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第一章・愚かな王子と不死鳥の葉
第1章5話「鉱山に送られたハイネ公爵とクラーラは?」ざまぁ
しおりを挟む――クラーラ視点――
「こんな粗末な服を着たのは生まれて初めてだわ!」
絹しかまとったことのないわたくしが、まさか布の服をまとう日がくるなんて……!
しかも汚いし、臭いし、痒いし、もしかしてノミがいるのかしら??
食事はパンと水みたいなスープだけだし、朝は日が昇る前から働いて、夜は日が沈んでもずっと働かされるし、ベッドは硬いし、狭いし……。
「こんな生活もう嫌~~!!
なんとかしてお父様!」
「もとはといえばクラーラ、お前のせいではないか!
お前がアルド殿下に『不死鳥の葉など誰でも取ってこれる』など嘘をついて、王太子妃になろうと画策したから、こんなことになっているのだ!」
「だって脳筋ゴリラのゼーマン辺境伯令嬢が、アルド様の婚約者になるなんて許せなかったんですもの!」
儚げな美少年のアルド様に、わたくしは一目で恋に落ちた。
彼の婚約者が、わたくしが足元にも及ばないほど聡明で美麗な完璧な淑女なら、わたくしも諦めもつきました。
アルド様のお相手が、お茶会やダンスやピアノより、剣術や格闘が好きな野蛮人だなんて……納得できなかった。
「お前がゼーマン辺境伯親子を怒らせたから、魔の森のモンスターが暴れ王国は滅びたのだ!」
「そんなこと言われても……」
まさかゼーマン辺境伯親子のおかげで、ニクラス王国の平和が保たれていたなんて。
「せめてその自慢の美貌でフリーデル帝国の皇帝を落とせればよかったのだがな。
まさか皇帝の逆鱗に触れるとはな」
フリーデル帝国の皇帝エカード様は、銀色の長く美しい髪にアメジストの瞳を持つ、きめ細やかな肌の美丈夫。
鍛えているのか体つきはたくましく、アルド様とは違った魅力がありました。
「だって、まさかエカード様とゼーマン辺境伯令嬢が婚約しているなんて知らなかったんですもの」
そうとは知らずわたくしは「ハイネ公爵領をフリーデル帝国の傘下に加えてくださるなら、皇帝陛下にわたくしの操を差し上げますわ」と色仕掛で迫ってしまった。
その上彼の前で、ゼーマン辺境伯令嬢の悪口を言ってしまった。
そうして皇帝陛下の逆鱗に触れた私たちは鉱山に送られた。
「お前の得意な色仕掛けで、役人にこびを売ってパンを多めに貰えるようにしてくれ」
「お父様は、パンの為に娘のわたくしに身を売れと言いますの?
あんまりですわ!」
「お前は口ばかりでまともに仕事もできないではないか!
それぐらいして役に立て!」
「嫌よ。
あんな筋肉だるまのブサイク、誰が相手にするもんですか!」
役人や監視役がイケメンの細マッチョなら色仕掛けしてもいいと思ったことは、お父様には内緒だ。
「贅沢言ってる場合か!」
「わたくしにも好みというものがありますわ!」
「そこ、うるさいぞ!」
お父様とケンカをしていたら役人と監視役に睨まれてしまった。
ああ、どこかにいる王子様!
わたくしを助けに来て!
だがわたくしがいくら願っても、誰も助けに来なかった。
程なくして、わたくしはパンを得るために体を売ることになる。
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