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第一章

14話「魔女」ハルト・サイド

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「だってあいつが【ウィルバート】って名乗ったんですもの。まさかワルモンドの奴が、双子の兄の名を語って遊び回っていたとはね。三百年生きた魔女様でも見抜けなかったわ」

アダルギーサが肩をすくめる。

「それで事実確認もせずに、ウィルバートに呪いをかけて逃走したわけ?」

「逃走じゃなくて、失恋旅行よ。ちゃんと戻って来たでしょう?」

「二十九年も経ってからね」

戻って来るのが遅すぎるよ。

「まさか私をゴミのように捨てた男の本当の名前がワルモンドで、貴族の令嬢と結婚して、双子の兄を蹴落として王太子の地位をゲットして、数年後に国王に即位して、城でのうのうと暮らしているとは思わなかったわ」

「アダルギーサが『来年までにウィルバートの呪いが解けなかったらお前の顔をゴブリンにしてやる』と言って、ワルモンドを脅すから、ワルモンドが国王が権力を使って暴走したんだろ」

ワルモンドが国王の権力を使って、ウィルバートとリーゼロッテを結婚させるとは思わなかったよ。ややこしいことになったもんだ。

「だって呪いをかけられたワルモンドが、苦しんでいる姿を想像してウキウキしながら戻ってきたら、ワルモンドは好きな人と結婚して、国王になって、子供もいて、お城でぬくぬくと暮らしているんですもの。

あれぐらいの事言ってやらないとアタシの気持ちが収まらないのよ! 本当はワルモンドの下半身の大事な物を消してやりたかったのよ!」

怖っ……! アダルギーサなら本当にやりかねないな。ワルモンドの大事なものが消えても僕は痛くも痒くもないから、実行されていたとしても何の問題もないけど。

「ひとつ疑問があるのですが、王兄ウィルバート様にかけられた呪いを解く方法は【真実の愛】を見つけることですよね? それがどうしてリーゼロッテ様とハルト様を無理やり結婚させることに繋がるのですか?」

シャインくんが小首をかしげる。

「ワルモンドは【真実の愛=床を共にすること】という考えなんだろう。

ワルモンドは、ウィルバートがその気にならなかったときのための保険として、見目の良い男なら年齢や身分に関わらず誰でも襲うと噂のあるリーゼロッテを、ウィルバートの結婚相手に選んだ。

まぁ、身持ちの悪いのはリーゼロッテじゃなくて、双子と妹のデリカだったわけだから、ワルモンドの目論見は外れた訳だけど」

僕の説明に、シャインくんは「なるほど」と言って納得していた。


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