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3話「タイムリープ」ベルティーナ視点

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――ベルティーナ視点――


私の名前はベルティーナ。名門ルンゲ公爵家の長女です。

実は、私はこれまでに三回タイムリープしています。

一度目の人生は、王太子との初顔合わせの日に王太子に一目惚れししました。

彼は金色の髪に、青い目で容姿端麗でした。

同年代の子にはない落ち着きと気品、そこはかとない色気まで纏っておりました。

ピュアで世間知らずの少女なら、恋をしても仕方がないというもの。

それ以来私は、「お慕いしています殿下!」と言って王太子につきまとっていました。

王太子は類まれな美少年だったので、彼に群がる女は多かったのです。

私は彼女たちを、公爵家の力を使い全力で排除してきました。

彼の婚約者は私。

王家の婚約に醜聞があっては困ります。

私がしたことは正しかったと思っています。

私の制裁を恐れ、年頃の女性は殿下に近づかなくなりまはした。

しかし学園に入学してから異変がおきました。

王太子の周りを男爵令嬢のウィルマ・ヘルトがうろつくようになったのです。

ウィルマは桃色の髪と瞳の美少女でした。

ですが、男爵家の令嬢でしたので、全く礼儀作法がなっていませんでした。

どこからともなく現れては王太子に近づく、彼女が目障りでした。

私は男爵令嬢を牽制しました。

しかし、そういう時に限ってどこからともなく王太子が現れるのです。

そしてあろうことか殿下は婚約者の私ではなく、男爵令嬢の味方をするのです。

「君の方こそ目障りだ! 僕の愛するウィルマに近づくな!」
 
そう殿下に言われた日は、枕を涙で濡らしました。

殿下になんと言われても、彼の婚約者は私です。

彼に近づく煩い羽虫は排除しなくてはなりません。

私は男爵令嬢を徹底的にいじめ抜きました。

そして卒業パーティー当日。

私は男爵令嬢をいじめた罪を咎められ、王太子に婚約破棄されたのです。

王太子は壇上に立ち、男爵令嬢の肩を抱いていました。

彼は苛立たしげに私の罪状を述べました。

彼が読み上げた罪状は、ほとんど私には身に覚えのないものでした。

私はただ取り巻きをつれて男爵令嬢の元に行き「あなたのような下賤なものは殿下にふさわしくありません! これ以上殿下のお心を惑わせないで!」と言っただけなのです。

なのになぜか、私が男爵令嬢を階段から突き落としたり、噴水に突き飛ばしたり、わざとぶつかって転ばせたりしたことになっていました。

どうやら、私がかつて牽制しまくった貴族令嬢が私を恨んでいたようです。

彼女達の罪をなすりつけられました。

私は潔白を訴えましたが、殿下に信じてもらえず処刑されました。




◇◇◇◇◇◇◇




気がついたら私は十歳に戻っていました。

丁度、王太子との顔合わせの最中でした。

しばらく混乱していた私は、王太子の話を上の空で聞いていました。

一度目の人生では大人びて見えた王太子は、二度目の人生では背伸びしている子供にしか映りませんでした。

それに私は、過去世で王太子に殺されています。

殿下は一度目の人生であれほど恋い焦がれた相手ですが、冤罪をかけられ殺されたときに、私の王太子への恋心は消滅したのです。

王太子には嫌悪感と恐怖しか感じませんでした。

そんな相手が目の前にいるストレスに耐えきれず、私はその場で気を失ってしまいました。

家に帰って両親に「殿下との婚約を解消してください!」と訴えましたが、無駄でした。

なぜ時を巻き戻るのなら、婚約する前に巻き戻らないのでしょう!

殺されるとわかっている方との婚約なんてごめんですわ!

私は何度も両親に婚約解消を申し出ましたが、聞き入れられることはありませんでした。

なので、月に一度の殿下とのお茶会は苦痛でしかありませんでした。

今世でも王太子に殺されるのかと不安で、私は王太子と会う時はビクビクしていました。

私は病弱ということにして、家に引きこもりました。

十五歳になっても学校に通わず引きこもりし続けました。

なのになぜか、卒業パーティーの翌日に王宮に呼び出されて、男爵令嬢ウィルマ・ヘルトをいじめた罪に問われ、王太子に婚約破棄され、処刑を宣告されました。

二回目の人生の私は学校に通っていません。

殿下につきまとってないし、殿下に言い寄る女性を牽制もしていません。

男爵令嬢には会ったこともありません。

なのになんで会ったこともない男爵令嬢を、私がいじめたことになっているのでしょう?

その罪に問われているのでしょうか?

王太子に質問すると、「お前が下位貴族の子息や令嬢に命じ、僕と仲が良い男爵令嬢をいじめたことはわかっている」と言われました。

男爵令嬢が「私をいじめた人たちはいつも『ベルティーナ・ルンゲ公爵令嬢に命令された!』と捨てゼリフを残し去っていったわ」と証言したそうです。
  
私は当然無実を訴えました。

王太子殿下とは政略結婚で愛してない!

だから嫉妬するはずがないと!

引きこもりしていたから男爵令嬢の名前すら知らなかったと!

これは私に恨みを持つものが、私に罪をなすりつけたのだと!

ですが誰も私の言葉を信じてくれませんでした。

引きこもりしていたのに、またしても貴族の子息と令嬢の犯した罪を押し付けられ、処刑されました!



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