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九十二話「アモルド・ジーゲル①」***
しおりを挟むーーアモルド・ジーゲルーー
「あっ、あっ! ん……はっ、ふぁっ……! いいよ、ふっ、あっ、はぁ……! なかなか上手じゃないか!くっ殺兵士くん……!」
私の上ではしたなく乱れる裸の男。頬を紅潮させ、口の端は邪悪に弧を描く。
わたしの両手、両足を拘束する鎖がガチャガチャと音を立てる。
王太子殿下の婚約者の身分にありながら、他の男の竿を咥えるなど……なんと下劣な! この男は聖なる神子などではない、アバズレだ!
「くっ……!」
「ふぁああっ……!」
こんな男の尻に私のものなど入れたくない! イきたくない! なのに体が勝手に反応してしまう……!
「いっぱい出たね、溜まってた?」
「くっ……!」
「いいね、その反抗的な目。さすがくっ殺兵士くん」
お前のせいでザフィーア様は……!
母と妹が人質に取られていなければ、この手で殺している!
両手、両足を鎖で繋がれていても、気合で殺してやる!
「童貞の男根はいいね! おいしかったよ、くっ殺兵士くんごちそうさま」
そう言って水の神子は、唇を醜く歪めた。
神子が尻を上げると、だらり白濁液が流れ落ちる。
「妊娠のことは心配しなくていいよ、ちゃんと避妊薬を飲んでるからね。流石に王太子以外の子を生むのはまずいでしょ?」
この国はセックスは子作りのために仕方なく~なんて古臭い考えの人しかいないから、避妊薬を手に入れるのに苦労しちゃったよ、と神子は続けた。
この男に王太子殿下を裏切っていることへの罪悪感など微塵もない。とことん見下げ果てた奴だ。
「神子様、王太子殿下がお呼びです」
治療魔法士が神子の体を清め、ローブを着せる。
「えーまたなの? このあと二、三人童貞を食う予定だったのに」
神子がめんどくさそうに答える。
「王太子殿下は神子様と床を共にしたいそうです」
王太子はザフィーア様を裏切り、こんな男と婚姻前に性行為を重ねているのか! 獣共め!
しかも今は四句節、復活祭の前、四十日間は性行為は禁止されている!
民の身本になるべき王太子がなんと淫らな!
やり場のない怒りがこみ上げ、奥歯をぎりりと噛む。
「あの王子様、下手くそだから嫌なんだよね。下手のくせに体位を変えて二回も三回もやりたがるし」
性行為は子作りの為に一度だけするものだ! 全裸でしてはいけないし、夫婦間でしかしてはならない、体位も正常位のみときめられている!
神子も神子なら王太子も王太子だ! この二人に倫理観はないのか!
「やれやれ性欲の強い王子様の子守も大変だ。くっ殺兵士くん、君の男根なかなか良かったよ、気に入ったからまた遊んであげるね」
神子がわたしに向かってウィンクをする。
このような下劣な行為の相手を、今一度させるというのか! なんたる屈辱……!
「神子様に飽きられた者は…………ーア様の胃におさまるしかないというのに……。神子様に二度も相手をしていただけるなどとても幸運なことですよ。己の運の良さに感謝しなさい」
治療魔法師がしたり顔でほざく。
ふざけるな! 誰が汚れた神子になど感謝するか!
神子と治療魔法師が部屋を去ると、白い服を来た男たちが部屋に入ってきた。
白い服の男たちに体を拭かれる、奴らは体を拭き終えると、私の鼻に布を当てた。
その途端視界がぐらりと揺れ、意識が朦朧とした。
薄れていく意識の中、両手、両足を拘束していた手錠が外される音が聞こえた。
◇◇◇◇◇
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