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第一章

73話「魔女なりの償い」アダルギーサ・サイド

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――アダルギーサ・サイド――


二十九年前に己の犯した過ちを償うために王宮にきた。

ワルモンドの名乗った【ウィルバート】という名前を信じ、事実確認もせず本物のウィルバートに呪いをかけてしまったのは、人生最大の過ち。

しかもそのことに二十九年間も気づかなかったなんて……本当に申し訳ないわ。

間違えて呪いをかけられたのに、ウィルバートは……ハルトはアタシを責めなかった。

ハルトはどこか達観したように……いえすべてを諦めたように呪いを受け入れいた。

呪いをかけてから三十年が経過すると、呪いをかけられた対象者は死ぬ。三十年以内に呪いが解けていれば死なない。

つまり一年以内に呪いが解けなかった場合、ハルトは死ぬ。

呪いをかけられて死んだ人間は天国に行けず、地獄に落ちる。

そのことを伝えてもハルトは動揺しなかった。

「そのときは、潔く地獄に行くよ」

「お供いたします、ハルト様」

ハルトは死ぬことを恐れていなかった。地獄に落ちることさえ受け入れていた。

ハルトは良くても、アタシは全然良くないわ。

間違えて呪いをかけた相手を死なせて、地獄に送ったなんて後味が悪すぎるもの。

なんとかしてハルトにかけた呪いを解こうとしていたのだけど、ハルトは屋敷から一歩も出ようとしない。

そこに現れたのが、王命によりハルトの元に強制的に嫁がされてきた、リーゼロッテだった。

性悪なあばずれ女だったら追い出してやろうと思ったけど、リーゼロッテはとてもいい子だった。

ハルトもリーゼロッテを難からず思っているみたいだし、この子ならハルトの呪いを解けるかもしれない。

だけどこの二人、初々し過ぎて恋愛が進展する気配すらしない。

そんなとき執事が、リーゼロッテに膝枕をされて眠っていたハルトの髪の色が金色に戻っていたのを見た、と報告に来た。

なるほど、そういうことね。リーゼロッテならハルトの呪いを解けるかもしれないわ。

ハルトの呪いを解く可能性を見出したとき、国王から手紙が届いた。

手紙にはリーゼロッテを愛人として寄こせと書かれていた。

王命を読んだときのハルトは、人を殺すんじゃないかってくらい、怖い顔をしていたわ。

ハルトでもあんなおっかない顔をするのね。

自分がどれだけコケにされても怒らないのに、リーゼロッテが屈辱的な扱いを受けたときは激怒していた。

ハルトが城に乗り込んで、ワルモンドに報復するというので、黒髪のメイドに変装して城に乗り込んだ。

だがハルトの仕返しはぬるい。ぬるすぎる。

敵に頭を下げさせただけで満足しちゃうなんて、ハルトとリーゼロッテはお人好しすぎるわ。

ワルモンドはハルトに言われた通りに頭を下げて、反省した振りをしていたが、形だけなのがすぐに分かった。

ワルモンドは、ハルトに頭を下げながら、心の中で舌を出していた。

私だけ戻ってワルモンドに追加でお仕置きしてやったわ。

これでアイツらも少しはこりたでしょう。

ハルトの汚名を返上し、ワルモンドの犯した罪を民に知らしめることが出来た。

少しはハルトへの罪滅ぼしになったかしら?

反省が足りなさそうなワルモンドとトレネンとデリカに、クモとムカデとトカゲと蛇アタシのお友達をプレゼントしてあげた。

ワルモンドたちは恐怖に顔を歪め泣き叫んでいた。面白いものが見れたわ。

ワルモンドとトレネンとデリカの三人が反省しようがしなかろうが関係ない。五年が経過したら、頭をゴブリンに変えて荒野に捨てる。

私欲を肥やすだけの貴族も同じ目に合わせてやるわ。

まともな貴族と平民は、ハルトの功績を認め、リーゼロッテの悪口を言うのをやめるなら、助けてあげてもいい。

なんのかんの言ってハルトは国民に甘いから、「結界のルーンを刻んだ魔石の三分の一ぐらいは可動させようかな」……とかあとで言ってきそうな気がする。

これから一年、ハルトには恋愛に集中してほしい。だから、ハルトが望んでも魔石には魔力を注がせない。

だからアタシはたまにクルーゲ国の様子を見に戻り、モンスターの間引きをしようと思ってる。

国王や貴族が愚かだったつけを、国民が払う必要はないわ。

魔物の脅威はどこの国も抱えている問題。民が魔法や剣の腕を磨き、戦って魔物を退けるしかない。

いつまでも誰かが作った箱庭の中で、ぬくぬくとは暮らせないのだから。

民がある程度強くなったら、魔物を間引きするのをやめる。

あとはじれったい二人ハルトとリーゼロッテをくっつけて、ハルトの呪いを解くだけね。

アタシは全身にクリーンの魔法をかけてから、転移の魔法を唱えた。

あのバルコニー汚かったから、念入りに消毒しないとね。

ドラゴンの背にばい菌は持ち込めないわ。リーゼロッテにばい菌が付いたら大変だもの。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



新作短編を投稿しました。こちらもよろしくお願いします。

「冤罪で処刑された公爵令嬢はタイムリープする~二度目の人生は殺(や)られる前に殺(や)ってやりますわ!」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/225602514 #アルファポリス

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