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五十六話「キメラとの戦い!①」

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夕暮れから登り始め、山頂に着いたのはほぼ真夜中だった。夜空に満天の星が輝く。

こんなに時間がかかったのは十中八九、中腹まで俺が足を引っ張ったせいだ。

せめて戦闘ではノヴァさんの役に立ちたい。

俺の使える呪文は【回復ベッセルング最大マクシムム・回復《ベッセルング》、眠りシュラーフ天使の口付けエンゲル・クス

戦闘に使えそうなのは【眠りシュラーフ】ぐらいか。

今までの経験から推測すると、他の誰かが呪文を使っているのを見て、ザフィーアがその呪文を習得していたか分かる。

唯一【最大マクシムム・回復《ベッセルング》】は【回復ベッセルング】の上位相互だから、誰かが使ったのを見てなくても思い出せた。

ザフィーアが習得していた呪文を自力で思い出そうとしても、頭に霧がかかったみたいで出来ない。

魔法の光ツァウバー・リヒト】と【魔法の空間ツァウバー・ラウム】は習得していなかったみたいで、俺には使えない。

眠りシュラーフ】と【回復ベッセルング】で援護しつつ、ノヴァさんが戦闘中に呪文を使って、それが俺にも使える呪文なら積極的に唱えて行こう。

魔法の光ツァウバー・リヒトに照らされた山頂には、淡いピンク色の綺麗な花が咲いていた。

その桃色の花の絨毯の上に、獅子の頭、山羊の頭と胴体、毒蛇の尻尾、鳥の翼を持つ巨大な魔物が横になっている。

体長約十五メートル、尻尾だけでも五メートルはありそうだ。翼を広げたらもっと大きく見えるんだろう。

確か獅子の頭から炎を、山羊の頭から氷と吹雪を、蛇の尻尾から猛毒を出すんだったな、気をつけないと。

「寝ているようなのでこのまま奇襲する。シエルはここで待機していてくれ」

ノヴァさんが小声で指示を出す。

「はい」

俺は水晶クリスタロの杖を握りしめ、こくんとうなずく。

俺は寝ているキメラにさらに【眠りシュラーフ】の呪文をかけておいた。

ノヴァさんが足音を立てずにキメラに近づくき、【吹雪シュネーシュトゥルム】を唱えキメラを凍らせる。

氷漬けになったキメラの獅子の首と山羊の首をバスタードソードで斬りつける。頭が胴体から切り離され地面に転がる。

断末魔を上げることなくキメラは死んだ。

眠りシュラーフ】をかけたことが戦闘への貢献と認められたのか、俺にもちょっと経験値が入った。

呆気ないなこんなものなのかな?

その時強い風が吹き、先端の尖った氷の塊がたくさん降ってきた。

光の盾リヒト・シルト!!」

ノヴァさんが呪文を唱えると巨大な光の壁が現れ、矢のような形の氷の塊を防ぐ。

光の盾リヒト・シルト】か、あの呪文は俺にも使えそうだ。

というより今の氷のような矢はどこから?

見上げると、先程倒したものよりふた周り大きなキメラが巨大な翼を羽ばたかせ、宙に浮いていた。


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