【BL】完結「異世界に転移したら溺愛された。自分の事を唯一嫌っている人を好きになってしまったぼく」

まほりろ

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29話「新居」

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「私は村に帰るけど、リュートはこれからどうするの？」

アメリーさんはリュートがアイテム袋から出した服に着替えていた。

アメリーさんの着ているのは胸が大きく開き、スリットが入った深紅のドレス。

リュートいわく、アメリーさんが村で着ていた服らしい。

胸の大きく開いた服は魔王の趣味だと思ってたけど。アメリーさんの着ている服に合わせて用意したのかな？　白のドレスはアメリーさんの趣味じゃなかったみたいだけど。

「おれは魔王城ここでハルトと暮らすよ」

「えっ？　ここで？」

リュートの唐突な言葉に目を瞬かせた。リュートはなんでこんなところで暮らそうと言い出したんだろう？

「理由は二つ、一つは魔王城には普通の人間が来られない。魔王城のあるこの島には船では近づけない、転移魔法も使えない、ここに来るには飛んで来るしかない」

確かにここにいれば一般人に襲われる心配はない。聖なる翼ハイリヒ・フリューゲルの魔法が使えるリュートの故郷の村の人しか来れない。

「神子のハルトは魅了の技を永続的に使い続けてる、だから普通の人が近づかない魔王城にいた方が安全だ。だから姉さんもここにおれとハルトがいることを口外しないで」

ぼくのことを考えてのことだったんだ。リュートのやさしさに胸がキューンと音を立てる。

「ハルトくんて神子なの？！　リュートやるじゃない！　リュートは変人だからこの世界の人間とは絶対に結婚できないと心配してたのよ！　でも神子は異世界人だからリュートみたいな変わり者でも結婚できたのね！」

アメリーさんが一人うんうんとうなずき、納得していた。

「二つ目は」

リュートがアメリーさんの言葉を華麗にスルーした。

「魔王の城には研究施設が整っていること」

「研究施設？」

「そう研究施設があればハルトの魅了の技と、おれにかけられた時を止める呪いについて調べられる。ハルトが永続に放っている魅了の技を封じることはできないけど、おれにかけられた時を止める呪いを研究すれば、魅了の効果を無効にできるかもしれない」

「そうだ、魔王がリュートにかけた呪いは解けたの？」

リュートがぼくを襲って来ないところを見ると、魔法は解けてない？　おのれトカゲ魔王っ！　あのとき逃さなければよかった！

「リュートが魔王にかけられた呪いって、時を止める呪いだったの！　くっ、羨ましい！　いつまでも若いままでいられて、氷漬けにされたのと違って自由に動けるなんて最高じゃない！　私もかけてもらいたいわ！　魔王どこに行ったの？　今からでも探し出して私に時を止める呪いを……」

「姉さんはちょっと黙ってて」

「何よ、冷たいわね」

アメリーさんが腰に手を当てて頬をふくらませる。天真爛漫な人だな。

「魔王にかけられた呪いは解けたよ、そんな感覚がある」

「でも、リュートは冷静なままだよ。ぼくを襲って来ないし」

お姉さんの前でエッチするのはかなり恥ずかしいけど、リュートになら乱暴にされても嫌じゃない。

「おそらく魔王にかけられていた呪いの効果が完全に切れるのに、呪いをかけられていた時間の半分が必要なんだと思う」

「つまり……？」

「あと一年はこのまま」

リュートの言葉を聞いて地面に崩れ落ちた。

「そんな……！」

リュートとのラブラブセックスが……！　新婚生活が……！　蜜月のいちゃいちゃが……！　あと一年もおあずけなんて……！！

リュートとの性行為を楽しみにしてたのに……！　ぼくの目からボロボロと涙が溢れる。

「ハルト大丈夫？　泣くようなこと言った？」

リュートが膝をつき、ぼくの肩に手を置く。

「ハルトくん、どうしたの？」

アメリーさんが心配そうにぼくの顔をのぞき込む。

「おちんち……んが、リュートのおちんちんがあと一年も勃起たたないなんて……！」

ぴえーんと声を上げ泣きじゃくるぼくの背中を、リュートがやさしくなでてくれた。

「やだぁ、リュートったら今不能なの？　　新婚なのにね、プププ」

アメリーさんがニヤニヤしながら、リュートの肩をたたく。

「姉さんまだいたの？　聖なる翼ハイリヒ・フリューゲル村に帰っていいよ」

リュートがクールに切り返す。

「もう何よその言い方、分かりました。邪魔者は聖なる翼ハイリヒ・フリューゲル村に帰ります～～」

「リヒトくんと、ラインハルトくん、元気にしてるかしら？　二年前はショタだったけど、食べ頃に育ってるかな～～？　楽しみ～～！」

ルンルンしながらアメリーさんが聖なる翼ハイリヒ・フリューゲルの呪文を唱える。アメリーさんの背に純白の翼が現れた。

「まったね～～！　リュート！　ハルトくん！　気が向いたら聖なる翼ハイリヒ・フリューゲル村にも遊びに来てね～～！」

アメリーさんは陽気に手を振り、飛び立って行った。

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