BL「幼なじみに婚約破棄された僕が、隣国の皇子に求婚されるまで」第9回BL小説大賞、奨励賞受賞作品

まほりろ

文字の大きさ
上 下
126 / 131

加筆③ー1「ライバル令嬢の足止めと、鬼よりも怖い皇太子」アルファポリス限定

しおりを挟む




ボワアンピール帝国、帝都フォレ・カピタール。

王宮にて。


「ザフィーア・アインス公爵令息!」

その日はある人に呼ばれて、応接室に行くところだった。

ノヴァさんは騎士に剣術の指導をつけに行っているので、今日は彼とは別行動だ。

宮殿の庭に面した廊下を歩いているとき、白猫が横切った。

昨夜は白い猫耳のカチューシャと、白のもこもこのパジャマと、股下の短いショートパンツを身に着け、ノヴァさんにご奉仕したのを思い出してしまった。


『シエル、せっかく猫耳をつけたのだから、語尾に《にゃあ》とつけてくれ』

『あっ、あっ……ん、はぁ……はぁ……ノヴァさん、胸の突起ばかり弄ってないで、俺のペニスを掴んで……
イかせて……にゃぁん!』


昨夜の行為をリアルに思い出したら、顔に熱が集まって、その場からしばらく動けなかった。

これから会う人は時間に厳しい。

だから急いで約束の場所に行かなくてはいけない。

それはわかっている。

だが、こんな締まりのない顔では行けない。

そんなことを考えていたので、背後から声をかけられたことに、しばらく気づかなかった。

「ザフィーア・アインス公爵令息!
 わたくしの話を聞いておりますの!」

ヒステリックな声で怒鳴られ、振り返ると貴族の令嬢らしき女の子が立っていた。

茶色の髪を縦ロールにし、ツリ目がちな瞳を細め、長身のナイスバディの美少女が厳しい表情で俺を睨んでいる。

おそらくだが彼女の年は、俺より少し上だろう。

華美なアクセサリーを身に着け、フリルとかリボンとかがいっぱい付いたドレスを纏っているので、高位貴族の令嬢だと思う。

誰だっけ?

こんな特徴的な人物なら、一度会ったら、顔を忘れないと思うんだけどな。

俺はこの国に来たばかりだから、この国の貴族には詳しくないんだよな。

ザフィーアの記憶にもないしな。

困ったな。

「ええと、すみません。
 どちら様でしょうか?」

俺は愛想笑いを浮かべ尋ねた。

出来ればこの国の貴族とも仲良くやっていきたい。

だから、波風を立てないように穏やかに問いかけた。

「まぁ、わたくしの事をご存知ないなんて、あり得ないわ!」

だが相手をさらに怒らせてしまった。

「すみません」

そんなに有名な人なのか?

「わたくしの名前は、ナントカナル公爵家の長女カントリーナ!
 花も恥じらう十八歳!
 よ~~く覚えておきなさい!」

「はぁ……」

随分と高飛車な人だな。

「ザフィーア・アインス公爵令息!
 はっきりと言わせていただきます!
 小国の公爵令息ごときが、
 第二皇子のカルム様の婚約者に収まっているなんて、
 生意気ですわよ!!」

彼女は持っていたセンスを畳み俺に向けた。

彼女の目には嫉妬と憎しみが混じっていた。

あーー、やっぱりこういう人もいるよな。

ノヴァさんはこの国の皇子様、俺は滅びかけてる国の公爵令息。

あと少しすれば、レーゲンケーニクライヒ王国は滅亡し、アインス公国になると思う。

それまでは、俺を軽んじる貴族もいるだろう。

むしろ、今まで遭遇しなかったのが不思議だ。

覚悟はしていたけど、実際に遭遇すると、想像していた以上に面倒くさいな。

「第二皇子のカルム様は、頭脳明晰、容姿端麗、剣術や馬術だけでなく魔法の腕も一流!
 ボワアンピール帝国の全貴族令嬢の憧れの的でしてよ!」

婚約者が褒められるのは悪い気はしない。

俺はノヴァさんの冒険者としての面しか知らない。

この……なんたらかんたら公爵令嬢の話を聞く限りでは、ノヴァさんは皇族としてのスペックが高くて、貴族からも信頼されてるんだな。

それがわかっただけでも収穫だ。

「そんな完璧な皇子であるカルム様と、
 小国の公爵令息に過ぎないあなたでは、
 釣り合いがとれませんわ!
 しかもあなた、祖国で王太子の婚約者だったのに、
 大勢の前で婚約破棄されたそうじゃない」

公爵令嬢は蔑むような視線を俺に向けた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます

ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜 名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。 愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に… 「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」 美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。 🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶 応援していただいたみなさまのおかげです。 本当にありがとうございました!

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間 ファンタジーしてます。 攻めが出てくるのは中盤から。 結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。 表紙絵 ⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101) 挿絵『0 琥』 ⇨からさね 様 X (@karasane03) 挿絵『34 森』 ⇨くすなし 様 X(@cuth_masi) ◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

【BL】こんな恋、したくなかった

のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】  人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。  ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。 ※ご都合主義、ハッピーエンド

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

処理中です...