【BL】完結「異世界に転移したら溺愛された。自分の事を唯一嫌っている人を好きになってしまったぼく」

2話「少年との出会い」

ぼくは呆然と男が消えた方向を眺めていた。

「ねぇ」

少年に声をかけられ、体がびくりと震え、思わず後ずさる。

今まで助けてくれた人は、皆ぼくを自分のものにしようとした。

条件反射で体が震え、少年から距離を取ってしまう。

ふわりと何かが触れる感触があり、見ると少年の羽織っていた白いマントが肩にかかっていた。

「あんた裸で森を徘徊するのが趣味なの？」

少年が淡々とぼくに尋ねる。

少年の目は今まで会ったどの人とも違い、清んだ青い目をしていた。今まで会った人はみんな欲情にまみれた野獣のような目をしていた。

ぼくは少年がかけてくれたマントをぎゅっと握りしめた。

「そんな訳ないでしょ」

好き好んで半裸で森を徘徊する人間がいたら変態だ。

「話しかけたらいきなり求婚されて、襲われて、逃げたらまた別の人に襲われて、それを繰り返しているうちに服が破られたり、脱がされたりして、いつの間にかシャツ一枚に……」

話してたら泣きたくなってきた。半日の間に、いったい何人に襲われたんだろう？

思い出したら、背筋が寒くなった。

「別にどうでもいい、邪魔だから消えてくれる。おれこの木の上で昼寝したいから」

少年が興味なさそうにぼくを見て、冷たく言い放った。

ドキン……！

半日初対面の人に求愛され襲われてたせいで、変な性癖に目覚めちゃったかも？

冷たい目で見られ、興味なさげに話す少年の態度にドキドキしてしまう。

「待って！」

ぼくは少年の足を掴み追いすがる。

少年が心底面倒くさそうな顔でぼくを見た。

トクン……！

まただ少年のクールなまなざしにときめいてしまう。

おかしいな、ぼくは女の子が好きなはずなのに。

「……何？」

少年は低い声でうざったそうに答えた。

「手を縛られたままだし、ズボンもパンツも履いてないし、靴もないし……」

瞳に涙をため、上目づかいで少年を見る。

少年は死んだ魚の目で深く息を吐いた。

そんなしぐさにまたドキドキしてしまう。

本格的におかしい。なんでぼくは初対面の男の子に冷たくされてときめいているんだろう？