2 / 33
1話「扉を開けたらそこは異世界でした」
しおりを挟むある朝玄関を開けたら、目の前に森が広がっていた。
ぼくの家は閑静な住宅地にあり近所に森などない。
振り返ると家はなくなっていて、どこまでも森が続いていた。
森の中を歩くこと一時間、村を見つけた。
だけどどう見ても日本じゃない。
中世ヨーロッパ風の建物が並び、人々も中世のようなフードやローブを着ている。
とりあえず第一村人に声をかけてみる。
「あのすみません。ここってどこですか?」
どうか東京ド〇ツ村か天栄村にあるブリテ〇ッシュヒルズか映画のセットでありますように。淡い期待を込めて第一村人を上目遣いで見る。
緑の髪で背の高い、戦士風の衣装を着た人だった。
「……すきだ」
「はい?」
「すきだ村」というのだろうか?
ぼくが小首をかしげると、次の瞬間男に抱きしめられた。
「好きだ! 愛してる! 結婚してくれ!」
ギャー! と叫びたいのをぐっとこらえ、ぼくを抱きしめている男をぽかぽかと殴る。
「あの……ぼく男なんですけど!」
「男でもかまわない!」
男がぼくを抱きしめる腕に力を込める。
痛い! 苦しい! だれか助けて!
「離して!」
ぼくがぽかぽか攻撃を続けていると、「おい! その手を離せ!」誰かが男を蹴り飛ばした。
ぼくはようやく男の腕から解放された。
「あの助けてくれてありがとうございます」
助けてくれた人に頭を下げる。
金髪の、貴族風の服を着た美青年だった。
青年はぼくの手を取り「礼など入りません! どうか私と結婚して下さい!」宝石のようにキラキラ光る目でぼくを見つめる。
「あのぼく、男なんですけど」
引き気味に僕が答えると。
「琥珀色の髪に黒真珠のような瞳、雪のように白くすべすべした肌に、薔薇のようにピンクの唇、折れそうな華奢な体! 君のように可憐な人なら男でもかまわない!!」
青年はそう言ってぼくを強く抱きしめた。
助けてくれたと思ったのに、この人も変態だった!
「僕と一緒に屋敷に帰り結婚式を上げましょう!」
馬車に乗せられ誘拐されそうになったぼくを、今度は猟師風の黒髪の青年が助けてくれた。
その人にも「一目ぼれした! 伴侶になってくれ!」と言われ、宿屋に連れ込まれた。
宿屋の主人が助けてくれて、その人も変態でベッドに押し倒された。
今度は赤髪の魔法使い風の人が助けてくれた。やっぱり、その人も変態で求婚されて押し倒されて。
そんなことを何十回か繰り返し、日が傾きかけた頃、ぼくは村で最初に声をかけた緑の髪の男に森の中に連れこまれ、木の根元に押し倒されている。
逃げ回っている間に服をはぎ取られ、靴を落とし、今ぼくが身につけているのは白のワイシャツに白の靴下だけだ。
両手を頭の上で拘束され、男に馬乗りになられ身動きが取れない。
「はぁはぁ、やっと二人きりになれた……!」
男がギラギラした目つきでぼくの体をなめ回すように見る。男の荒い鼻息がぼくの顔にかかる。
気持ち悪い。生理的な嫌悪感で背中を冷たい汗が伝う。
「妖精が最初に声をかけたのは俺だっつうの……!」
男が上着を脱ぎ捨てる。
見事に六つに割れた腹筋と筋骨隆々の太い腕があらわになる。
「止めて……!」
プルプルと震えながら涙目で見上げると「くっ、そんなにあおるなよ妖精!」男が顔を赤くし、舌なめずりをした。
「やぁぁ……!」
男の手がぼくの胸に近づいてくる、嫌悪感で背筋が凍る。
「ねぇ、迷惑だからここで騒ぐの止めてくれる」
淡々とした冷たい声が響く。
「ああっ! 誰だよ! こいつは俺の嫁だ!」
男が地面においた剣を手に取る。
男が周りを見回すが誰もいない。
「ここだよ」
木の上から、少年が下りてきた。
空のような青い髪に、サファイアのような青い目、白いマントを身に付けた凜としたたたずまいの美少年だった。
多分ぼくと同い年ぐらい。
「ガキは家でママのおっぱいでも飲んでな! こいつは俺のもんだ!」
男が立ち上がり剣を抜く。
「そうなの?」
男に剣を向けられても顔色一つ変えず、少年がぼくに尋ねる。
「違います!」
ぼくは上半身を起こしふるふると首を横に振る。
「違うってさ」
少年が男に視線を戻す。
緑の髪の男ぼくを見て「まじ可愛い! 絶対に犯す!」と呟く。
男に飢えた野獣のような目で見られ、ぼくの体がぶるりと震える。
「うるせぇ! 妖精は俺の嫁なんだ! 邪魔するならガキでも容赦しねぇ!!」
緑髪の男が少年に切りかかる。
「ダメっ!」
ぼくのせいで少年が死んじゃう!
「風の精霊よ我に従え、暴風」
少年の手から暴風が巻き起こり、緑髪の男は上半身裸のまま放物線を描きお空のかなたに飛んでいった。
1
お気に入りに追加
747
あなたにおすすめの小説

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。

獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた!
どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。
そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?!
いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?!
会社員男性と、異世界獣人のお話。
※6話で完結します。さくっと読めます。

異世界に転移したら運命の人の膝の上でした!
鳴海
BL
ある日、異世界に転移した天音(あまね)は、そこでハインツという名のカイネルシア帝国の皇帝に出会った。
この世界では異世界転移者は”界渡り人”と呼ばれる神からの預かり子で、界渡り人の幸せがこの国の繁栄に大きく関与すると言われている。
界渡り人に幸せになってもらいたいハインツのおかげで離宮に住むことになった天音は、日本にいた頃の何倍も贅沢な暮らしをさせてもらえることになった。
そんな天音がやっと異世界での生活に慣れた頃、なぜか危険な目に遭い始めて……。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。
ブラッドフォード卿のお気に召すままに~~腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する~~
ゆうきぼし/優輝星
BL
異世界転移BL。浄化のため召喚された異世界人は二人だった。腹黒宰相と呼ばれるブラッドフォード卿は、モブ扱いのイブキを手元に置く。それは自分の手駒の一つとして利用するためだった。だが、イブキの可愛さと優しさに触れ溺愛していく。しかもイブキには何やら不思議なチカラがあるようで……。
*マークはR回。(後半になります)
・ご都合主義のなーろっぱです。
・攻めは頭の回転が速い魔力強の超人ですがちょっぴりダメンズなところあり。そんな彼の癒しとなるのが受けです。癖のありそうな脇役あり。どうぞよろしくお願いします。
腹黒宰相×獣医の卵(モフモフ癒やし手)
・イラストは青城硝子先生です。
愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる
彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。
国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。
王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。
(誤字脱字報告は不要)

「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。
猫宮乾
BL
異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる