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二章
27話「年末、お家の大掃除」
しおりを挟む大掃除というのはまずは屋外から行う。
庭、ベランダ、大きな窓、水を使う場所などから掃除していく。
それが終わったら、屋内の掃除に取りかかる。
屋内の掃除は上からしていくものだ。
まずは天井を綺麗に磨きあげる。
ベッドや食器棚などの大きな家具も動かして、その下まで掃除していく。
カーテンやシーツなどの大きなものは、天気の良い日にまとめて洗濯しておく。
それからキッチンやトイレ、浴室、廊下、玄関などを掃除していく。
最後はいらないものの処分……それはこのあと行うとして、取り敢えず家の中の掃除は終わった。
「終わりました!」
顔が映るほどピカピカに磨き上げた床、一枚一枚丁寧に磨き上げた食器、カーテンやシーツからは石鹸の匂いがしている。
「完璧ですね!」
私が掃除をしている間、雷龍とケルベロスが何をしていたかと言うと……。
雷竜は地下室ですやすやと寝息をたて、ケルベロスは遊んでばかりいた。
雷竜はまだいい。寝ているだけなら邪魔にならないか。
問題はケルベロスだ。
奴は外でボール遊びをしていて洗ったばかりのシーツを汚したり、泥だらけの足で入ってきて磨いたばかりの床の上を歩いたり、取り替えたばかりのベッドカバーの上で寝転がりベッドカバーに毛玉を落としたり……掃除の邪魔ばかりをしていた。
何度ケルベロスの一族に果たし状を送ってやろうと思ったかわからない。
私がケルベロスの一族に喧嘩を売らなかったのには、理由がある。
「まだ粗大ごみの処分が残っています。
ケルベロスの一族には、これからたっぷりと働いてもらいましょう」
粗大ごみの処分が残っているので、仲間割れしている場合ではないのだ。
シフォンケーキとプディングを作り、ケルベロスの機嫌を取っておく。
ご主人様は「母さんが帰ってきたとき気持ちよく過ごせるように大掃除をしておいて」とおっしゃっていた。
賢いご主人様のこと、「大掃除」とは家の中をきれいにするという意味だけではないだろう。
リコ様にとって人使いがあらく約束を守らない王族と、腐った貴族と、金儲けに走る教会の連中は敵のはず!
そんな奴らがいる世界に帰ってきても、リコ様は本当の意味で気持ち良くお過ごしになることは出来ないだろう。
ご主人様がおっしゃられた「大掃除をしておけ」とは、そのような「邪な心を持った人間どもを成敗しておけ」という意味に違いない。
奴らはこの国の粗大ごみに等しい存在! 廃棄処分しても何ら問題はないだろう!
ご主人様がリコ様を連れて帰ってきた時、気持ちよくお過ごしになれるように、この国に巣くう獅子身中の虫どもを退治しておこう。
もちろんリコ様の事情を鑑みずに、リコ様の記憶を消し元の世界に戻した自称神も大掃除の対象だ。
しかし相手は腐っても神。
私とケルベロスと雷竜とガーゴイルの力を合わせても、自称神には容易には勝てないだろう。
なので搦め手を使おうと思う。
私は二通の手紙をしたためた。
「さてと、これからが大掃除の本番ですね」
王太子とその仲間たちよ、首を洗って待っているがよい!
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