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十二話
しおりを挟む◇◇◇◇◇サフィール視点◇◇◇◇◇
一人部屋は危険だと言われ、強制的にレオナルド様のお部屋に引っ越しさせられた。
とりあえずは一週間分の着替えと勉強道具を持って、レオナルド様のお部屋に連行された。
残りの荷物は後日、レオナルド様の使用人の方たちが届けてくれるらしい。
「どういうつもりだ……!」
レオナルド様にベッドに押し倒された。漆黒の瞳が僕を映す。その目には苛立ちとやるせなさが宿っているような気がした。
親同士の決めた結婚で、口約束とはいえ婚約者のいる身。そのことを隠しレオナルド様に抱かれたんだ。咎められても仕方ない。
「ごめんなさい、婚約者のいる身でレオナルド様と……」
「そこではない! いやそれも関係あるのだが……」
「えっと……?」
レオナルド様が何に怒っているのか分からず、首をかしげる。
「くっ、可愛い! 萌える! ではなくて、そなたは私を『愛している』と言った! それなのに何食わぬ顔でルーキーとか言う男と結婚し、抱かれるつもりでいたのか?」
やはり婚約者がいた事を咎められているようだ。
「私とのことは遊びだったのか? 『愛している』と言ったのはうそだったのか?」
レオナルド様が悲しげに眉を下げる。
「違います!」
レオナルド様のことを僕はずっと……。
「僕、レオナルド様のことが好きでした。入学式の日からずっとレオナルド様に憧れていました。レオナルド様の勇姿を遠くから眺めるだけで幸せでした」
目頭が熱い、視界が歪む。
「レオナルド様は公爵家のご令息、僕は貧乏男爵の息子、身分が違いすぎて声をかけられない」
ポロポロと涙が溢れる。
「でも先日、レオナルド様と偶然お話ができて、触れ合えて……嬉しくて。レオナルド様にとっては遊びでも……いつか好きでもない人と結婚して処女を奪われるなら、一生結婚できなくなってもいい、商人の愛人や、娼館に売られてもかまわない! 初めては好きな人に、レオナルド様に上げたいと思ったんです!!」
全部僕のわがままだ。
父様も、ルークも、ルークのご両親も裏切ってしまった。
僕とルークの家のごたごたに、レオナルド様を巻き込んでしまった。
「すみません、こんな僕が、レオナルド様に抱かれるなんて……身の程知らずでした……」
レオナルド様が僕の頬に手をあて、涙を拭ってくれた。
「レオナルド……様?」
「泣くな、そなたに泣かれると弱い」
「ごめんなさい、僕……」
「謝ることはない、そなたが私を思っていてくれたことが分かり嬉しい」
レオナルド様が僕の唇に自身の口を重ねる。
「私を見縊るな、愛してもいない者と情を交わしたりしない」
レオナルド様の口づけが深くなっていく。
「愛している、サフィール」
「レオナルド様」
「食わせ者の多い学園で、疲れ切っていた私の心を癒やしてくれたのがそなたの澄んだ眼差しだった」
レオナルド様がそんな風に僕を思っていてくれてくれたなんて……嬉しい! また涙がポロポロと溢れてきた。
「愛している、私以外のものに抱かれるな! 触れられるな! 話もするな! 私以外目に入れるな! そなたは私の物だ!!」
レオナルド様に角度を変え何度もキスされた。
一度抱いた人間を自分の所有物のように扱う人間がいると聞いたことがある。レオナルド様もそのたぐいなのかな?
自分が唾を付けた人間を、他の誰かが抱くのが許せない。
だから愛人になれ、レオナルド様はそうおっしゃっているのかな?
レオナルド様が僕の服を脱がしていく。
朝までいたしていた行為をまた、イチから始めることになった。
僕はレオナルド様に買われたんだ。セフレから愛人に昇格したと思っていいのかな?
いつかレオナルド様が僕に飽きて、僕の元を訪れなくなる日まで、僕はレオナルド様に抱かれ続ける。
レオナルド様が僕に飽きたら、僕は人里の離れた一軒家とかで、一人寂しくレオナルド様の訪れを待ち続けることになるんだろうな。
それでもいい、レオナルド様以外の誰かをこれからも知らずにすむなら。
「はい、レオナルド様」
レオナルド様、愛しています。
僕はレオナルド様との愛人契約を受け入れた。
◇◇◇◇◇
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