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十七話
しおりを挟む「良かった! レオナルドと両思いになれたんだね? あの日以来学校に来ないから心配してたんだよ! レオナルドに酷いことされてない? もしかして監禁されてるの?」
雲の上の存在だと思っていた王太子殿下に手をにぎられ、質問責めにされ、僕の頭は混乱していた。
王太子殿下はなぜ、貧乏男爵の子息である僕の名をご存じなのだろう?
「止めろミハエル、サフィールが混乱している。それからサフィールから手を放せ、サフィールに触れていいのは私だけだ」
口調は穏やかだが、レオナルド様の声のトーンは低かった。
「ごめんね、サフィールくんがレオナルドに監禁陵辱されてないか心配で」
王太子殿下が僕から手を離す。
レオナルド様の愛人になって一カ月、寮の部屋から出してもらえない日々が続いた。
「外に出たいです、勉強もしたいです」とレオナルド様にお願いしたら、寮から王都にあるレオナルド様のお屋敷に移された。レオナルド様も寮から王都にあるお屋敷に移られた。
レオナルド様はお屋敷から学園に通われているが、僕は学園に通わなくても試験さえパスすれば進級できるようにしてもらえた。
家庭教師をつけてもらう代わりに、レオナルド様に勉強を見てもらっている。レオナルド様は学校の授業もあるから基本的には自習だけど。
レオナルド様がいないときは外から鍵のかかる窓のない部屋で過ごすようにいわれてる。レオナルド様がいらっしゃるときは庭の散歩をさせてもらえるし、たまに市場にも連れて行ってもらえるから、監禁はされてない。
エッチは毎日している。最近はロープで全身を縛られたり、両手に手錠をかけられたりしているけど、同意の上だから陵辱はされていない。
猫のレオを可愛がりすぎたとき、猫のレオに嫉妬したレオナルド様に、女の子の下着を着せられて猫耳のカチューシャとおもちゃのしっぽをつけられて、レオナルド様のペニスを口に含んで精液を飲むように強要されたけど、さほど嫌ではなかったから、これも陵辱ではない。
「私はサフィールを大切に扱っている」
「本当、サフィールくん?」
「はっ、はい、本当です、王太子殿下。レオナルド様には大変よくしていただいております!」
レオナルド様は愛人の僕なんかを大切に扱ってくださる。まるで貴重な宝石を幾重にも包んでひと目に触れさせないで金庫にしまっておくように、大事に大事にされている。
レオナルド様にいつか飽きられる日が来て、郊外に屋敷を与えられ、レオナルド様と過ごした日々を思いながら、あのときもっと甘えておけばよかったと後悔しないように、今のうちにいっぱい甘えておこうと思っている。だから多少激しく抱かれても苦にはならない。
レオナルド様と二人で過ごす時間を大切にしたい。
「そうそれならいいけど、何かあったらすぐボクに相談するんだよ」
いくらレオナルド様の幼なじみとはいえ、レオナルド様の愛人にすぎない僕が王太子殿下に気軽に声をかけられるわけがない。ましてや気安く相談など出来るはずがない。
僕は返事ができず、曖昧に笑ってごまかした。
「サフィールくんは今幸せ?」
王太子殿下の問いに、思わずレオナルド様の顔を見る。
レオナルド様に愛され、大切に扱われ、パーティーにも連れてきてもらえ、王太子殿下に紹介までしてもらえた。
「はい、とても」
王太子殿下に向き直り、満面の笑顔で答えた。僕は今最高に幸せだ。
「そう、よかったね」
王太子殿下がふわりとほほ笑む。
「ミハエルが案ずることはない、サフィールは私の側でこれからも幸せに暮らしていくのだから!」
レオナルド様が僕の腰に手を回し、僕を抱き寄せた。
レオナルド様の体温を感じ、心臓トクントクンと音を立てる。
「僕、レオナルド様のお側にいられるだけですごく幸せです」
レオナルド様を見上げ、にっこりと笑う。レオナルド様も笑顔を返してくれた。
「ミハエル王子、ここからが本題だ」
「うん? 何かな? レオナルドがボクを『ミハエル王子』と呼ぶときは大概ろくなことがないんだけど」
王太子殿下が顔を引きつらせ、一歩後退する。
レオナルドが僕の腰に回した手に力を込める。
「私はサフィールと結婚する、ミハエル王子には立会人になっていただきたい」
「「えっ!?」」
僕とミハエル王子の声がそろった。
「えっと、僕はレオナルド様の愛人では……?」
結婚って、あの結婚? 僕がレオナルド様の正妻になるの?
足がガクガクと震える。僕はそこまで高望みはしてない!
「愛人だと? なにを言っている、私が愛人にするためにサフィールを抱いたと思っていたのか?」
「……はい」
愛人でなければセフレだと思っていました。
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