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第一章
2話「公爵令嬢リーゼロッテ・シムソン」
しおりを挟む――リーゼロッテ・サイド――
――翌日・王宮――
今日はよく晴れていて小鳥のさえずりが聞こえ、そよ風が吹いてとても心地良いです。
こんな日に婚約者と私の双子の妹と王宮の東屋で飲むダージリンティーはとても……。
「リーゼロッテ・シムソン! 貴様との婚約を破棄する!」
……とても苦いです。しかも冷たいです、私はアイスティーを注文したでしょうか? いえそんなはずがありません、熱々の紅茶を注文したはずです。
近くにいたメイドに視線を向けると顔を逸らされました。王太子殿下とデリカのお茶は湯気を立てているので、私のカップにだけ故意に冷めた紅茶を注いだようです。
殿下の隣の席を見るとデリカが勝ち誇った顔をしていました。デリカが何かしたんでしょうね。紅茶のことも、婚約破棄のことも。
「殿下、理由をお伺いしてもよろしいですか?」
「貴様が双子の妹のデリカを、公爵家や学園でいじめているからだ!」
「えっ?」
私がデリカをいじめている? 私がデリカにいじめられているのではなくて?
「とぼけるな! お前がデリカのドレスやアクセサリーを盗んでいることは知っているのだぞ! デリカを階段から突き落としたり、噴水に突き落としたりしていることもな! さらに自分のした失敗を全てデリカのせいにしているそうじゃないか! 先日も公爵が大事にしている高価な花瓶を割ったのを、デリカのせいにしたそうだな! お前はとんでもない悪女だ!」
殿下のおっしゃった言葉を理解するのに、しばらく時間がかかりました。全部濡れ衣です。
「いえ、それは私がデリカにされていることです。先日お父様が大切にされていた花瓶を割ったのもデリカで……」
「白を切っても無駄だ! 使用人が銀色の髪の若い女が公爵の書斎から逃げていく後ろ姿を目撃している!」
「お言葉ですが殿下、デリカと私は双子の姉妹。デリカも私と同じ銀髪です。使用人はお父様の書斎から逃げて行った女は何色のドレスを着ていたと話していましたか?」
公爵家には銀髪の若い女は二人いるのです。
幼い頃から両親や周りの大人に取り入るのが上手かったデリカは、両親や使用人に愛され、桃色や赤や黄色などの華やかなドレスを身にまとっていました。
対して私は幼少の頃からデリカに貶められ、祖母のお古のドレスを身につけてきました。
私の持っているドレスは、時代遅れの型で、地味な茶色や濃い藍色の服ばかりです。
「お父様の書斎から逃げた女が桃色や赤のドレスを着ていたら……」
「ひどいわ! お姉様はどうしてそんな事を言うの? どうしても私にお父様の大切にしている花瓶割った罪をなすりつけたいのね?」
デリカが眉尻を下げ泣き真似を始めた。
「大丈夫だよデリカ俺がついてる、泣かないでくれ」
嘘泣きをするデリカを殿下が慰めました。なんでしょうこの茶番は?
「この嘘つきの性悪女め! 清らかで純粋無垢で優しいデリカを泣かすとは何様のつもりだ!」
トレネン殿下が自身の使っていたカップを持ち上げ、カップの中身を私にかけた。
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