8 / 8
8話「あなたと共に」最終話・ざまぁ回
しおりを挟むダンスが始まると元婚約者のコアト様が話しかけてきた。
コアト様は黒髪に茶色い瞳、中肉中背、お顔は不細工でも美男子でもなく普通。
「君の読んだ答辞は素晴らしかったよ。
それにすごく綺麗だ。
カランがこんなに美人だと思わなかったよ。
良かったら俺と一曲踊ってくれないか?」
「コアト様と私の婚約は既に解消されております。
それにコアト様には新しい婚約者のウナがいるでしょう?」
「ウナの奴パーティーが始まってすぐに母親と一緒に『お腹が痛い』と言ってトイレに走って行ったよ。
ほんと恥ずかしい」
「婚約者が腹痛に襲われていいのに、コアト様はここでパーティーを楽しんでいるんですか?」
私はコアト様に冷たい視線を送る。
「子爵家の跡取りじゃなくなったお前を俺が同情で誘ってやってんだ。素直に喜べよ!
どうせパートナーもいなくて一人で寂しく過ごしてんだろ?」
「すみませんカラン様、お待たせいたしました」
「アインスさん」
「ドリンクを取りに行っている間に、変な虫に絡まれていたようですね」
アインスさんがコアト様をギロリと睨む。
アインスさんに睨まれたコアト様は縮み上がっていた。
「本日のカラン様のパートナーは僕です。
元婚約者殿の出る幕はございません。お引き取りください」
アインスさんは丁寧だが強い口調でそう言った。
「なんだと!」
「それから子爵家の跡継ぎの件ですが、ウナ様をカラン様の養女にした書類に偽造の疑いが出てきました。
この後ウナ様とウナ様のお義母様とお父様は騎士団に事情を聞かれることになるでしょう。
なにせ事は子爵家の乗っ取りですからね。
まさかとは思いますが、コアト様もこの件に関与しておられませんよね?」
「知らない! 俺は何も知らない! 聞いてない!」
コアト様は顔を真っ青にされ逃げるようにその場を去っていった。
「アインス様助けてくださりありがとうございます」
「いえカラン様のパートナーとして当然のことをしたまでです」
「それから先程のお話は本当ですか?」
「子爵家の乗っ取りの件ですか?
もちろんです。魔女様が本腰を入れて騎士団を操作……いえ騎士団に捜査させています。
時期にこの件に関与した人間は捕まるでしょう」
「何から何までありがとうございます。
なんとお礼を言ったらよいのか」
「それはこちらのセリフです。
傷つき迷子になっていた僕にカラン様はゆで卵を分けてくださった。
ご自身もお腹いっぱい食べているわけではないのに……僕はそれがとても嬉しかったのです」
「私は人として当然のことをしたまでです」
「そういう奥ゆかしいところも貴方様の魅力です」
アインス様に褒められて照れてしまう。
「どうしてもお礼をとおっしゃるなら、僕と一曲踊っていただけませんか?
僕に貴方様とファーストダンスを踊る名誉をお与えください」
私は差し出されたアインスさんの手を掴みコクリと頷く。
「はい、私で良ければ喜んで」
――終わり――
最後まで読んで下さりありがとうございます。
【後書き】
このあとウナと継母とコアトは、養子縁組の書類を偽造し子爵家の乗っ取りを図った疑いで逮捕されました。
カランはクーン子爵家を継ぎました。
アインスはクーン子爵家の執事になり、一人ぼっちになってしまったカランを支えています。
アインスとカランの関係が友人から恋人に変わるには、もう少し時間がかかりそうです。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
同時期に投稿した下記の作品もよろしくお願いします!
「魔女のレンタルショップハイル~助けた蛇は魔女様の眷属でした。えっ? 私をいじめていた家族に復讐してくれるんですか?」異世界恋愛もの
【BL】「ラピスラズリ荘の同居人~寮の管理人さんに恋しちゃいました」ボーイズロマンス
「レンタル彼女を頼んだら、待ち合わせ場所に義妹が来たんだが!?」現代ラブコメ
「今日から私は好きに生きます! 殿下、美しくなった私を見て婚約破棄したことを後悔しても遅いですよ!」
「幼馴染を敬愛する婚約者様、そんなに幼馴染を優先したいならお好きにどうぞ。ただし私との婚約を解消してからにして下さいね」
「父に殺されタイムリープしたので『お父様は悪くないの!お父様は愛する人と一緒になりたくてお母様の食事に毒をもっただけなの!』と叫んでみた」
→タイトル変更「父に毒殺され母の葬儀までタイムリープしたので、親戚の集まる前で父にやり返してやった」
「侯爵令息は婚約破棄されてもアホのままでした」
全作品最終話まで予約投稿済みです。よろしくお願いします。
14
お気に入りに追加
349
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(23件)
あなたにおすすめの小説
美人の偽聖女に真実の愛を見た王太子は、超デブス聖女と婚約破棄、今さら戻ってこいと言えずに国は滅ぶ
青の雀
恋愛
メープル国には二人の聖女候補がいるが、一人は超デブスな醜女、もう一人は見た目だけの超絶美人
世界旅行を続けていく中で、痩せて見違えるほどの美女に変身します。
デブスは本当の聖女で、美人は偽聖女
小国は栄え、大国は滅びる。
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
呪いを受けて醜くなっても、婚約者は変わらず愛してくれました
しろねこ。
恋愛
婚約者が倒れた。
そんな連絡を受け、ティタンは急いで彼女の元へと向かう。
そこで見たのはあれほどまでに美しかった彼女の変わり果てた姿だ。
全身包帯で覆われ、顔も見えない。
所々見える皮膚は赤や黒といった色をしている。
「なぜこのようなことに…」
愛する人のこのような姿にティタンはただただ悲しむばかりだ。
同名キャラで複数の話を書いています。
作品により立場や地位、性格が多少変わっていますので、アナザーワールド的に読んで頂ければありがたいです。
この作品は少し古く、設定がまだ凝り固まって無い頃のものです。
皆ちょっと性格違いますが、これもこれでいいかなと載せてみます。
短めの話なのですが、重めな愛です。
お楽しみいただければと思います。
小説家になろうさん、カクヨムさんでもアップしてます!
会社の後輩が諦めてくれません
碧井夢夏
恋愛
満員電車で助けた就活生が会社まで追いかけてきた。
彼女、赤堀結は恩返しをするために入社した鶴だと言った。
亀じゃなくて良かったな・・
と思ったのは、松味食品の営業部エース、茶谷吾郎。
結は吾郎が何度振っても諦めない。
むしろ、変に条件を出してくる。
誰に対しても失礼な男と、彼のことが大好きな彼女のラブコメディ。
竜神に愛された令嬢は華麗に微笑む。〜嫌われ令嬢? いいえ、嫌われているのはお父さまのほうでしてよ。〜
石河 翠
恋愛
侯爵令嬢のジェニファーは、ある日父親から侯爵家当主代理として罪を償えと脅される。
それというのも、竜神からの預かりものである宝石に手をつけてしまったからだというのだ。
ジェニファーは、彼女の出産の際に母親が命を落としたことで、実の父親からひどく憎まれていた。
執事のロデリックを含め、家人勢揃いで出かけることに。
やがて彼女は別れの言葉を告げるとためらいなく竜穴に身を投げるが、実は彼女にはある秘密があって……。
虐げられたか弱い令嬢と思いきや、メンタル最強のヒロインと、彼女のためなら人間の真似事もやぶさかではないヒロインに激甘なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:4950419)をお借りしています。
ケダモノ王子との婚約を強制された令嬢の身代わりにされましたが、彼に溺愛されて私は幸せです。
ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
「ミーア=キャッツレイ。そなたを我が息子、シルヴィニアス王子の婚約者とする!」
王城で開かれたパーティに参加していたミーアは、国王によって婚約を一方的に決められてしまう。
その婚約者は神獣の血を引く者、シルヴィニアス。
彼は第二王子にもかかわらず、次期国王となる運命にあった。
一夜にして王妃候補となったミーアは、他の令嬢たちから羨望の眼差しを向けられる。
しかし当のミーアは、王太子との婚約を拒んでしまう。なぜならば、彼女にはすでに別の婚約者がいたのだ。
それでも国王はミーアの恋を許さず、婚約を破棄してしまう。
娘を嫁に出したくない侯爵。
幼馴染に想いを寄せる令嬢。
親に捨てられ、救われた少女。
家族の愛に飢えた、呪われた王子。
そして玉座を狙う者たち……。
それぞれの思いや企みが交錯する中で、神獣の力を持つ王子と身代わりの少女は真実の愛を見つけることができるのか――!?
表紙イラスト/イトノコ(@misokooekaki)様より
婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。
国樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。
声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。
愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。
古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。
よくある感じのざまぁ物語です。
ふんわり設定。ゆるーくお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
もう終わってしまった🥹❤️
アダルギーサの破天荒なお仕置き
もっともっと見たかった(笑)✨
蘭丸様
感想ありがとうございます!(*´∀`*)
最終話までお付き合い下さりありがとうございます!
エブリスタの短編コンテスト用に書いたので、文字数に制限があったのですよ。💦
太真様
感想ありがとうございます!(^^)
最終話まで読んで頂けて嬉しいです!(*´∀`*)
楽しく読んで頂けて嬉しいです!!😄✨💖
fox-b様
感想ありがとうございます!(^^)
最終話まで読んで頂けて嬉しいです!(*´∀`*)
>「騎士団を操作」って…魔女様、何をやったの…?
書類の偽造にも気づかないポンコツ騎士団を一から鍛え直してます。トラウマ級のスパルタ教育です。(^_^;)