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第一章
56話「シャインくんの正体」ハルト・サイド
しおりを挟む「そろそろ出発しようか」
「ハルト様、お城までは馬車で行くんですか?」
「いやリーゼロッテ、城までは飛んで行こうと思ってる。僕には空を飛べる友達がいるからね」
シャインくんに目で合図を送ると、彼は大きくうなずいた。
「皆様、わたくしの背にお乗りください」
「シャインさんの背中に乗っていくのですか?」
「そうだよ。シャインくんなら、三人ぐらい余裕で乗れるからね。なんたってシャインくんは……」
背中を向けたシャインくんの体がどんどん大きくなっていく。肌が漆黒に変色し、皮膚は鱗へと変わっていく。
「ドラゴンだから」
一分後、シャインくんの体は漆黒の体と羽を持つ、体長三十メートル、しっぽの長さ二十メートル、全長五十メートルほどの竜に変わっていた。
「はわわわわっ! シャインさんが黒い竜に……!」
リーゼロッテがパニックを起こしている。
「シャインくんは、五本の爪を持つ最高ランクのドラゴンなんだよ」
竜のランクは爪の多さで決まる。シャインくんは最高ランクの五本の爪を持っている。
だから彼はたくさんの竜を従えることができるんだ。本人は手下ではなく、友達だって言ってるけどね。
【さあ、皆様私の背中へ】
シャインくんは、人型のときとは違う低い声で話した。
「シャインさんは、竜の姿になっても人間の言葉を話せるのですね」
「シャインくんは高レベルのドラゴンだからね。竜の姿になっても人間と会話くらいできるよ」
この屋敷の炊事も庭仕事も買い物も掃除もベッドメイキングも、シャインくんがひとりでこなせたのは、彼がドラゴンだからだ。
彼は物凄い速さで動くことができるからね。
「レディをドラゴンの背中に直に座らせる気? 洒落てないわね。座席とシートベルトぐらいつけなさい」
魔女が指を鳴らすと、シャインくんの背中に三つの座席が取り付けられた。
前方に二人がけの座席シートが一つ、後方に一人がけの座席シートが一つ。
「これなら乗り心地も良さそうね」
アダルギーサが満足そうな笑みを浮かべる。
アダルギーサにしては気が利いている。
「空の旅、怖くない?」
僕はリーゼロッテに手を差し出した。
「ハルト様と一緒なら平気です」
リーゼロッテが僕の手を取り、ほほ笑んだ。
リーゼロッテの瞳に迷いはない。
「じゃあ行こうか! ワルモンドに一言いってやらないとね」
いざ王城へ!
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