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第二章
81話「彼女の白い肌には青い水着がよく似合っていた」
しおりを挟むロイヤルブルー水着は彼女の白い肌によく似合っていた。
「きゃああああ!
魔女様、やっぱり私にはビ、ビキニはハードルが高すぎます!」
リーゼロッテは僕と目が合うと頬を赤く染め、カーテンを閉めて箱の中に戻ってしまった。
「リーゼロッテ、観念なさい。
執事の背中の上でビキニを着るって約束したでしょう?
リーゼロッテには今日一日その格好でいてもらうわよ」
「た、確かに魔女様とお約束しました!
でもその時は、ビキニがこんなに露出度の高い服だとは知らなかったんです!」
リーゼロッテの身につけている水着は、下着よりも露出度が高かった。
「とにかく、二人にはハネムーンを楽しんでもらうわよ。
邪魔者は退散するから、あとは二人でよろしくやってね!」
アダルギーサはそう言ってウィンクをすると、転移の魔法でどこかに移動した。
気がつくと僕が纏っていた黒のジュストコールとトゲトゲがいっぱいついたブーツがなくなり、僕の衣服は紫色の水着一枚になっていた。
同時にリーゼロッテを隠していた箱がなくなる。
「きゃあっ!」
リーゼロッテは僕の視線に気づくとその場にうずくまった。
リーゼロッテが着痩せするタイプなのは、彼女のシュミューズ姿を見たとき気がついていた。
それにしても、彼女がこんなにスタイルがよかったなんて……。
今は鼻の下を伸ばして、リーゼロッテの水着姿を眺めている場合ではない!
彼女に何か着るものを出してあげないと!
「いでよ! 服!」
僕が呪文を唱えると、巨大なS字型のフックが現れた。
「違う!
フックじゃなくて服だよ!
いでよ! 衣服!」
「高級」と書かれたS字型のフックが現れた。
「『いいフック』じゃなくて衣服!
衣類! 被服!」
今度は「イルイ」と鳴きながら、火を吹く鳥が現れた。
「被服」と「火を吹く」をかけるとか、そういうダジャレはもういいよ!
この際、タオルでも毛布でもなんでもいいからリーゼロッテの体を覆うものよ出てこい!
「いでよ! シーツ!」
僕が呪文を唱えると真っ白なシーツが出てきた。
「やった! 成功し……た?」
シートは風に煽られ海の彼方に飛んでいってしまった。
「…………!」
何をやっているんだ僕は!
僕はその場に膝をついた。
動揺するとここまで魔法が下手になるとは……!
女の子に免疫がなさすぎるだろう!
その後も僕の魔法はことごとく失敗、ビーチはガラクタで溢れた。
「あの……もう大丈夫ですよ、ハルト様。 わ、私が恥ずかしがらなければいいだけですから……」
リーゼロッテに気を使わせてしまった。
「いや、僕が目を閉じれば済むことだ!
そうすればリーゼロッテは恥ずかしくないだろ!」
僕は目をギュッとつむった。
そのとき遠くから「キャーーーー!」という女性の悲鳴が聞こえた。
「今の悲鳴は……!」
思わず目を開けると、リーゼロッテの水着のアップが視界に飛び込んできた。
僕は慌てて視線を逸らす。
「行きましょう、ハルト様!
誰かが助けを求めているかもしれません!」
リーゼロッテが僕の手を握る。
「うん、そうだね!」
リーゼロッテだって恥ずかしいのを我慢して人助けを優先しようとしてるんだ!
僕も恥ずかしがってる場合じゃない!
誰かが困っているなら助けに行かないと!
走っているリーゼロッテを見上げると、彼女の銀色の髪がふわりと揺れていた。
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