1 / 37
一章
1話「山奥に住む木こりの青年」
しおりを挟む
「女性の言ってることを男が理解するのは難しい。
我が子は親の欲目で天才に見えるもんだ」
これが親友のケンちゃんの口癖だ。
ケンちゃんの話では男はドワーフやホビットよりだが、女はフェアリーやエルフよりらしい。
俺は山奥に住んでいる木こり。
祖父の代からずっと木こりをしている。
趣味は実益を兼ねた木彫りの置物作り。
民芸品屋に売っている、鮭をくわえた熊をイメージしてもらえると分かりやすいと思う。
ふもとの村に降りるのは、一カ月に一度。
木彫りの置物を持っていって、パンや干し肉やチーズや野菜や果物と交換する。
ほとんど村の人たちとの交流はない。
村に住む猟師のケンちゃんだけは、幼い頃からよく声をかけてくれた。
それは今も変わらなくて、村に降りてきたたときケンちゃんは必ず俺に声をかけてくれる。
そして時々自宅に招いてお茶をごちそうしてくれる。
今日もケンちゃんの自宅に招かれ、ハーブティーをごちそうになっている。
「ケンちゃん、俺の息子天才じゃないかと思うんだ」
「ああ、オレも息子が三歳のときには何度もそう思ったぜ。
『オレの息子は天才だ!
教会の日曜学校を主席で卒業して、町長の推薦状を貰って王都にある学校に通って、末は王宮勤めのエリートの仲間入りする!』
……ってな。
だけど段々と現実に気付かされるんだよ。
息子が七歳になる頃にはそんな夢も消えたね」
「いや、うちの息子はまだ五歳……」
「おいネフ!
遊んでばかりいないで、ちったぁ勉強しろ!」
外から泥まみれで帰ってきたのはケンちゃんの息子のネフくん。ネフくんはわんぱく盛りの九歳だ。
「えーやだよ!
おれ勉強嫌いだもん!
それにおれは父ちゃんの跡をついで猟師になるんだ!
だから勉強なんて必要ねぇよ!」
「馬鹿野郎!
猟師だって読み書きや算術ができなきゃ足元見られて買い叩かれるんだよ!」
「父ちゃんの雷が落ちた!
逃げろ~~!」
ネフくんはキッチンにあったりんごをポケットにしまうと、出ていってしまった。
「現実はこんなもんだ。
息子が小さいうちだけだぜ、末は王宮の騎士か魔術師かなんて夢が見れるのは」
「うん、そうだね」
「母親がいればまた違ってたんだろうがな。
イアダ……!
なんで出ていっちまったんだよ!」
ケンちゃんの奥さんのイアダさんは、六年前に実家に帰ってしまった。
そのときケンちゃんから「女性の言ってることを男が理解するのは難しい。女性たちの言ってることは精霊や妖精の言葉だと思え」という話を、嫌というほど聞かされた。
「悪かった、お前んとこのかみさんも実家に帰っちまったんだよな」
「家の場合は帰ったというか……帰されたというか」
「皆まで言うな!
気持ちは分かる!
今日は飲もう!」
「いや、息子が家で待ってるから……」
結局落ち込んでいるケンちゃんを一人にはできず、夕方まで付き合うことになってしまった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
下記3作品を「第16回恋愛小説大賞」にエントリーしてます! 投票よろしくお願いします!!
「夫婦にはなれないけど、家族にはなれると思っていた」 【完結保証・2月1日から投稿再開します】https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/233694097 #アルファポリス
【完結】「彼女を愛することはない~王太子に婚約破棄された私の嫁ぎ先は呪われた王兄殿下が暮らす北の森でした」 【2月1日から後日談を投稿します。後日談はアルファポリス限定公開です】https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/681592804 #アルファポリス
「卒業パーティーで王子から婚約破棄された公爵令嬢、親友のトカゲを連れて旅に出る~私が国を出たあと井戸も湖も枯れたそうですが知りません」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/266624366 #アルファポリス
我が子は親の欲目で天才に見えるもんだ」
これが親友のケンちゃんの口癖だ。
ケンちゃんの話では男はドワーフやホビットよりだが、女はフェアリーやエルフよりらしい。
俺は山奥に住んでいる木こり。
祖父の代からずっと木こりをしている。
趣味は実益を兼ねた木彫りの置物作り。
民芸品屋に売っている、鮭をくわえた熊をイメージしてもらえると分かりやすいと思う。
ふもとの村に降りるのは、一カ月に一度。
木彫りの置物を持っていって、パンや干し肉やチーズや野菜や果物と交換する。
ほとんど村の人たちとの交流はない。
村に住む猟師のケンちゃんだけは、幼い頃からよく声をかけてくれた。
それは今も変わらなくて、村に降りてきたたときケンちゃんは必ず俺に声をかけてくれる。
そして時々自宅に招いてお茶をごちそうしてくれる。
今日もケンちゃんの自宅に招かれ、ハーブティーをごちそうになっている。
「ケンちゃん、俺の息子天才じゃないかと思うんだ」
「ああ、オレも息子が三歳のときには何度もそう思ったぜ。
『オレの息子は天才だ!
教会の日曜学校を主席で卒業して、町長の推薦状を貰って王都にある学校に通って、末は王宮勤めのエリートの仲間入りする!』
……ってな。
だけど段々と現実に気付かされるんだよ。
息子が七歳になる頃にはそんな夢も消えたね」
「いや、うちの息子はまだ五歳……」
「おいネフ!
遊んでばかりいないで、ちったぁ勉強しろ!」
外から泥まみれで帰ってきたのはケンちゃんの息子のネフくん。ネフくんはわんぱく盛りの九歳だ。
「えーやだよ!
おれ勉強嫌いだもん!
それにおれは父ちゃんの跡をついで猟師になるんだ!
だから勉強なんて必要ねぇよ!」
「馬鹿野郎!
猟師だって読み書きや算術ができなきゃ足元見られて買い叩かれるんだよ!」
「父ちゃんの雷が落ちた!
逃げろ~~!」
ネフくんはキッチンにあったりんごをポケットにしまうと、出ていってしまった。
「現実はこんなもんだ。
息子が小さいうちだけだぜ、末は王宮の騎士か魔術師かなんて夢が見れるのは」
「うん、そうだね」
「母親がいればまた違ってたんだろうがな。
イアダ……!
なんで出ていっちまったんだよ!」
ケンちゃんの奥さんのイアダさんは、六年前に実家に帰ってしまった。
そのときケンちゃんから「女性の言ってることを男が理解するのは難しい。女性たちの言ってることは精霊や妖精の言葉だと思え」という話を、嫌というほど聞かされた。
「悪かった、お前んとこのかみさんも実家に帰っちまったんだよな」
「家の場合は帰ったというか……帰されたというか」
「皆まで言うな!
気持ちは分かる!
今日は飲もう!」
「いや、息子が家で待ってるから……」
結局落ち込んでいるケンちゃんを一人にはできず、夕方まで付き合うことになってしまった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
下記3作品を「第16回恋愛小説大賞」にエントリーしてます! 投票よろしくお願いします!!
「夫婦にはなれないけど、家族にはなれると思っていた」 【完結保証・2月1日から投稿再開します】https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/233694097 #アルファポリス
【完結】「彼女を愛することはない~王太子に婚約破棄された私の嫁ぎ先は呪われた王兄殿下が暮らす北の森でした」 【2月1日から後日談を投稿します。後日談はアルファポリス限定公開です】https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/681592804 #アルファポリス
「卒業パーティーで王子から婚約破棄された公爵令嬢、親友のトカゲを連れて旅に出る~私が国を出たあと井戸も湖も枯れたそうですが知りません」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/266624366 #アルファポリス
21
お気に入りに追加
545
あなたにおすすめの小説
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。

逆行転生、断罪され婚約を破棄された落ちこぼれ令嬢は、神の子となり逆行転生したので今度は王太子殿下とは婚約解消して自由に生きたいと思います
みゅー
恋愛
アドリエンヌは魔法が使えず、それを知ったシャウラに魔法学園の卒業式の日に断罪されることになる。しかも、シャウラに嫌がらせをされたと濡れ衣を着せられてしまう。
当然王太子殿下との婚約は破棄となったが気づくと時間を遡り、絶大な力を手に入れていた。
今度こそ人生を楽しむため、自分にまるで興味を持っていない王太子殿下との婚約を穏便に解消し、自由に幸せに生きると決めたアドリエンヌ。
それなのに国の秘密に関わることになり、王太子殿下には監視という名目で付きまとわれるようになる。
だが、そんな日常の中でアドリエンヌは信頼できる仲間たちと国を救うことになる。
そして、その中で王太子殿下との信頼関係を気づいて行き……

【完結】貧乏男爵家のガリ勉令嬢が幸せをつかむまでー平凡顔ですが勉強だけは負けませんー
華抹茶
恋愛
家は貧乏な男爵家の長女、ベティーナ・アルタマンは可愛い弟の学費を捻出するために良いところへ就職しなければならない。そのためには学院をいい成績で卒業することが必須なため、がむしゃらに勉強へ打ち込んできた。
学院始まって最初の試験で1位を取ったことで、入学試験1位、今回の試験で2位へ落ちたコンラート・ブランディスと関わるようになる。容姿端麗、頭脳明晰、家は上級貴族の侯爵家。ご令嬢がこぞって結婚したい大人気のモテ男。そんな人からライバル宣言されてしまって――
ライバルから恋心を抱いていく2人のお話です。12話で完結。(12月31日に完結します)
※以前投稿した、長文短編を加筆修正し分割した物になります。
※R5.2月 コンラート視点の話を追加しました。(全5話)

継母の品格 〜 行き遅れ令嬢は、辺境伯と愛娘に溺愛される 〜
出口もぐら
恋愛
【短編】巷で流行りの婚約破棄。
令嬢リリーも例外ではなかった。家柄、剣と共に生きる彼女は「女性らしさ」に欠けるという理由から、婚約破棄を突き付けられる。
彼女の手は研鑽の証でもある、肉刺や擦り傷がある。それを隠すため、いつもレースの手袋をしている。別にそれを恥じたこともなければ、婚約破棄を悲しむほど脆弱ではない。
「行き遅れた令嬢」こればかりはどうしようもない、と諦めていた。
しかし、そこへ辺境伯から婚約の申し出が――。その辺境伯には娘がいた。
「分かりましたわ!これは契約結婚!この小さなお姫様を私にお守りするようにと仰せですのね」
少しばかり天然、快活令嬢の継母ライフ。
▼連載版、準備中。
■この作品は「小説家になろう」にも投稿しています。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」完結
まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。
コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。
「アリシア・フィルタ貴様との婚約を破棄する!」
イエーガー公爵家の令息レイモンド様が言い放った。レイモンド様の腕には男爵家の令嬢ミランダ様がいた。ミランダ様はピンクのふわふわした髪に赤い大きな瞳、小柄な体躯で庇護欲をそそる美少女。
対する私は銀色の髪に紫の瞳、表情が表に出にくく能面姫と呼ばれています。
レイモンド様がミランダ様に惹かれても仕方ありませんね……ですが。
「貴様は俺が心優しく美しいミランダに好意を抱いたことに嫉妬し、ミランダの教科書を破いたり、階段から突き落とすなどの狼藉を……」
「あの、ちょっとよろしいですか?」
「なんだ!」
レイモンド様が眉間にしわを寄せ私を睨む。
「婚約破棄ですか? 婚約破棄なら昨日成立しましたが、ご存知ありませんでしたか?」
私の言葉にレイモンド様とミランダ様は顔を見合わせ絶句した。
全31話、約43,000文字、完結済み。
他サイトにもアップしています。
小説家になろう、日間ランキング異世界恋愛2位!総合2位!
pixivウィークリーランキング2位に入った作品です。
アルファポリス、恋愛2位、総合2位、HOTランキング2位に入った作品です。
2021/10/23アルファポリス完結ランキング4位に入ってました。ありがとうございます。
「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる