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3話「財産狙いの結婚」
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「そもそも侯爵家はなぜエミリーを嫁に欲しがっているの?」
「我が家は子爵家ですが商売が軌道に乗り裕福です。魔女様のお陰で日照りや水害やモンスターの被害もなく毎年豊作。街道にモンスターが出なくて安全と評判で、我が領地を通り王都に行く旅人や商人が多く、通行税で潤っているんです」
子爵家が裕福なのは私が仕事をしていたお陰って訳ね。ごろごろしながらおやつを食べて、だらだろと過ごしていただけじゃないのよ。
「カウフマン侯爵家は昨年先代の侯爵様が亡くなり、一人息子のビリー様が跡を継ぎました。現侯爵のビリー様は領地経営が下手で借金を作り、その借金を返そうと投資に手を出したのですが失敗、借金をさらに増やしてしまったそうです。その上浪費家の母親と病弱な幼馴染の面倒も見ているらしく……侯爵家は火の車なのです」
「そんなダメダメな家との縁談でも断れないの?」
「相手は落ちぶれたとはいえ、格上の侯爵家ですから」
エミリーが静かに首を横に振る。
「貴族って面倒なのね。それにしてもおかしな話ね、母親はともかく幼馴染の面倒を見る必要があるの? 他人でしょう?」
「先代侯爵様の友人の娘だと伺いました。幼い頃に両親を亡くしたローザ様を、前侯爵様が気の毒に思い引き取ったとか」
「無能な侯爵、浪費家の母親、病弱な幼馴染……今流行の【白い結婚物】の小説に出てきそうな顔ぶれね。まさかその幼馴染、侯爵とできてたりしないわよね」
エミリーが悲しげに瞳をうるませ、俯く。
「顔合わせのとき侯爵家に伺ったのですが、ビリー様とローザ様はとても仲睦まじく、手を繋いで歩き、時折耳元で囁いたりして、幼馴染の距離感ではありませんでした」
「ふざけてるわね、私の可愛いエミリーを子爵家から略奪しといて、侯爵と幼馴染の女とイチャイチャするなんて!」
「侯爵家の使用人からは二人の愛を引き裂く悪魔だと陰口を言われ……」
「自分たちを正当化するために、エミリーを悪女に仕立てるつもりね」
このままエミリーが侯爵家にお嫁に行ったら、悪者にされてしまう。
結婚している男が他の女とイチャイチャしていたら浮気でしかない。だが頭が腐った人間には侯爵と幼馴染の女との愛こそ本物で、正妻が二人の愛を引き裂く悪魔に見えるのだ。
自分たちは真実の愛で引き裂かれた二人を守るヒーローだと思い込み、正妻を傷つける。己が正義だから悪者に天誅を下してもいいのだとほざく【白い結婚物】の小説のお約束だ。
「とんでもない家ね、そんな家に嫁いだら最後、エミリーは死ぬまでいびられるわ」
許せない、天使より清らかな心を持つエミリーがなぜそんな目に合わなくてはいけないの!
「エミリーその結婚、私と代わりなさい!」
「えっ?」
「私がエミリーの代わりに侯爵家に行くわ!」
呪文を唱えエミリーそっくりに変身する。
突如自分そっくりの人間が目の前に現れたので驚いたのか、エミリーは目をパチパチさせている。
私は姿見の前に立ち自分の姿を確認する。鏡の中に真紅の髪に、紅玉色の瞳の、吊り目が特徴的なナイスバディの魔女はいない。
鏡に映っているのは煉瓦色の髪、琥珀色の瞳、ふくよかな胸、細い腰、あどけなさの中に聡明な輝きを宿す目を持った可憐な少女、エミリーだった。
うん、どこからどう見てもエミリーね。
「私が侯爵との結婚をぶち壊してきてあげる!」
エミリーの手を握りニコリと笑う。
侯爵家のアホ共には、エミリーを傷つけた報いを受けて貰うわ。
ついでに、三食昼寝とおやつ付きの生活を脅かした罰を与えてやる。
「我が家は子爵家ですが商売が軌道に乗り裕福です。魔女様のお陰で日照りや水害やモンスターの被害もなく毎年豊作。街道にモンスターが出なくて安全と評判で、我が領地を通り王都に行く旅人や商人が多く、通行税で潤っているんです」
子爵家が裕福なのは私が仕事をしていたお陰って訳ね。ごろごろしながらおやつを食べて、だらだろと過ごしていただけじゃないのよ。
「カウフマン侯爵家は昨年先代の侯爵様が亡くなり、一人息子のビリー様が跡を継ぎました。現侯爵のビリー様は領地経営が下手で借金を作り、その借金を返そうと投資に手を出したのですが失敗、借金をさらに増やしてしまったそうです。その上浪費家の母親と病弱な幼馴染の面倒も見ているらしく……侯爵家は火の車なのです」
「そんなダメダメな家との縁談でも断れないの?」
「相手は落ちぶれたとはいえ、格上の侯爵家ですから」
エミリーが静かに首を横に振る。
「貴族って面倒なのね。それにしてもおかしな話ね、母親はともかく幼馴染の面倒を見る必要があるの? 他人でしょう?」
「先代侯爵様の友人の娘だと伺いました。幼い頃に両親を亡くしたローザ様を、前侯爵様が気の毒に思い引き取ったとか」
「無能な侯爵、浪費家の母親、病弱な幼馴染……今流行の【白い結婚物】の小説に出てきそうな顔ぶれね。まさかその幼馴染、侯爵とできてたりしないわよね」
エミリーが悲しげに瞳をうるませ、俯く。
「顔合わせのとき侯爵家に伺ったのですが、ビリー様とローザ様はとても仲睦まじく、手を繋いで歩き、時折耳元で囁いたりして、幼馴染の距離感ではありませんでした」
「ふざけてるわね、私の可愛いエミリーを子爵家から略奪しといて、侯爵と幼馴染の女とイチャイチャするなんて!」
「侯爵家の使用人からは二人の愛を引き裂く悪魔だと陰口を言われ……」
「自分たちを正当化するために、エミリーを悪女に仕立てるつもりね」
このままエミリーが侯爵家にお嫁に行ったら、悪者にされてしまう。
結婚している男が他の女とイチャイチャしていたら浮気でしかない。だが頭が腐った人間には侯爵と幼馴染の女との愛こそ本物で、正妻が二人の愛を引き裂く悪魔に見えるのだ。
自分たちは真実の愛で引き裂かれた二人を守るヒーローだと思い込み、正妻を傷つける。己が正義だから悪者に天誅を下してもいいのだとほざく【白い結婚物】の小説のお約束だ。
「とんでもない家ね、そんな家に嫁いだら最後、エミリーは死ぬまでいびられるわ」
許せない、天使より清らかな心を持つエミリーがなぜそんな目に合わなくてはいけないの!
「エミリーその結婚、私と代わりなさい!」
「えっ?」
「私がエミリーの代わりに侯爵家に行くわ!」
呪文を唱えエミリーそっくりに変身する。
突如自分そっくりの人間が目の前に現れたので驚いたのか、エミリーは目をパチパチさせている。
私は姿見の前に立ち自分の姿を確認する。鏡の中に真紅の髪に、紅玉色の瞳の、吊り目が特徴的なナイスバディの魔女はいない。
鏡に映っているのは煉瓦色の髪、琥珀色の瞳、ふくよかな胸、細い腰、あどけなさの中に聡明な輝きを宿す目を持った可憐な少女、エミリーだった。
うん、どこからどう見てもエミリーね。
「私が侯爵との結婚をぶち壊してきてあげる!」
エミリーの手を握りニコリと笑う。
侯爵家のアホ共には、エミリーを傷つけた報いを受けて貰うわ。
ついでに、三食昼寝とおやつ付きの生活を脅かした罰を与えてやる。
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