【BL】完結「異世界に転移したら溺愛された。自分の事を唯一嫌っている人を好きになってしまったぼく」

まほりろ

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14話「あんたわざとやってるだろ?」

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ズドーーン!! ガラガラガラガラッッ!!

爆音とともに天井に穴が空き、砂煙が舞う。

「ほんと、あんたわざとやってるだろ?」

聞き覚えのある澄んだ声が響く。

「なんでおれの行く先々にあんたがいるの?」

凛々りりしい顔、華奢きゃしゃだけど優美なたたずまい。

「リュ、リュートォォッッ!!」

涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で、リュートの名を叫ぶ。

「誰かと思えば聖なる翼ハイリヒ・フリューゲル村から来たというガキか!」

赤い髪の男が不機嫌そうな顔で立ち上がる。

「神に仕える神聖な一族ゆえ、図書館の利用を許可しましたが、他人の寝所を覗き見るようなまねは許容しかねますね」

橙色の髪の男とその他の王子たちも立ち上がり、リュートを見据える。

「念のために聞くけど同意の上? 輪姦されるのがあんたの趣味?」

リュートが淡々とぼくに尋ねる。でもいつもより不機嫌そうに感じるのはぼくの気のせい?

「違うよ!」

ぼくはぶんぶん首を横に振る。

「ぼくが好きなのはリュートだけだもん!!」

ぼくの言葉に王子たちの顔色が変わる。

「いけないなぁ、神子の独り占めは」

「そうです、天使を独り占めするのは太古の昔から戦争のもとです」

「どうする? ロート兄さん、緋色プルプル兄さん」

「プルプルって呼ぶなと言っているでしょ! 失礼取り乱してしまいました。ここは世界の平和のために、天使を独り占めしようとする不届き者を退治するしかないでしょう」

「そうだよね」

「いっちょ、やっちゃいますか」

「おいらも久しぶりに自分の力を使ってみたかったんだ~」

レーゲンボーゲンの国の王子たちが不吉な言葉を口にする。

どうしよう、リュートがいくら強くても七人も相手じゃ不利だ。

しかもこの王子たちは特殊な技を使う!

「逃げてリュート!」

「もう遅い! 我らレーゲンボーゲン国の七兄弟を怒らせて無事に帰れると思うな! ギフト!」

眠りシュラーフ!」

麻痺レーメン!」

魔法封じツァオバー・ベエンゲン

幻覚ハルツィナツィオーン!」

混乱フェアヴィレン!」

「そして、兄上たちの技がすべて効いたときにだけ発動するおいらの技! 兄弟の中で最も強力な力! トートッッ!!」

七人の王子たちが虹色の光を放つ! 光がリュートに向かっていく。

どうしよう! リュートが死んじゃう!

ぼくと関わったばかりに!

「リュートォォォォっっ!!」

目もくらむような虹色の光が、リュートに触れた瞬間消滅した。

リュートは何事もなかったように同じ場所に立っいた。

「くっ、なぜだ! なぜ死んでいない!」

赤髪の王子がリュートに尋ねる。その顔は苛立っているように見えた。

「うそでしょ、おいらの技を受けて生きてるなんて!?」

紫の髪の王子が顔をゆがめる。

「今まで我ら七兄弟の技が効かなかったことなどないのに……!」

橙色の髪の王子が喚く、その顔は恐怖心からか青ざめていた。

「悪いけど、おれにそういう技は効かないから」

リュートが一歩前に出ると、王子たちが一歩後退った。

「そこのベッドに全裸でつながれてる子おれの弟子なんだ、返してくれる? だめだって言われても連れてくけど」

スンとした顔でリュートが言い放ち、杖を掲げる。

「水の精霊よ我に従え、氷の竜アイス・ドラッヘ

蛇のように体の長い水色の壮麗な竜があらわれ、七人の王子に向かっていく。

「「「「「「「ぐぁぁああああッッ……!!」」」」」」」

断末魔が響き、七人の王子の氷の彫刻が出来上がった。

暴風シュトゥルムヴィントが使えて、『転んだ拍子に会心の一撃剣』を持ってて、あれだけのレベルがあって、なんで拘束される?」

いつの間にかぼくの隣に座っていたリュートが、ぼくの顔をじっと見る。

リュートが苛立っているように感じるのは、ぼくの気のせい?

リュートが杖でぼくを拘束していた手錠と足かせをたたく。拘束具はあっけなく壊れた。ぼくの腕と足に拘束具の跡が残っていた。

回復ベッセルング

リュートが杖をかざすと、ぼくの体にあったあざが消えていく。

「拘束されるのが趣味とか?」

リュートが間近にいる、ぼくを助けに来てくれた!

「リュートだ……リュートがいる! リュートぉぉぉぉッッ!!」

涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔でリュートに抱きつく。

リュートにスルッとかわされ…………ることはなかった。

ぼくはリュートの胸にダイブしていた。

「間抜けな弟子を持つと師匠は苦労する」

リュートがぼくの頭をぽんぽんとなでてくれた。

夢でも見ているのかな? リュートがやさしいなんて?!

「リュート! 虹色王子におかしな魔法か技をかけられた?」

ぼくはリュートの顔をのぞき込む。

「なんでそう思うの?」

「だっていつもはぼくが抱きつこうとすると避けるのに、今日は受け止めてくれたから、虹色王子の変な魔法か技にかかったんじゃないかなと思って」

何色か忘れたけど、混乱の魔法を使う王子がいたはず。

「おれには……そういうたぐいの魔法も技も効かないから」

魔法も技も効かないってどういうこと?

「それと涙と鼻水で顔をびしょびしょにした人が突進してきたら避けるよ、普通」

うっ、確かに。

「でも今も涙と鼻水とぐしゃぐしゃな顔してるよ」

リュートのローブに涙と鼻水をつけてしまったのは、内緒にしておこう。すぐにバレそうだけど。

「さぁ、なんでだろ……あんたがおれの弟子だからかな?」

リュートがまた頭をぽんぽんと撫でてくれた。

理由はわからないけど、リュートが優しいならいいかな。

ぼくは再度リュートの胸にダイブした。

リュート好き、大好き! 助けに来てくれて、ありがとう!


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