BL「幼なじみに婚約破棄された僕が、隣国の皇子に求婚されるまで」第9回BL小説大賞、奨励賞受賞作品

まほりろ

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加筆③ー1「ライバル令嬢の足止めと、鬼よりも怖い皇太子」アルファポリス限定

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ボワアンピール帝国、帝都フォレ・カピタール。

王宮にて。


「ザフィーア・アインス公爵令息!」

その日はある人に呼ばれて、応接室に行くところだった。

ノヴァさんは騎士に剣術の指導をつけに行っているので、今日は彼とは別行動だ。

宮殿の庭に面した廊下を歩いているとき、白猫が横切った。

昨夜は白い猫耳のカチューシャと、白のもこもこのパジャマと、股下の短いショートパンツを身に着け、ノヴァさんにご奉仕したのを思い出してしまった。


『シエル、せっかく猫耳をつけたのだから、語尾に《にゃあ》とつけてくれ』

『あっ、あっ……ん、はぁ……はぁ……ノヴァさん、胸の突起ばかり弄ってないで、俺のペニスを掴んで……
イかせて……にゃぁん!』


昨夜の行為をリアルに思い出したら、顔に熱が集まって、その場からしばらく動けなかった。

これから会う人は時間に厳しい。

だから急いで約束の場所に行かなくてはいけない。

それはわかっている。

だが、こんな締まりのない顔では行けない。

そんなことを考えていたので、背後から声をかけられたことに、しばらく気づかなかった。

「ザフィーア・アインス公爵令息!
 わたくしの話を聞いておりますの!」

ヒステリックな声で怒鳴られ、振り返ると貴族の令嬢らしき女の子が立っていた。

茶色の髪を縦ロールにし、ツリ目がちな瞳を細め、長身のナイスバディの美少女が厳しい表情で俺を睨んでいる。

おそらくだが彼女の年は、俺より少し上だろう。

華美なアクセサリーを身に着け、フリルとかリボンとかがいっぱい付いたドレスを纏っているので、高位貴族の令嬢だと思う。

誰だっけ?

こんな特徴的な人物なら、一度会ったら、顔を忘れないと思うんだけどな。

俺はこの国に来たばかりだから、この国の貴族には詳しくないんだよな。

ザフィーアの記憶にもないしな。

困ったな。

「ええと、すみません。
 どちら様でしょうか?」

俺は愛想笑いを浮かべ尋ねた。

出来ればこの国の貴族とも仲良くやっていきたい。

だから、波風を立てないように穏やかに問いかけた。

「まぁ、わたくしの事をご存知ないなんて、あり得ないわ!」

だが相手をさらに怒らせてしまった。

「すみません」

そんなに有名な人なのか?

「わたくしの名前は、ナントカナル公爵家の長女カントリーナ!
 花も恥じらう十八歳!
 よ~~く覚えておきなさい!」

「はぁ……」

随分と高飛車な人だな。

「ザフィーア・アインス公爵令息!
 はっきりと言わせていただきます!
 小国の公爵令息ごときが、
 第二皇子のカルム様の婚約者に収まっているなんて、
 生意気ですわよ!!」

彼女は持っていたセンスを畳み俺に向けた。

彼女の目には嫉妬と憎しみが混じっていた。

あーー、やっぱりこういう人もいるよな。

ノヴァさんはこの国の皇子様、俺は滅びかけてる国の公爵令息。

あと少しすれば、レーゲンケーニクライヒ王国は滅亡し、アインス公国になると思う。

それまでは、俺を軽んじる貴族もいるだろう。

むしろ、今まで遭遇しなかったのが不思議だ。

覚悟はしていたけど、実際に遭遇すると、想像していた以上に面倒くさいな。

「第二皇子のカルム様は、頭脳明晰、容姿端麗、剣術や馬術だけでなく魔法の腕も一流!
 ボワアンピール帝国の全貴族令嬢の憧れの的でしてよ!」

婚約者が褒められるのは悪い気はしない。

俺はノヴァさんの冒険者としての面しか知らない。

この……なんたらかんたら公爵令嬢の話を聞く限りでは、ノヴァさんは皇族としてのスペックが高くて、貴族からも信頼されてるんだな。

それがわかっただけでも収穫だ。

「そんな完璧な皇子であるカルム様と、
 小国の公爵令息に過ぎないあなたでは、
 釣り合いがとれませんわ!
 しかもあなた、祖国で王太子の婚約者だったのに、
 大勢の前で婚約破棄されたそうじゃない」

公爵令嬢は蔑むような視線を俺に向けた。


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