【BL】完結「異世界に転移したら溺愛された。自分の事を唯一嫌っている人を好きになってしまったぼく」

まほりろ

文字の大きさ
上 下
29 / 33

28話「アメリー」

しおりを挟む



「姉さん、アメリー姉さん!」

リュートが目を閉じたままの美少女を抱きかかえ、呼びかける。

お姉さんだと分かっていても、リュートが他の人と一緒にいるのを見るとやきもきしてしまう。

魔王に連れ去られ、生死不明だったお姉さんとの二年ぶりに再会したんだ。我慢しなくちゃ。

リュートがシスコンじゃありませんように! ぼくは心の中で祈っていた。

リュートのお姉さん、アメリーさんの口元が動いた。良かった、生きてる!

「うるっさいわね、あと五分寝かせて~~」

うん、命に別状はなさそうだな。今のセリフは聞かなかったことにしよう。せっかくの感動の再会が台無しになってしまう。

五分後、アメリーさんは宣言通り目を覚ました。

「あら、私どうしてここに? そうだわ魔王にさらわれて……リュートが助けに来てくれたの?」

さっきの「あと五分寝かせて~」がなければ、感動的なセリフだったのにな。

「姉さんが魔王にさらわれてから二年たったよ、魔王にさらわれたときのことを覚えてる?」

アメリーさんが額に手を当てて考え込む。

「確か誕生日に魔王が突然現れて、魔法で眠らされたの。気がついたときには魔王城にいて、魔王に『我の子を産んでくれ』と口説かれて……」

「いかがわしいことをされたの?」

リュートの目が暗く光る、いまここに魔王がいたら殺されてたな。

「されてないわよ『ごめんなさい、あなたタイプじゃないの、あなたが渋めのおじさんになったら考えて上げてもいいわ』って答えたの、魔王は二十代前半ぐらいに見えたから。もちろん時間稼ぎよ、私どちらかといえば年下が好みだし。そうしたら魔王が『ではあと千年待て、渋みがかったイケオジになってやろう』って言ったの。私が『あと千年も生きられないから無理です、家に帰して』って答えたら、魔王に『その心配はいらない』と言われて、着替えさせられて、氷漬けにされたのよ。『千年後私の花嫁にする、それまでは観賞用としてここに飾っておく』って言われてね。その時はショックだったわ、私白い服は似合わないのに、よりによって白いドレスを着たまま千年も氷漬けにされるなんて~~!」

アメリーさんが早口で説明してくれた。なんにしても、エッチな目に合わされなくて良かった。

いやセクシーなドレスを着せられて氷漬けにされていたから、セクハラはされてたみたいだけど。

「なんにしても私の機転のおかげで、無事でいられたわけ」

「姉さんの話術に引っかかるような間抜けな魔王で良かったね」

「相変わらず可愛げがないわね、そんな性格じゃ村に帰っても恋人が出来ないし、結婚もできないわよ」

「掟を破って村を出たから村には帰れない、帰るつもりもないけど。それから恋人は出来た、結婚もした」

「ふぇっ?!」

「リュート、結婚したの? いつ? 誰と?」

リュート結婚してたの? いつ? 誰と? どこで? 一夫多妻制の世界なの? ぼくには他の男に襲われるなとか言ってたのに、自分は結婚してたの?

リュートがぼくの顔を見て不思議そうに首をかしげる。

「おれはハルトと結婚したつもりでいたんだけど、ハルトはそう思ってなかったの?」

「ふわわっ! ぼくリュートと結婚してたの? い、いつ?」

指輪の交換したかな? 誓いのキスしたっけ?

「おれの育った村では、結婚した相手以外のアナルに指なんて入れないよ」

リュートがぼくの耳元でささやく。

ボッと音を立てぼくの顔に熱が集まる。

「ぼく、リュートの奥さんなの?」

「おれはそう思ってたけど、おれが夫じゃ嫌?」

リュートが小首をかしげる。

「ううん、嫌じゃないよ! ぼくリュートのお嫁さんになれて嬉しいよ!」

ぼくはリュートに抱きついた。リュートがぼくをぎゅっと抱きしめる。

「あらあら、私お邪魔みたいね」

アメリーさんがからかうように笑う。

「うん、姉さんにしては察しがいいね」

「ほんとに可愛くないわね、ハルトくんだっけ? こんな無愛想で口が悪くて何を考えてるか分からないやつのどこがいいの?」

アメリーさんが、むくれた顔でリュートを睨む。

「えっと、リュートのお姉さん……?」

「アメリーでいいわよ、義理の姉弟なんだし」

アメリーさんがぼくを見てにこにこと笑う。

リュートと違いコロコロと表情が変わる人だ。

「アメリーさん、リュートって昔からこんな性格なんですか? 魔王の呪いとかじゃなくて」

「そうよ、昔から無表情で毒舌で冷たい性格なの。えっ? ていうかあんたも魔王に呪いをかけられてたの? 魔王のこと間抜けとか乏しておいて、そのトンマな魔王に呪いをかけられるなんて、あんただって抜けてるじゃない!」

アメリーさんがお腹を抱えてケタケタと笑う。知的で艶美な美女のイメージが……。

「おれは油断しただけ、氷漬けにされてた誰かさんよりはまし」

「何よ! そのおかげで二年間も年を取らなかったのよ! ラッキーでしょ! どうせなら十年ぐらいたってから助けに来てほしかったわ」

アメリーさんがが腰に手を当てプリプリと怒りだす。

「私を年増呼ばわりしたガキ共を見返してやれたのに!」

アメリーさんは喜怒哀楽が激しい人だ。リュートの表情筋までアメリーさんが持って生まれちゃったのかな?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた! どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。 そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?! いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?! 会社員男性と、異世界獣人のお話。 ※6話で完結します。さくっと読めます。

異世界に転移したら運命の人の膝の上でした!

鳴海
BL
ある日、異世界に転移した天音(あまね)は、そこでハインツという名のカイネルシア帝国の皇帝に出会った。 この世界では異世界転移者は”界渡り人”と呼ばれる神からの預かり子で、界渡り人の幸せがこの国の繁栄に大きく関与すると言われている。 界渡り人に幸せになってもらいたいハインツのおかげで離宮に住むことになった天音は、日本にいた頃の何倍も贅沢な暮らしをさせてもらえることになった。 そんな天音がやっと異世界での生活に慣れた頃、なぜか危険な目に遭い始めて……。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

ブラッドフォード卿のお気に召すままに~~腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する~~

ゆうきぼし/優輝星
BL
異世界転移BL。浄化のため召喚された異世界人は二人だった。腹黒宰相と呼ばれるブラッドフォード卿は、モブ扱いのイブキを手元に置く。それは自分の手駒の一つとして利用するためだった。だが、イブキの可愛さと優しさに触れ溺愛していく。しかもイブキには何やら不思議なチカラがあるようで……。 *マークはR回。(後半になります) ・ご都合主義のなーろっぱです。 ・攻めは頭の回転が速い魔力強の超人ですがちょっぴりダメンズなところあり。そんな彼の癒しとなるのが受けです。癖のありそうな脇役あり。どうぞよろしくお願いします。 腹黒宰相×獣医の卵(モフモフ癒やし手) ・イラストは青城硝子先生です。

愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる

彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。 国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。 王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。 (誤字脱字報告は不要)

「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。

猫宮乾
BL
 異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。

処理中です...