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25話「魔王城」
しおりを挟む魔王城があるのは南の海。波が荒く、島を囲むように岩礁があり、一年中黒い霧がかかっている。島の周りは全て断崖絶壁になっていて、船では行けない。
これがゲームなら、飛行船や気球、伝説の不死鳥か天馬がなければたどり着けない場所だ。
まさにラスボス戦にふさわしい舞台と言える。
ぼくたちは、リュートの聖なる翼の魔法で魔王城に乗り込んだ。
ぼくのポケットの中には、一回だけ転移の魔法が使えるアイテムが入っている。
リュートに「いざとなったらこれを使って、ハルトだけでも逃げて」と言われて渡されたけど、ぼくはこれを使うつもりはない。
逃げたとしても、知らない土地でぼくの魅了の技でおかしくなった男に犯されるのがオチだ。
それならリュートと一緒に討ち死にする!
それに……魔王からは逃げられない。
昔からのセオリーだ。
ぼくはリュートの手をぎゅっと握りしめた。
「怖い?」
リュートがぼくの手を握り返す。
「うん、でもリュートが一緒だから」
リュートと一緒なら死んでもいいって思ってる。
だけどぼくはリュートと一緒に生きたい! 生きてリュートのお姉さんを助け出し、リュートとラブラブな新婚生活を送りたい!
「危なくなったら、おれを突き飛ばしてでも逃げてね」
「それは、無理」
ぼくはリュートと一緒にいたい。
「リュートが死ぬときは、ぼくも一緒に死ぬって決めてるから」
「仕方ないな。それならいつどこから敵が襲ってきても対処できるように、武器だけは装備しておいて」
「うん!」
ぼくはリュートと繋いでいない方の手で、『転んだ拍子に会心の一撃剣』をしっかりと握りしめた。
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