【完結】「聖女として召喚された女子高生、イケメン王子に散々利用されて捨てられる。傷心の彼女を拾ってくれたのは心優しい木こりでした」

まほりろ

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一章

8話「異世界へ」

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二年前、幸せに暮らしていた俺たちの前に突如「神」を名乗る人物が現れた。

神と名乗る男は、
「一生大切に扱うっていうから王族に聖女召喚を許可したのに。
 こんな山奥のボロ小屋に捨て置くとはね。
 かわいそうに、そこの男にむりやり手籠にされ、子供を産まされたんだね」

「ちょっと!
 神様だかなんだか知らないけど、勝手なこと言わないでよ!
 あたしはコルトの事もアビーのことも大好きなんだから!!
 彼らはあたしのかけがえのない存在なの!
 家族なの!
 あたしは一生ここで……」

「大丈夫だよ、私が元の世界に戻してあげるからね。
 ここでの忌まわしい記憶を消してね」

男はリコの言葉を遮り、リコの肩を掴むと……次の瞬間には姿を消していた。

「父さん、母さんにとって僕たちっていらない存在だったのかな……」

リコが消えたあと、当時三歳だったアビーは瞳に涙をいっぱいためてそう尋ねてきた。

「そんなわけあるか!
 母さんが最後に言った言葉を聞いてなかったのか?
 リコは俺たちのことが大好きだ、かけがえのない存在だ、家族だって言ってただろ!」






あれからアビーはとりつかれたように、時限を越える乗り物を作っている。

「そのためには適度な休息と美味しい食事も必要だぜ。
 チーズと干し肉を買って来たから上で食べよう」

「うん」

飛行機の番を雷竜に任せ、俺たちは階段を上がった。

「ねぇ、父さん。
 もしもだよ、母さんが記憶を失ってて、僕たちと再会しても何も思い出さなかったら……」

「そんなもしもの心配しても仕方ねぇよ。
 そんときはリコが俺たちのことを思い出すまで、向こうに住みついてやる」

「うん、そうだよね。
 絶対に母さんに思い出してもらおう!
 でも、父さん向こうの世界でできる仕事あるかな?」

「心配すんな。
 リコが言ってたんだ。
『あなたの木彫りの置物良く出来てるわね!日本でも高く売れそうだわ!』ってな。
 だから向こうの世界に行っても父さんはやっていける!」

「それって、母さんが父さんに気を使っていったお世辞なんじゃ……」

「ゴフッ……」

飲んでたスープが吹き出しそうになった。

まだ幼いのに痛いところをついてくる。






季節が二回巡った頃、アビーが時限を超える乗り物を完成させた。

リコがいなくなってから四年が経過していた。

アビーには「絶対にリコに俺たちの事を思い出させる」と言ったが、本当は不安が八割以上を占めている。

俺たちと再会してもリコが何も思い出さなかったら、リコが他の男と結婚していたら……嫌な考えが脳裏をよぎる。

それでも俺はリコを諦められない。

「行こう、父さん」

息子が俺の手を引っ張った。

アビーに不安を悟られるわけにはいかない。

「ああ行こう。
 帰ってくるときは三人だ」

時限を超える乗り物に乗り込むと、アビーがスイッチを入れる。

眩しいくらいの光に包まれ、機体がぐらぐらと揺れる。

「時空間を超えるのに想像以上に負荷がかかってる!
 このままだと乗り物がバラバラになっちゃうかも!」

アビーが青い顔で叫ぶ。

俺には機械の事は分からない。

だけどアビーの事だけは何があっても俺が守る!

そのとき、赤い服を着た老紳士が時空の歪の中から現れ道を指し示してくれた気がした。

気がつくと俺たちは別の世界にいた。


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