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14話「届かない叫び」エマ(妹)視点・ざまぁ回
しおりを挟む――エマ(妹)視点――
「エマ殿、罪人を城に連行するまで入ってきてはいけないと言っただろ」
どうして私がそこにいるの? 誰かが呪いや魔法の力で私の姿に化けているの?
そういえば昨夜気を失う前、アダリズお姉様が「私の人生とあなたの人生を交換しましょう」と言っていた気がするわ。
もしかして私呪いでアダリズお姉様の姿に変えられたのではなくて、心と体がアダリズお姉様と入れ替わってしまったのかしら? きっとそうだわ、そう考えると全てのつじつまが合うわ。
だから私は今アダリズお姉様の姿をしているのね、それじゃあ今私の体に入っているのはアダリズお姉様??
「王太子殿下のおっしゃるとおりよ、優しいあなたに物騒な捕物なんて見せたくなかったのに」
「わしはエマの心が傷つかないか心配だよ」
お父様とお母様が心配そうな顔で、私の体に入ったアダリズお姉様に近寄り手を握った。
「ごめんなさい王太子殿下、お父様、お母様。アダリズお姉様にお別れのごあいさつがしたかったのです」
私の体に入ったアダリズお姉様が青い目を細めニコリと笑う。
「んーー! んんーー!! ンんんーー!(返して! それは私の体よ! 私のものよ!!)」
私の体に入ったアダリズお姉様に掴みかかり殴りつけたかったが、兵士に拘束されている状態ではそれも叶わない。
「アダリズお姉様暴れないで、拘束がきつくなりましてよ」
私の体に入ったアダリズお姉様が、くすりと笑う。腹が立つ! 私の体を乗っ取って、余裕の表情を浮かべているアダリズお姉様に無性に腹が立った!
私の体に入ったアダリズお姉様が私に近づいてきて「さようなら、アダリズお姉様、私あなたにいただいた物を大切に使いますね、あなたも私が差し上げた物を大切に使ってくださいね。私アダリズお姉様の分も幸せになりますから」そう耳元でささやいた。
「ンんーー!! んンんんーー!! ンんんーー!!(返しなさいよ! それは私の体よ! 私の人生よ!)」
私の体に入ったアダリズお姉様に悪態を吐きたいが、猿轡をされているせいでうまく言葉にならない。
「これはあなたが望んだことよ、恨まないでね」
私の体に入ったアダリズお姉様が口角を上げ、美しくほほ笑んだ。
『ねえエマ、本当に私のことを自慢の姉だと思ってる? 本当に私のことが羨ましい? 私がエマと私の人生を交換したいと願ったら、あなた了承してくれる?』
『まあ交換してくださるの? 私昔からお姉様が羨ましかったのよ。だってお姉様は全てを持っているんですもの、公爵家の長女の地位も、王太子殿下の婚約者の地位も、学園の首席間違いなしと言われる頭脳も、私ずっとお姉様になりたかったのよ!』
『そう、それはよかったわ……私もずっとあなたになりたかったのよエマ、美しい容姿を持ちお父様からもお母様からも王太子殿下からも愛され、使用人から大切にされ、学園では先生からも生徒からも可愛がられているあなたに……ずっと憧れていたの。だから……私の人生とあなたの人生を交換しましょう』
昨夜アダリズお姉様の部屋でした会話が、頭の中で何度も再生される。
違う……! こんなこと望んでない!
まさか本当に人生を交換出来るなんて思わなかった!
アダリズお姉様の人生なんてちっとも羨ましくない! 「羨ましいわ」と言いながら心の中でアダリズお姉様のことをあざ笑っていた。
嫌……! 返して……! それは私の人生よ! 私の体よっっ!!
返してーーーー!!
衛兵に連行され屋敷から連れ出される私を、私の体に入ったアダリズお姉様がにこやかな顔で見送っていた。
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