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118話「⑪」
しおりを挟む――シエル・サイド――
なんでザフィーアに体を乗っ取られたんだ? 俺はザフィーアを封じるために、ノヴァさんが俺のパンツを被って自慰してる姿を想像していたのに。
元婚約者のエルガーに会って、復縁を求められたことで、ザフィーアの意識が強くなった?
逆に俺は悪竜オードラッへとの戦いで精神力が弱っていた?
だから簡単に体の支配権を奪われたのか?
こんなことなら悪竜オードラッへを倒した後、ノヴァさんを個室に連れ込んでエッチなことしておけばよかった! ノヴァさんとエッチしている最中はザフィーアは出てこられないから。
しかし今更そんなことを言っても仕方ない、なんとかザフィーアから体の支配権を奪い返す方法を考えないと……!
「ザフィーア、やり直そう」
尚もしつこく誘ってくるエルガー。
こちらに近づこうとするエルガーを、ノヴァさんが鋭い目つきで睨みつけた。
「ひっ……!」
ノヴァさんに威嚇されたエルガーはなさけない声を上げ、二歩後退した。
「エルガー様!」
ザフィーアがノヴァさんを突き飛ばした、ノヴァさんがひどく傷ついた顔で俺の体を見てる。
同人誌のノヴァさんもあんな切なそうな表情をしていた……。
このままだと同人誌と同じ結果になってしまう……!
そんなの嫌だ!!
俺はノヴァさんが泣いてる姿なんて見たくない……!!
プツン……と音を立て俺の中で何かが切れた。
ザフィーア! お前! 俺のノヴァさんに何すんだよっっ!! もう怒ったぞ!!
俺はザフィーアがエルガーに駆け寄ろうと一歩踏み出したところで、ザフィーアの意識を潜在意識の底に引きずり込んだ。
ノヴァさんに酷いことする奴は俺が絶対に許さないっっ!!
☆☆☆☆☆
何もない真っ白な空間、ここが無意識の領域なのか……?
目の前に俺とそっくりな顔の男が立ってる、きっとあれがザフィーアだ。ザフィーアは感情の読めない冷たい目をしていた。
「ザフィーア! お前ふざけんなよ! 俺のノヴァさんに何してくれんだよ!! ノヴァさんお前に突き飛ばされて悲しそうな顔をしていたじゃないか! ノヴァさんを泣かせるやつは誰であっても俺が許さないからなっっ!!」
俺はザフィーアに詰め寄りやつの肩を掴んだ。
「ふざけているのはあなたです! これは僕の体です! 出て行って下さい!」
ザフィーアが目を釣り上げて叫んだ。なんだ感情的な表情もできるんじゃないか。
「今まで寝てたくせに全部片付いた頃に出てきて何が自分の体だ! この体は俺が出てこなかったら崖から落ちたときに濁流にのまれて死んでたんだ! 今この体があるのは俺が頑張ったからだ! だからこの体の使用権は俺にある!!」
絶対にザフィーアには渡さない!
「勝手なことを言わないで下さい! 僕だってもっと早く体を取り戻したかったんです! ……で、でもあなた方が、はっ、破廉恥なことを……しているから、その……」
ザフィーアの顔が真っ赤に染まる、最後の方は声もかなり小さかった。
「破廉恥な事ってもしかして、ノヴァさんとセックスしたことを言ってるのか?」
「セッ……! ちょ、直接的な言葉を使わないで下さい、もっと遠回しな言い方を……!」
ザフィーアの顔は耳まで赤かった、瞳の端に涙が浮かんでる。
ははーん読めたぞ、こいつの弱点。
ヌーヴェル・リュンヌ様もザフィーアは潔癖だって言ってたしな。ザフィーアはレーゲンケーニクライヒ国の教えに則り性欲とは無縁な生活を送ってきた、だから下ネタに弱い!
今まで卑猥な話を友達とすることすらなかったんだろうな。
「俺はこの体を使ってノヴァさんと10回以上セックスした、森での青姦から始まり、ホテルでのセックス、壁の薄い宿駅でのセックス、お風呂でのセックス、湖のほとりでの立ちバック、馬車の中でもお城の中でもセックスした、一晩中ノヴァさんのペニスが俺の中に入ったままだったこともある、全裸でセックスしたこともある、セックス中に何度もディープキスをした、当然ノヴァさんの精液を何度も中に出された、ノヴァさんのペニスに口をつけて精液を飲んだこともある」
「嫌っ! 止めて下さいっっ!! それ以上卑猥な言葉を口にしないで下さい!! み、耳が……耳が汚れてしまいます!!」
ザフィーアは耳を塞ぎしゃがみこんで、泣き出してしまった。
この勝負、いける……!
「ザフィーア、俺の体はノヴァさんの精液を毎日浴びて完全に汚れてるんだ、今更そんな体に戻ってどうする?」
「そっ、それは……」
そろそろ止めをさそう、これはあんまり言いたくなかったけど仕方ない。ザフィーアに体を乗っ取られる訳にはいかない、ノヴァさんを泣かせたくない、俺は絶対にこの体を手に入れる、そのためなら俺は鬼にだってなる!
「ザフィーア、ノヴァさんは俺の使用済みのパンツを集めてアイテムボックスに収集してる、そして時々集めたパンツをかぶって匂いを嗅いでる。それだけじゃない、ノヴァさんは俺が寝ている間に俺の精液を採取して、アイテムボックスに保存してる、そしてたまに取り出して飲んでる、俺はそんなノヴァさんも10回以上セックスしたんだ」
俺はザフィーアの前にしゃがみこんた。そして耳を塞いでいるザフィーアの手をどかした。
「ザフィーアよく聞け、俺はそんな変態で破廉恥でドスケベで使用済みのパンツを集めるのが趣味なノヴァさんの子を妊娠している」
妊娠していることはノヴァさんに一番最初に伝えたかったけど、今はそんなことを言っている場合ではない。
俺はなんとしてもこの勝負に勝たないといけない!
これでだめならノヴァさんとのセックスの一部始終を、詳しく解説するしかない。
しかしそんな必要はなかった、俺の言葉を聞いたザフィーアは白目をむいて倒れてしまった、童貞には刺激が強すぎたようだ。
ザフィーアの体が薄くなり、霧のように消えていく。
「ごめんザフィーア、でもノヴァさんを悲しませる奴は誰であっても許せないんだ」
例えそれがもう一人の自分であったとしても……。
無意識の領域が崩れてきた、多分もうすぐ俺の意識が浮上する。
「シエルそう嘆くことはない、ザフィーアの魂は……に宿そう」
意識が浮上する前に、ヌーヴェル・リュンヌ様の声が聞こえた気がする……。
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