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三十八話「ラック・ヴィル①」
しおりを挟む駅馬車がラック・ヴィルに着いたとき、日は西に傾いていた。
大きな湖を取り囲むように石造りの建物が数多く立ち並んでいる。
リーヴ村とは比べ物にならないほど大きな街だ、行き交う人々の数も多く活気に満ちている。
ラックは湖、ヴィルは都市という意味だとノヴァさんが説明してくれた。
レーゲンケーニクライヒ国の王都ヴァッサーと同じか、それよりはちょっとおとるけどかなり活気のある街だ。
「ノヴァさん、ここ帝都じゃないんですよね?」
ノヴァさんの袖を引っ張る。
「ああ、帝都フォレ・カピタールは、ラック・ヴィルとは比べ物にならないくらい大きな街だ」
さすがボワアンピール帝国、一つ一つの都市の規模が違う。
純粋に人間だけの戦争になったらレーゲンケーニクライヒ国は、ボワアンピール帝国に勝てないな。
レーゲンケーニクライヒ国には水竜メルクーアがいるから、攻められることはないけど。
レーゲンケーニクライヒ国は六百年前に水竜メルクーアが現れてから、他国に攻められた事がない。そういえばメルクーアが現れる前は、ボワアンピール帝国の支配下にあったんだっけ。六百年前に水竜メルクーアの力を得て独立した。
そういう経緯もあり水竜メルクーアは国民から絶大な支持を得ている、国名全員が水竜メルクーアを信仰していると言っても過言ではない。
メルクーアの加護を受けた神子に信望が集まるのも当然のこと。
神子に危害を加えた冤罪を着せられザフィーア、よく死刑にならなかったなぁ。
「シエルお姉ちゃん、ノヴァお兄さん、バイバイ!」
「お世話になりました」
リナちゃんが元気に手を振り、リナちゃんのお母さんが礼儀正しく頭を下げる。
「さよなら、リナちゃん、リナちゃんのお母さん! 飴ありがとう!」
二人に手を振って別れた。今からお父さんに会えるからか、二人とも嬉しそうだ。
「シエル私たちも宿を取ろう。その……今日は壁の厚い部屋にする」
ノヴァさんの言葉に、俺の顔に熱が集まる。
そうなのだ、今夜もノヴァさんと性行為をしなくてはいけないのだ。
治療のためとはいえさすがに毎日は辛い。セックス自体は……その気持ちいいし、体の相性も悪くない……と思う。
キスマークとか腰の痛みは回復魔法で治せる。問題は睡眠時間だ、二回以上セックスをすると次の日すごく眠い。昨日は結局二回致してしまった、今晩はどうなることやら。
治療行為とはいえノヴァさんもよく付き合ってくれるな。俺の体に飽きたりしないのかな? 俺もマグロのままではだめだろうか? フェラとか、騎乗位とかした方が……。
いやいや、ノヴァさんがどういうつもりで母親の形見の指輪くれたのか、聞き出すのが先だ。
答えによっては、ノヴァさんとの付き合い方を考えないと。
左手にはめたサファイアの指輪を、右手で覆う。
本当にノヴァさんのお母さんの形見で、ノヴァさんが俺を愛しいるからプレゼントしてくれたんだとしたら……心臓がキューンと音を立てる。
いやいや自分に都合よく考えてはダメだ。違っていたときガッカリする、あまり期待しないでおこう。
「宿で夕食を取ったら湖の周りを散策しないか? 星が綺麗に見えるんだ」
「はい」
そこなら静かそうだし、落ち着いて話ができるかな?
◇◇◇◇◇
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