完結「不治の病にかかった婚約者の為に、危険を犯して不死鳥の葉を取ってきたら、婚約者が浮気してました。彼の病が再発したそうですが知りません」

まほりろ

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第一章・愚かな王子と不死鳥の葉

第1章1話「さようなら王太子殿下」

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「リシェル・ゼーマン辺境伯令嬢!
 貴様は婚約者である僕の看病をそっちのけで、新米の兵士でも一週間あれば余裕で取れる不死鳥の葉を、一か月もかけてのろのろと取ってきたそうだな!
 しかもキマイラやグリフォンやケルベロスの出る山を五つ越え、
 バジリスクの住む死の荒野を越え、
 毒蠍どくさそりの出現する砂漠を越え、
 アンデッドモンスターが闊歩かっぽする毒の沼地を越え、
 不死鳥の山を半日ほどロッククライミングして山頂にいる不死鳥とバトルして、
 艱難辛苦かんなんしんくの末に、不死鳥が守っていた不死鳥の木から不死鳥の葉を手に入れて来たなどと嘘をついているそうじゃないか!
 そんな薄情で嘘つきな女は僕の婚約者に相応しくない!
 よって今日限りで貴様との婚約を破棄する!
 僕は、病に冒された僕の手をずっと握っていてくれた優しいクラーラと結婚する!」

王太子殿下が赤い目を吊り上げて叫んだ。

一か月かけて危険な旅をして艱難辛苦かんなんしんくの果てに取ってきた不死鳥の葉を、新米の兵士でも一週間あれば取ってこれる……と言われるとは思ってもみませんでした。

王太子の病が治ったと聞いたので父と共に城に来てみたら、王太子の部屋ではなく応接室に通された。

応接室のソファーには王太子が座っていて、その隣にはクラーラ・ハイネ公爵令嬢がいて、ハイネ公爵令嬢は殿下の腕にベッタリとくっついていた。

殿下に向かいの席に座るように言われて、席に着くなり聞かされた言葉がこれだ。

王太子の病を治す薬を取ってきた者へ、この仕打ちはない。

私と目が合うと、クラーラ嬢は「勝った」と言わんばかりに口角を上げた。

真紅の髪にルビー色のアルド殿下と、金色のサラサラした髪にサファイアブルーの瞳のハイネ公爵令嬢。

美男美女、どちらも吹けば飛びそうな華奢な体をしていて、とてもお似合いだ。

殿下は私の黒い髪と瞳を見て「カラスのようで不気味だ」とよく貶していた。

さらに殿下は、私の剣術の稽古けいこをしているのを見ては「脳筋」とか「山猿」と言ってよくけなしていた。

「婚約破棄、承知いたしました」

殿下と私は同い年。

いくら嫌な奴でも十八歳の若さで亡くなるのは気の毒だと思い、不死鳥の葉を取ってきてやったのが間違いだった。

こんなアホとはさっさと別れて、故郷に帰ろう。

「お父様、帰りましょう」

私の隣で王太子を睨みつけている父に声をかけた。

私は席を立ち淑女の礼をして、さくさく応接室をあとにした。



☆☆☆☆☆



「命がけで不死鳥の葉を手に入れて来たというのに、王太子のあの態度はなんだ!」

「お父様、ここは王城ですよ。
 もう少し小さな声でお話しください」

「聞かれても構うものか!
 この城にわしより強い者などおらんのだからな!」

「お父様のお怒りはごもっともです。
 ですが、怒ってもお腹が空くだけです。
 陛下から婚約破棄の慰謝料と、不死鳥の葉を取ってきた報奨金を貰って、さっさと帰りましょう」

国王は親バカだ。

おそらく陛下は死の淵から蘇った王太子に「クラーラと結婚したい!」と言われ、だめだと言えなかったのだろう。

その際、ハイネ公爵令嬢のついた嘘も否定はしなかっただろう。

元々王太子とハイネ公爵令嬢は思い合っていた。

国の将来を考えた王妃様が、私を王太子の婚約者にした。

その王妃様も二年前に事故で亡くなった。

もはや王太子と私の婚約を継続させる価値に気づいている者は、この城にはいない。




☆☆☆☆☆




「すまん!
 息子に頼まれたら断れなくて!!
 リシェル嬢には悪いが、息子との婚約を破棄してくれ!!」

国王の執務室に行ったら、陛下に頭を下げられた。

「それはつまり陛下は、
 『不死鳥の葉など新米の兵士でも一週間もあれば取ってこれる』
 というハイネ公爵令嬢の言葉を肯定するとおっしゃるのですか?」

私が問いかけると、陛下は視線を逸らした。

「それはその……息子とクラーラ嬢は思い合ってるし、息子の想い人を嘘つきにはしたくないし……」

「そのために私に辛酸をなめろと?」

私が睨むと、陛下は青白い顔をさらに青くした。

「すまん!
 息子とクラーラ嬢の恋愛を美談にしたいのだ!」

「だから娘と王太子殿下の婚約も解消ではなく、破棄すると?
 わしや娘やゼーマン辺境伯家が嘘つき呼ばわりされて蔑まれても構わないと陛下はおっしゃるのですか?」

父が陛下に問いかける。

「すまない!
 その償いはする!」

陛下は再び頭を下げた。

「陛下、この貸しは高く付きますよ」

「おお、ゼーマン辺境伯!
 こちらの条件を呑んでくれるのか!?」

陛下が満面の笑みを浮かべ頭を上げる。

このおっさん、ちっとも悪いと思ってないな。

「陛下がこちらの条件を全て呑んでくださるのなら、この件は不問に付しましょう」

父が悪い顔をしている。

「うむ、そなたらは息子の命の恩人だ。
 どんな条件でも呑もう!」

だが陛下は父の表情の変化に気づかない。

「第一にこの度の婚約破棄の慰謝料として、王太子殿下が王妃様より譲り受けた土地をいただきたい」

「王太子の所有している土地……?
 しかしそれは……」

殿下が持っている土地は、辺境伯領と帝国の間にある土地だ。

あの土地が辺境伯領になると、帝国と辺境伯領を隔てる物がなくなる。

よほどの阿呆でない限り、あの土地は手放さないだろう。

「そういえば、不死鳥から不死鳥の葉の処方箋を貰っていたのですが……」 

父がジュストコールの内ポケットに手を入れる。

「王太子の所有している土地はそなたに譲る!
 だからその処方箋をくれ!」

父が懐から取り出した紙を陛下は奪い取った。

処方箋……そんなもの不死鳥から貰っていたかしら?

「条件はあと二つ。
 今後百年、ゼーマン辺境伯家の者は一切登城しなくても許される。
 今後百年、ゼーマン辺境伯家の者はいかなる王命も断ることできる」

「いやいや、流石にそれは……」

陛下が父の出した条件に難色を示す。

やはりこの条件だけは呑んでもらえないかしら?

「あっ、そういえば不死鳥から、不死鳥の葉と一緒にこれも飲ませろと預かった薬が……」

父がジュストコールの外ポケットから小瓶を取り出した。

「それを早く言え!
 条件を呑む!
 だからその薬を譲ってくれ!」

「薬は、契約書に陛下が署名したあとにお渡しします」

陛下は父が差し出した書類をよく読まず、書類にサインをした。

「一刻も早く息子にこの薬を飲ませなくては……!」

「殿下に『お大事に』とお伝えください」

父の言葉を聞かず、陛下は部屋を飛び出して行った。

「よくあんなのが国王で、今まで国が滅びませんでしたわね」

人払いがされているので、こんな話も堂々とできてしまう。

「元々頼りない国王を、王妃様が支えていた事で成り立っていた国だからな」

父は書類にサイン漏れがないか確認し、契約書をジュストコールの内側の胸ポケットにしまった。

「ところで父上、先ほど陛下に渡した小瓶の中身は?」

「胃薬だよ。
 不死鳥に『あってもなくても構わないが、気になるなら不死鳥の葉と一緒に飲ませると良い』と言われて渡された物だ」

「そんなことだと思ってました」

「さあ帰ろう。
 こんなところに長居は不要だ」

父が席を立つのに合わせて、私も席を立つ。

「もう、こんな城に二度と来なくて良いと思うと清々するよ」

父が吐き捨てるように言った。

私はこの三年間、王太子妃教育で通った場所を感慨深く眺めた。




☆☆☆☆☆




王太子との婚約は私が十五歳の時に結ばれた。

王太子は幼馴染で同い年のクラーラ・ハイネ公爵令嬢が好きだったらしい。

「お前が辺境伯に頼んで無理やり僕の婚約者に収まった悪女だな!
 お前さえ僕に一目惚れしなければ、僕は幼馴染で初恋相手のクラーラ・ハイネ公爵令嬢と婚約できたのに!
 僕は見た目が良いから、お前が一目惚れするのはわかる!
 だが遠くから眺めるだけに、留めておくべきだったな!
 他人の恋路を邪魔するとはとんだ悪党だ!
 この悪魔め!
 お前なんか大嫌いだ!」

王太子との顔合わせの時、彼に初めて言われた言葉はこれだった。

この婚約は国の行く末を案じた王妃様に頼まれて、仕方なく結んだ婚約だ。

王太子は事情を理解しておらず、一方的にこちらを悪者と決めつけて罵ってきた。

こっちだって望んで王太子と婚約したわけではないのに、王子に恨まれたのではやってられない。

王妃様がハイネ公爵令嬢を王太子の婚約者にしなかったのは、あの家の者は見た目が綺麗で口が達者なだけで、有事の際に役に立たないことを王妃様は知っていたからだ。

そういうことは王太子にもしっかりと伝えておいてほしい。

それからもなにかにつけては王太子に嫌味を言われ、ハイネ公爵令嬢とその取り巻きに陰口を叩かれ、王太子とハイネ公爵令嬢とのイチャイチャを見せつけられた。

そして二年前、王妃様が事故で儚くなられた。

王妃様は亡くなる前に「息子のことを頼みます」と言い残した。

王妃様に頼まれ、仕方なく今まで王太子を支えてきた。



☆☆☆☆☆



一か月前。

王太子が不治の病にかかり、余命一年と宣告された。

王太子には一ミリも良い感情はなかったし、奴との思い出に何一つ楽しい物はなかった。

しかし王妃様に死ぬ間際に『息子の事をお願いします』と頼まれていたので、仕方なくどんな病でもたちどころに治す不死鳥の葉を取りに行くことにした。

一人で取りに行っても良かったが、私の身を案じた父が付いてきてくれた。

キマイラやグリフォンやケルベロスの出る山を五つ越え、バジリスクの住む死の荒野を越え、毒蠍どくさそりの出現する砂漠を越え、アンデットモンスターが闊歩かっぽする毒の沼地を越えた先に不死鳥の山はあった。

不死鳥の山の頂は、雲の上に突き出ていて下からは見えない。

父と二人で半日ほどロッククライミングして、山頂にたどり着いた。

山頂には大人の背丈の何倍も大きな赤い鳥がいた。

「わたしに勝ったら不死鳥の葉を一枚やろう」

と不死鳥にバトルを申し込まれ、父と私の中に流れる勇者の血がたぎった。

途中から王太子のことや不死鳥の葉のことなどどうでも良くなって、楽しくバトルした。

「そなたたちとのバトルは楽しかった。
 また、来るが良い」

帰るときには不死鳥とお友達になっていた。

そして不死鳥から不死鳥の葉と胃薬と処方箋を頂いた。

それからまたロッククライミングで山を降り、来た道を辿って帰った。

城に帰ると、国王が泣きながら出迎えてくれた。

もともと親バカだった陛下は、王妃様を亡くされてからその兆候が強くなった。

王太子の部屋に行くと、ベッドの横にハイネ公爵令嬢が座っていて王太子の手を握っていた。

いくら幼馴染とはいえ、婚約者以外の女が王太子の枕元で王太子の手を握り、つきっきりで看病するっていかがなものなのかしら?  
と私も父もハイネ公爵令嬢の行動に眉を顰めた。

不死鳥の葉をすり潰した物を飲んで回復した王太子にハイネ公爵令嬢は、
「あんなもの公爵家の者なら新米の兵士でも一週間もあれば取ってこれますわ。
 それをご自身で取りに行って、しかものろのろと一ヶ月もかけて戻ってくるなんて、ゼーマン辺境伯令嬢はどこで油を売っていたのかしら?
 ゼーマン辺境伯とゼーマン辺境伯令嬢は、『モンスターの出る山を五つも越え、死の荒野や砂漠や毒の沼地を越えて、高い山の上にある不死鳥の葉を取ってきた』などと陛下に報告したそうですが、そのようなところにたった二人で行って、わずか一か月で生還できるはずがありませんわ。
 きっとお二人は報奨金欲しさに手柄を水増ししたのでしょうね。
 そこまでして王家に恩を売りたいのかしら? 恥ずかしい。
 わたくしなら不死鳥の葉など兵士に取りに行かせて、婚約者の側でつきっきりで看病しますわ。
 きっとゼーマン辺境伯令嬢は殿下の看病より家の名誉が大事だったのですね。薄情だわ。
 あのような方が婚約者で殿下は可哀相」
と吹き込んだらしい。

王太子はハイネ公爵令嬢が好きだったのもあり。王太子は病の間ずっと側にいて看病をしていたハイネ公爵令嬢の話をすっかり信じてしまった。

無論陛下は不死鳥の葉がそんなに、簡単に手に入らないことを知っている。

だが親バカな陛下は死の淵から蘇った息子を見て、息子の初恋を叶えたくなってしまった。

陛下は私たち親子を薄情者の嘘つきに仕立て上げ、ハイネ公爵令嬢を王太子を献身的に支える健気な令嬢に仕立て、二人をくっつけようとしている。

こちらとしては、最初から不死鳥の葉を取ってきたら王太子との婚約解消を願い出ようと思ってたので、向こうから婚約破棄されてむしろ清々している。

穏便な婚約解消が、王太子とハイネ公爵令嬢の株を上げるために私の有責により婚は色々と陰口を叩かれるだろうが、そんなことは大した問題ではない。

陛下からは、お釣りがでるほどの慰謝料と報奨金を貰えたから良しとしよう。

陛下も王太子もハイネ公爵令嬢も今は一時の幸せを噛み締めるといい。

それにしても陛下も殿下も何か勘違いしている。

不死鳥の葉が一枚で済むなんて誰が言いました?







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