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二章
13話「自称神様により引き裂かれた絆」
しおりを挟む結婚して四年が経過し、アビーは三歳の誕生日を迎えていた。
そろそろ第二子がほしいな。
次はあたしそっくりの女の子がいいな……なんてアビーが寝たあとコルトと話していたある日。
家族で団らんしているあたしたちの前に、突如神を名乗る変態が現れた。
「一生大切に扱うっていうから王族に聖女召喚を許可したのに。
こんな山奥のボロ小屋に捨て置くとはね。
かわいそうに、そこの男にむりやり手籠にされ、子供を産まされたんだね」
「ちょっと!
神様だかなんだか知らないけど、勝手なこと言わないでよ!
あたしはコルトの事もアビーのことも大好きなんだから!!
彼らはあたしのかけがえのない存在なの!
家族なの!
あたしは一生ここで……」
「大丈夫だよ、私が元の世界に戻してあげるからね。
ここでの忌まわしい記憶を消してね」
自称神様はあたしをコルトとアビーから引き離し、あたしを元いた世界に連れ去った。
「さぁ、忌まわしい記憶を消してあげよう」
神を名乗る男があたしの記憶を消そうとしたので、あたしは彼の腕に思いっきり噛み付いてやった。
そうしたら自称神様は煙のようにぱっと消えていなくなった。
神を名乗る男に連れて来られた場所は、あたしの実家の前だった。
高校の下校途中に異世界に召喚されて七年。
今さらどの面下げて実家に帰れというのか……。
しかし、身一つで連れて来られたので他に頼れる人もいない。
意を決して自宅のチャイムを鳴らす。
両親に怒鳴られてお説教コースかと思ったけど……七年もいないと怒るとかそういう段階を遥かに超えているらしい。
両親に「帰ってきてよかった!」「娘が生きてた!」と言われめちゃくちゃ泣かれた。
自称神様のおかげで、両親との感動の再会ができたのは有り難いと思ってる。
あたしの意思じゃないにしろ、パパ、ママにはとても心配をかけてしまったから。
パパもママもごめんね。
あたしのいたい場所はもうここじゃないんだ。
☆
さて両親と感動の再会を果たした一か月後、あたしは現実を突きつけられていた。
日本に帰って来たからには働かなくてはならない。
幸いあたしの戸籍や住民票はそのままだった。
あたしが失踪して七年、もう少し帰って来るのが遅かったら両親に死亡届けを出されるところだった。
高一のとき異世界に召喚されたから、高校は中退扱いになっていた。
働くにも高卒の資格は必要だ。
あたしは働きながら通信制の高校に通う道を選んだ。
平日は仕事、平日の夕方はレポートの作成、日曜日は学校。
その合間を縫って異世界に渡る方法を探した。
異世界人の召喚には人手やお金が必要だとロリコン王子が漏らしていた。
瘴気が浄化された今、もう一度異世界に召喚されるとは思えない。
ならこちらから異世界に渡るすべを探すしかない!
異世界よりこっちの世界の方が科学が進んでいる。
異世界人に出来て、あたしに出来ないことなんかないわ!
あたしは土曜日に図書館に通いそれっぽい文献を読み漁り、インターネットでそれらしい情報がないか献策してみた。
でも異世界に渡る方法は見つからなかった。
そんな方法が確立されてるなら、とっくに次元旅行が気軽に行われている。
もうコルトにもアビーにも会えないの?
二人に会えないとわかると胸が苦しくなった。
会いたいよ、コルト、アビー……。
あたしは図書館で突然失踪した人の話が書かれた本や、世界七不思議の本を読みながら涙を流すことが増えていた。
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