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第一章

16話「リーゼロッテと黒髪のメイド」

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――リーゼロッテ・サイド――


太陽の日差しがベッドに降り注ぎ、私は眩しさで目を覚ました。

枕元にある時計を見ると十時を過ぎていた!

「もうこんな時間! 急いで学園に行く支度をしなくては! いけない、王太子の殿下の分の宿題がまだ終わってな……」

慌てて起き上がり、自分が豪華な天蓋付きベッドに寝ていたことに気づく。

公爵家の自室にあった足の折れそうなきしむベッドはどこにもない。

綺麗に掃除された日当たりの良い部屋、趣味の良いアンティークの家具……そうでした、私は王兄殿下に嫁いで来たんでした。

「おはようございます、リーゼロッテ様」

不意に声をかけられ心臓がビクリと音を立てる。

「ふぁっ! あのあなたは……」

振り返ると、美しい黒髪をみつ編みにした、ナイスバディの見目麗しいメイドさんが、ベッドの横に立っていました。

もしかして部屋のカーテンを開けてくれたのも、このメイドさんでしょうか?

「朝は紅茶にいたしますか? それともコーヒー?」

「えっと、では紅茶で」

「かしこまりました」

メイドさんがにっこりとほほえみ、陶器の器に紅茶を注いでくれた。

「あったかい、それにいい香り」

モーニングティーを淹れてもらったのなんて、何年ぶりでしょう。

「この紅茶には心を落ち着かせる成分が入っております」

「そうなんですか」

リラックスした気持ちになったのはそのせいかな?

「ところであなたは?」

昨日ハルト様が、このお屋敷には女性の使用人はいないとおっしゃっていたような?

「申し遅れました、私の名はこの家の主からリーゼロッテ様のお世話をするように頼まれました」

私のために、王兄殿下がメイドさんを雇ってくださった?

「はっ、私昨日……初夜をすっぽかして……!」

昨日ハルト様とお茶をしたあと眠くなってしまって、そのまま朝までぐっすり眠ってしまいました!

「この家の当主である王兄殿下に挨拶もせずに眠りこけていたなんて……不覚です!」

「そのことならご心配には及びません。王兄殿下が申しておりました、『リーゼロッテはよく眠っているようだからそのまま寝かせて置くように』と」

「そうだったのですね」

ということは王兄殿下は昨日、私が眠ったあと、私の部屋にいらして下さったのですね。

王兄殿下に、初めて見られたのが寝顔なんて恥ずかしいです。

「あの、私……昨日、ドレスを着たまま眠ってしまったはずなんですが」

今私は薄地のシュミューズドレスを身に着けている。

「私の着替えはどなたがされたのでしょう? ま、まさか王兄殿下が?!」

「リーゼロッテ様のお着替えは私がいたしました。どうかご安心ください」

「そ、そうだったのですね」

それを聞いてほっとしました。

私の同意なく婚姻届けが受理されただけでもショックなのに、その上私の同意なく初夜のいとなみが行われていたのでは辛すぎて、流石に心が折れます。

「リーゼロッテ様の髪をとかしましょう。あらよく見たらリーゼロッテ様の髪、大分傷んでおりますわね」

「えっ?」

「お肌もカサカサ、目の下にくままで……!」

「それは……」

睡眠不足、栄養失調、手入れ不足、色々たたって私の髪とお肌はボロボロです。

「新婚なのにそんなことではいけませんわ! 今すぐ湯浴みの支度をいたします! 私の調合した特製の入浴剤とシャンプーとトリートメントと石けんを差し上げますわ! 特製の入浴剤を入れたお風呂に入ればお肌はつるつるに、特性シャンプーとトリートメントを使えば髪はつやつやになりますわよ!」

「そうなんですか? ちょっと待って下さい……変なところ触らないで……ひゃあ!」

私はメイドさんの押しの強さに負け、強制的に服を脱がされ、朝からお風呂に入ることになってしまいました。

朝からお風呂に入るなんて贅沢をするのは、何年ぶりでしょう?

入浴剤もシャンプーも石けんもお花の良い香りがします。

入浴剤入りのお風呂に入っていたら、お肌がすべすべになってきた気が……!



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