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第一章

1話「プロローグ」

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――プロローグ――



――二十九年前、王宮にて――




『違う! 僕ではない! 僕は何もしていない! 父上、母上、信じて下さい!』

『魔女の呪いを受けたその姿で何を言う!』

『ウィルバート、母はあなたに失望しましたよ』

『見苦しいですよウィルバート兄上』

『ワルモンド、君がしたことなのだろう! 素直に罪を認めよ!』

『往生際が悪いぞウィルバート! 只今を持ってお前を廃太子とする! 国は次男のワルモンドに継がせる! せめてもの温情で王族の席だけは抜かずにおいてやる。北の森にある屋敷でおとなしくしていろ!』

『待って下さい父上!』

『ウィルバート、あなたは王族の恥です。二度と顔を見せないでちょうだい』

『母上そんな……!』

『さようなら、ウィルバート兄上』

『ワルモンド本当のことを言うんだ!』

『ウィルバートを外に連れて行け!』

『『『かしこまりました! 陛下!』』』

『僕はなにもしていない! 本当なんです! 父上ーー! 母上ーー!』














――現在、北の森――



「お目覚めですかハルト様」

天蓋付きのベッド、窓から差し込む木漏れ日、小鳥のさえずり。

鼻孔をくすぐるアップルティーの香り、心配そうに僕を見つめる執事の顔。

そうか、あれは夢だったのか……。

「おはようシャインくんか、ちょっと嫌な夢を見てね」

モーニングティーを受け取り一口飲む、温かい。

「夢ですか?」

不安そうな顔でシャインくんが問う。

「そう城を追い出されたときの夢、もう三十年近く昔のことなのにね」

随分昔の出来事なのに昨日のことのように鮮明な映像だった、夢って怖いね。いい加減忘れてもいいだろうに。

「もしかしたらハルト様がその夢を見たのは、この手紙のせいかもしれませんね」

「手紙?」

シャインくんが差し出した銀色のトレイの上には白い封筒とペーパーナイフが乗っていた。

「今朝王城から使者がやってきて、この手紙を置いて行きました」

ワルモンドがよこした使者か……どうせろくなことが書いてないんだろう。

「王の蝋印ろういんの押された封筒ね……嫌な予感しかしないな」

僕はティーカップをテーブルに戻し、手紙とペーパーナイフを受け取った。

これが僕の呪いを解くことに繋がるなんて、このときは想像だにしなかった。















☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



・本日(2023/09/16)新作小説を3作品アップしました。
 約60,000文字の中編2作品と、約10,000文字の短編1作です。
 よろしくお願いします、


「妹の身代わりに殺戮の王子に嫁がされた王女。離宮の庭で妖精とじゃがいもを育ててたら、殿下の溺愛が始まりました」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/569801954 

「不治の病にかかった婚約者の為に、危険を犯して不死鳥の葉を取ってきたら、婚約者が浮気してました。彼の病が再発したそうですが知りません」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/580801989 

「完璧な淑女と称される王太子妃は芋ジャージを着て農作業をする。 ギャップ萌え~の効果で妖精王が釣れました」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/430802006


 
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