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五話「ザフィーアだったら……」
しおりを挟む「う~ん、う~ん……」
重苦しさで目を覚ました。
起きたとき全裸の男に下敷きにされているというのは、なかなか心臓に悪い。
そっか、ノヴァさんに抱きしめられたまま寝ちゃったんだ。それがいつの間にか地面の上で重なり合う形で眠っていたらしい。
あたりを見回すと日が昇ったのか、だいぶ明るくなっていた。
ノヴァさん寝相が悪いな、俺の上に乗っかってるなんて。まあ毛布代わりになったから温かかったけど。
もしザフィーアが崖から落ちた後も生きていたとして、見知らぬ人に人工呼吸されて、出会ったばかりの男と全裸で抱き合って寝るという衝撃に耐えられただろうか?
ザフィーアなら二回は死んでるな。じゃなきゃ頭がおかしくなってる。
ノヴァさんに人工呼吸されたのが俺でよかったよ。
「ノヴァさん、ノヴァさん、起きてください、朝ですよ」
ペチペチとノヴァさんの肩をたたくと、ノヴァさんが目を覚ました。
銀色の髪がサラサラと揺れる、寝起きの美形やばい、色気が半端ない!
ゲイではないが、ノヴァさんを見てると変な気分になってしまう。俺はノヴァさんから視線を逸した。
「すまない、シエルの上に乗っていたようだ」
俺の上に乗っている事に気付いたノヴァさんが、慌てた様子で起き上がる。
「いえノヴァさんの体、温かかったですから」
俺の言葉を聞いたノヴァさんが頬を赤らめた。
あれ? フォローになってなかったかな?
「そろそろ服が乾いた頃だろう」
ノヴァさんが俺に背を向け、服を干してある場所に向かった。
ノヴァさんの服は黒のシャツとズボンとブーツとコートで、全身黒ずくめだった。漆黒の衣服に銀色の髪が映える。
腰にバスタードソードを携える姿も絵になる。
俺の服はというと、ちんこが隠れるか隠れないかの長さの布のシャツ一枚だけ。
パンツとズボンが流されたのは痛い。
ノヴァさんのマントを貸してもらえないだろうか? しかし初対面の相手にちんこを隠すのでマントを貸してくださいとは言いづらい。
「これからリーヴ村に向かう」
「リーヴ」確かボワアンピール帝国の言葉で「川岸」って意味だったな。
「よければ一緒に……」
「あの、迷惑でなければ俺のことも連れて行ってください!!」
頭を深く下げる。
ここでノヴァさんに見捨てれたら俺は詰む。
パンツ履いてないし、村の方角は分からないし、靴はないし、武器はないし、食料はないし、金はないし、パンツ履いてない(大事なことなので二度言った)。
「見捨てないでください!」
ノヴァさんのコートをぎゅっと掴む。ノヴァさんの顔を見ると、心なしか赤くなっていた。
全裸で野宿したから風邪をひいたのかな?
「分かった、ついてこい」
ノヴァさんがマントを翻(ひるがえ)し踵(きびす)を返す。イケメンはそんな仕草も様になるな。
「ありがとうございます!!」
俺は頭を下げ、ノヴァさんの後を追って駆け出した。
◇◇◇◇◇
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