BL「幼なじみに婚約破棄された僕が、隣国の皇子に求婚されるまで」第9回BL小説大賞、奨励賞受賞作品

まほりろ

文字の大きさ
上 下
69 / 131

六十九話「ノヴァさん、俺に嘘ついてるでしょ①」*

しおりを挟む


目覚めたとき黒いシャツが目の前にあって、服の上からでも分かる分厚い胸板に顔をうずめていた。たくましい腕に抱きしめられていて身動きがとれない。

その鍛えられた腕は俺の尻に回っており、スカートの上からガッチリ尻を掴んでいる。

ノヴァさん服を着たまま寝たんだな。俺のことホールドしつつ尻を掴んでいるあたりブレないなぁ。

というかパンツぐらい脱がされてると思ったけど、服の上から触られてるだけですんでいるのが意外だ。

起きたらノヴァさんの竿が俺の中に入っていると思ってた。

そういえばラック・ヴィルで昨日の明け方ノヴァさんとセックスして以来、ノヴァさんに子種を注いでもらってない。

はじらい死草の解毒治療には、毎日精液を中に注いでもらって、それを一年間続けなくちゃいけないんだったよな?

部屋の中が明るいのでとっくに日は昇っているようだ。寝たのは夜明け近かった、あれから何時間経過したのか……?

今が九時頃だと仮定して、ノヴァさんと最後にセックスしたのが昨日の明け方だから、まる一日子種を摂取していない。

でも俺はなんともない、と言うより元気だ。

俺の中にある仮説が浮かぶ。ノヴァさんに確かめないと。

「ノヴァさん、ノヴァさん、起きてください」

ノヴァさんの胸板を押すがびくともしない。

天使の口付けエンゲル・クスで起こすしかないかな。宿駅では無意識に使っていたらしい。

誰かが唱えた呪文しか使えないと思ってたけど、無意識に使える呪文もあったんだな。

でもあのときはキスしたら目覚めたわけで『天使の口付けエンゲル・クス』って唱えた訳じゃないから、この呪文はイレギュラーかな。

「ノヴァさん起きて、チュッ♡」

ノヴァさんの唇に口付ける。

尻を掴んでいたノヴァさんの手がスカートの中に入ってきて、パンツの上から尻を揉みだしたので、どうやら起きたらしい。

「おはようシエル」

切れ長の紫の目を細め、ノヴァさんがふわりと笑う。

超絶美形の笑顔を寝起きに至近距離で見るのは、心臓に悪い。

「おはよう、ノヴァさん……っん、……ふぁ……ぁっ……やっ」

唇を重ねられ侵入してきた舌に舌を絡め取られる。

パンツを半分脱がされ尻を直に揉まれ、ノヴァさんのギンギンに勃った息子をスボン越しに擦り付けられる。

「シエル、解毒治療をしていなかったな」

「うん、そのことなんだけどさノヴァさん」

ノヴァさんに仰向けに寝かされ、両腕をベッドに縫い付けられる。

ギリシャ彫刻のように整った顔立ちのノヴァさんに、とろけるような笑顔で熱い視線を送られても流されてはいけない。

「ノヴァさん、俺に嘘ついてるでしょ」

ノヴァさんの目をまっすぐに見つめる。スカートをたくし上げていたノヴァさんの手が、ピタリと止まる。

スカートは俺のへその所で止まっている、パンツを半分脱がされたので、ゆるく立ち上がった俺のペニスが外気に晒される。

これ以上服をたくし上げられると、胸につけているあれを見られてしまう。

「……嘘、とは…………?」

ノヴァさんの顔にギクリと書いてあった。

「嘘っていうか秘密かな? はじらい死草の解毒治療って、毎日する必要ないですよね? 本当は最初の一回だけでよかったんでしょ?」

確信はないのでかまをかけてみた。

ノヴァさんの顔から血の気が引いていく。この反応は当たりかな。

「違うのだシエル! 別に騙そうとした訳ではない! 確かに古文書には一度の性行為で治療は終わると書いてある。だが遥か昔に書かれたもので絶対に大丈夫だと言う確証はない! リーベ村の宿でシエルは『熱っぽい』『アナルがうずく』と言っていたし、体質によっては一度では足りず、二度、三度精液を注ぐ必要があるのかと……!」

「なるほど」

ノヴァさんの目をじっと見つめる、嘘をついている感じはしない。

「精液を中に注ぐのを止めシエルが死んでしまうのが怖かった……! 王都に着いたら帝国一の植物の専門家と医師に診せる予定だった! それまでは治療のために精液を注ぎ続けようと思ったのだ!」

「分かりました、俺のためにしてくれてたんですね」

俺が笑うとノヴァさんはホッとしたように、短く息を吐いた。

ノヴァさんの言ったことが嘘か本当か分からない。というか嘘でも構わない。俺はノヴァさんなしでは生きていけないのだから。

ノヴァさんはいつも俺の言うことを信じてくれた、俺もノヴァさんの言うことを信じたい。

「許してくれるのか?」

ノヴァさんが迷子の子猫のような目で俺を見る。可愛い、ハグして、キスしたい。

「許すも何も、俺の体のためにしてくれたことでしょ?」

俺がこてんと首を傾げると、ノヴァさんが頬を染めた。

ノヴァさんは優しくて、いつも俺を大切にしてくれる。

そのノヴァさんが俺を傷つけるために嘘をつくはずがない。

「俺はノヴァさんを信じてるから」

「シエル……!」

ノヴァさんが瞳を輝かせ顔を綻ばせる。

「解毒治療じゃなくて、愛のある性行為をしたいよ」

「シエル、もう我慢出来ない!!」

ノヴァさんの息が荒い、顔も赤いし、ペニスもギンギンに立ってる。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない

てんつぶ
BL
 連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。  その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。  弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。  むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。  だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。  人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

処理中です...