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第二章
82話「タコの化け物と緑の髪のオカッパ幼女」
しおりを挟む浜辺を走り、声が聞こえた方向に向かう。
しばらくすると真っ赤な色の化け物が見えた。
「子亀ちゃん、子亀ちゃん!
タコのおじさんと一緒に遊びましょう!」
タコの化け物が「ゲヘヘ」と下卑た笑みを浮かべる。
あっ、こいつ生理的に無理。
タコの化け物の足元には子亀がいて、「キャーーーー! 嫌ですーーーー!!」と叫んでいた。
どうやらタコの化け物が、子亀をいじめているようだ。
「そこまでだ!
子亀を虐めるな!」
僕がそう叫ぶと、タコの化け物の視線が僕を通り越してリーゼロッテを見つめた。
「ぐへへへへ!
また可愛い子がやってきた!
お前も俺の嫁にしてやる!」
リーゼロッテを視認したタコの化け物が、いやらしい笑みを浮かべる。
「あっ? なんだと……!」
このくそタコの視界にリーゼロッテが入っているだけで、僕はとても不愉快だった!
「喧嘩は相手を見てから売るんだな!
焼きダコにしてやるよ!」
僕は手のひらに大人の拳くらいの大きさの火球を作った。
小さな子亀も見てるし、あまりグロテスクな真似はしたくない。
軽く火傷させるぐらいでいいかな。
「ハルト様、しっかり!」
「えっ、ちょっ……リーゼロッテ!
あっ……!」
僕の頭に柔らかい何かが当たる。
その瞬間、火球が十倍の大きさに膨れ上がった。
僕は動揺して、火球をそのままタコの化け物に向かって放ってしまった。
「ぐぇぇえええええええ!!」
という断末魔を残し、タコの化け物は灰と化した。
後にはタコが焼けた良い香りだけが残った。
「ちょっとやりすぎてしまったけど……まぁいいか。
相手はタコだし、悪者だったし」
それよりもタコの体を貫通した火球が上空に飛んでいってくれたことに、僕はホッとしていた。
あの威力の火球が海に触れたら、水蒸気爆発を起こしていたかもしれない。
「助けてくださり、ありがとうございます!」
そのとき小さな女の子の声が聞こえた。
振り返ると、緑の髪をオカッパに切りそろえた異国の民族衣装に身を包んだ幼い少女がいた。
確か遠い東の国では、ああいう体に巻きつける系の服を着ていた気がする。
「えっと、君は?」
「私の名前は亀子。
先程助けて頂いた子亀です。
タコの化け物から身を護るために子亀の姿をしていました」
変身魔法が使えるなんて、幼いのにすごい子だな。
「お二人に是非お礼がしたいです。
ここで待っていていただけますか?」
「僕たちは当然のことをしたまでだよ。
お礼なんていらないよ」
「そうおっしゃらずに、すぐに戻って参りますのでここで待っていてください!」
僕の返事を聞かずに、子亀改め亀子ちゃんは子亀の姿に戻り海の中に潜って行ってしまった。
「亀子ちゃん行ってしまいましたね。
ハルト様、どういたしますか?」
「戻ってきたとき僕らがいなかったら亀子ちゃんはきっと悲しむよね。
待っていてあげよう」
「そうですね」
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