフリック兄上が抱っこすると、フェオはすぐに泣き止んだ。
フェオはボクよりもヴォルフリック兄上になついていて、ヴォルフリックが抱っこすると、わずかな時間でご機嫌になるのだ。
「ふふふ、フェオはヴォルフリック兄上が大好きだね」
「残念だが、私が愛しているのはエアネストだけだ」
どうしてそういう回答になるの? でも嬉しいから許す。
「ボクもヴォルフリック兄上が大好きです」
「エアネスト」
「ヴォルフリック兄上……」
ヴォルフリック兄上と口づけしようと、顔を近づけたとき、ソーンがボクの髪を引っ張った。
ボクの唇とソーンの唇が重なる。
ボクはすぐにソーンから唇を離す。ソーンの大切なファーストキスをうっかり奪ってしまった。
ソーンがボクの服の中に手をいれ、胸の突起を口に含む。
「ヒャッ……!」
ヴォルフリック兄上に開発された体は、ちょっとの刺激で反応してしまう。
「もう、ソーンはいたずらっ子だね」
お腹が空いたのかな? でもボクの胸を吸ってもお乳は出ないよ?
「エアネスト、ソーンを私に渡せ!」
ヴォルフリック兄上がフェオをベッドに寝かせ、腰のバスタードソードに手をかけた。
ヴォルフリック兄上の額には、無数の青筋が浮かんでいる。
「ヴォルフリック兄上、落ち着いてください! 赤ちゃんのしたこととですから!」
ボクはソーンを抱いたまま、後退る。
「妻の唇を他の男に無理やり奪われ、乳首まで吸われたのだ! 黙っていられるか!!」
言い方! 事実だけど相手は赤ん坊だよ? 下心なんて一ミリもないよ。ちょっとしたアクシデントだよ?
「ソーンはヴォルフリック兄上の息子ですよ!」
「我が子でもゆるせん! エアネストに手を出したらどういう目にあうか、今のうちに厳しくしつけてやる!!」
ヴォルフリック兄上の目は、ネズミを狩る鷹(たか)のように鋭かった。
この日ボクは、ヴォルフリック兄上をなだめるのにとても苦労した。
ボクがヴォルフリック兄上をなだめ終えたとき、ソーンはフェオの隣ですやすやと眠っていた。
◇◇◇◇◇
15
お気に入りに追加
2,611
あなたにおすすめの小説


元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる