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八十六話「レーゲンケーニクライヒ国、国王エーアガイツ・レーゲンケーニクライヒ」④
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ーーレーゲンケーニクライヒ国、第二十四代国王エーアガイツ・レーゲンケーニクライヒ視点ーー
「アインス公爵すまぬ!! この通りだ!!」
余は玉座の間にアインス公爵を呼び出し、
人払いしたあとアインス公爵に頭を下げた。
「陛下、おやめください。上に立つものがむやみに頭を下げるものではありません」
直角に近い角度で深々と頭を下げた余にアインス公爵はそう言った。
いつもと変わらぬ、穏やかな声だった。
「しかし、ザフィーアが……あの子が、死んでしまった……」
死んでいなければどうとでも出来た、しかし死んでしまってはどうしようもない。
「愚息の事でお心を痛めておられるのでしたら、不要です。ザフィーアは神子様を害そうとし、王太子エルガー様の不興を買い、婚約者の地位を追われ追放されたのです。王太子殿下の温情で追放処分で済んだというのに、そのことに感謝せず、罪人として王都を追われたことに耐えられず、移送中に自ら崖に身を投げただけのこと、陛下がお心を痛めることはありません」
アインス公爵の言葉に余ははっとして顔を上げる。
アインス公爵にはそう知らされているのか?
ザフィーアが神子を害そうとした証拠などない。神子と証人の話しだけだ。その証人も実家が困窮しているものや、素行の悪いもので神子に買収された可能性が高く、証言は信ぴょう性に欠ける。
にも関わらずザフィーアはパーティー会場で断罪され、牢屋に入れられ、ろくに取り調べもされず、翌日王都を追放された。靴も履かされず民衆に石まで投げられたと聞く。
息子がそのような仕打ちを受けたのだ、アインス公爵が憤るのは当然のこと。
だがアインス公爵は全てザフィーアの素行の悪さが招いたことだと言う、本心からそう言っておるのか?
ザフィーアは移送中に兵士に斬られ崖の下に落ちて死んだ。だがアインス公爵は、ザフィーアが自らの意思で崖に身を投げ死んだと報告を受けているようだ。アインス公爵はそれを信じているのか?
「此度のことを許してくれるのか?」
「許しを乞うのは私の方です。愚息がご迷惑をおかけしました」
そう言ってアインス公爵は深々と頭を下げた。
アインス公爵がそう思っているならそれでよいか。
「愚息が王太子殿下と神子様にご迷惑をおかました。公爵家の王族への忠義は変わっておりません。どうか今までのように王家に仕え、陛下と王太子殿下をお支えするこたをお許しください!」
「いやいや、ザフィーアも若げの至りで婚約者に近づくものに嫉妬したまでのこと。そのザフィーアももう亡くなっている。この件はザフィーアの死を持って落着したこととしよう」
「ありがたき幸せ、ヴュルデ・アインスこの身が朽ちるまで王家のために尽くします!」
切れものと言われたアインス公爵も、身内のこととなると盲目になるらしい。
余から詫びるべきだと思っていたが、向こうが否を認め謝罪して来るのなら、それを受け入れておこう。
◇◇◇◇◇
数日後、王太子エルガーと神子の婚約を阻止したいと相談していた隣国ボワアンピール帝国の皇太子から、ザフィーアをボワアンピール帝国で発見し、保護したという知らせが届いた。
ザフィーアよ、生きていたのか!
生きていたのならば好都合だ。
神子とエルガーの婚約を阻止するために、ザフィーアにはエルガーの婚約者に戻って貰おう。
いや婚約破棄はエルガーが勝手に言ったこと、国王である余は婚約破棄を認めていない。
ザフィーア・アインスは現状、王太子エルガーの婚約者だ。
ザフィーアはエルガーを心底愛していた。
ザフィーアにエルガーとそなたの婚約破棄などなかった、そなたはエルガーの婚約者のままだと告げたら、ザフィーアはさぞ喜ぶだろう。
「アインス公爵すまぬ!! この通りだ!!」
余は玉座の間にアインス公爵を呼び出し、
人払いしたあとアインス公爵に頭を下げた。
「陛下、おやめください。上に立つものがむやみに頭を下げるものではありません」
直角に近い角度で深々と頭を下げた余にアインス公爵はそう言った。
いつもと変わらぬ、穏やかな声だった。
「しかし、ザフィーアが……あの子が、死んでしまった……」
死んでいなければどうとでも出来た、しかし死んでしまってはどうしようもない。
「愚息の事でお心を痛めておられるのでしたら、不要です。ザフィーアは神子様を害そうとし、王太子エルガー様の不興を買い、婚約者の地位を追われ追放されたのです。王太子殿下の温情で追放処分で済んだというのに、そのことに感謝せず、罪人として王都を追われたことに耐えられず、移送中に自ら崖に身を投げただけのこと、陛下がお心を痛めることはありません」
アインス公爵の言葉に余ははっとして顔を上げる。
アインス公爵にはそう知らされているのか?
ザフィーアが神子を害そうとした証拠などない。神子と証人の話しだけだ。その証人も実家が困窮しているものや、素行の悪いもので神子に買収された可能性が高く、証言は信ぴょう性に欠ける。
にも関わらずザフィーアはパーティー会場で断罪され、牢屋に入れられ、ろくに取り調べもされず、翌日王都を追放された。靴も履かされず民衆に石まで投げられたと聞く。
息子がそのような仕打ちを受けたのだ、アインス公爵が憤るのは当然のこと。
だがアインス公爵は全てザフィーアの素行の悪さが招いたことだと言う、本心からそう言っておるのか?
ザフィーアは移送中に兵士に斬られ崖の下に落ちて死んだ。だがアインス公爵は、ザフィーアが自らの意思で崖に身を投げ死んだと報告を受けているようだ。アインス公爵はそれを信じているのか?
「此度のことを許してくれるのか?」
「許しを乞うのは私の方です。愚息がご迷惑をおかけしました」
そう言ってアインス公爵は深々と頭を下げた。
アインス公爵がそう思っているならそれでよいか。
「愚息が王太子殿下と神子様にご迷惑をおかました。公爵家の王族への忠義は変わっておりません。どうか今までのように王家に仕え、陛下と王太子殿下をお支えするこたをお許しください!」
「いやいや、ザフィーアも若げの至りで婚約者に近づくものに嫉妬したまでのこと。そのザフィーアももう亡くなっている。この件はザフィーアの死を持って落着したこととしよう」
「ありがたき幸せ、ヴュルデ・アインスこの身が朽ちるまで王家のために尽くします!」
切れものと言われたアインス公爵も、身内のこととなると盲目になるらしい。
余から詫びるべきだと思っていたが、向こうが否を認め謝罪して来るのなら、それを受け入れておこう。
◇◇◇◇◇
数日後、王太子エルガーと神子の婚約を阻止したいと相談していた隣国ボワアンピール帝国の皇太子から、ザフィーアをボワアンピール帝国で発見し、保護したという知らせが届いた。
ザフィーアよ、生きていたのか!
生きていたのならば好都合だ。
神子とエルガーの婚約を阻止するために、ザフィーアにはエルガーの婚約者に戻って貰おう。
いや婚約破棄はエルガーが勝手に言ったこと、国王である余は婚約破棄を認めていない。
ザフィーア・アインスは現状、王太子エルガーの婚約者だ。
ザフィーアはエルガーを心底愛していた。
ザフィーアにエルガーとそなたの婚約破棄などなかった、そなたはエルガーの婚約者のままだと告げたら、ザフィーアはさぞ喜ぶだろう。
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