4 / 5
4話「ただいま」
しおりを挟むそんなこんなで復活した私はロボットになっていた。
なんでも聖女様は前にいた世界で、史上最年少で大学を卒業したロボット工学の第一人者だったらしい。
そこに聖女パワーと神様の不思議パワーが加わり、私をロボットとして復活させることに成功したのだ。
「ティアローズ様、ごめんなざい! ごめんなざい゛っっ!
あ゛、あだしが……コーヒーに゛睡眠薬を入れたばがりに……ご、ごんなお姿に……!」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で、聖女様が抱きついてきた。
近くにあった置き鏡をチラリと覗く。
私の体は機械仕掛けのようですが、容姿や体型は前世のものに近いようです。
どうせならもう少し胸を大きくしウエストを細くし足を長くし十代の頃の顔にしてくれても……いや欲はかくまい。
ワンピースのような布切れが体に巻いてあるのがせめてもの救い。
機械の体でも人様に裸を見られるのは恥ずかしい。
「いや゛違うよコトネ!
ぼ、ぼぐがチョコレートに゛、眠り薬を入れだから……!」
「ぞれは違うぞ息子よ゛!
予が催眠作用のあるお香を……用意したぜいで……!」
陛下と殿下も涙と鼻水をベチャベチャと垂らしている。
謝罪する前にまずは顔を拭いてください。
「皆様、泣くのはおやめください。
私はこうして機械の体を手に入れ戻って参りました!
涙と鼻水を拭いて立ち上がるのです!
やるべきことは山程あるのですから……!」
私は立ち上がり空を見上げ皆を鼓舞する。
瓦礫が散乱した室内、壊れた天井、かすかに漂う焦げた匂い。
天井って壊れると空がよく見えますのね、太陽が眩しいですわ。
私をロボットとして復活させるとき、聖女様がパワーを放出しすぎたのと、神様が力のコントロールを間違ったのと、たまたま雷が鳴っていたのと、色々な要素が重なって城の半分が吹っ飛んでしまったのだ。
だが城にいた人たちは髪がパーマをかけたようにチリチリになり、顔はすすで真っ黒になり、服の一部が破れるだけで済んだ。
「ゲホッ、死ぬかと思った……!」と漏らしながら瓦礫の中から復活してきたので、全員かすり傷一つ負っていない。
だからナイスミドルな陛下も、薄幸の美男子の殿下も、美人と評判の聖女様も、髪の毛がチリチリで顔はすすだらけ、服もボロボロだ。
「くすっ、まずは皆様お顔を洗うところから始めた方がよろしいですわね」
「ティアローズが……」
「笑った……?」
「あたし、ティアローズ様が笑うところ初めて見ました!!」
皆が私が笑ったことに驚いている。
機械の体は感情がストレートに顔に出てやりにくいですわ。
「ティアローズ、僕はこれからは体を鍛えるよ!
吐血しながら筋トレして、仕事をしても吐血しない強い肉体を作るよ!」
「あたしも殿下に治療魔法をかけながら、民に治療を施し、モンスターが侵入しない結界を張りながら、この国の言葉や文化や王太子妃としてのマナーを勉強をします!」
「予も老体に鞭打って働くぞ!
若い頃は二徹や三徹など当たり前だったのだ!
今でも若い者には負けん!」
皆様急にやる気を取り戻しましたね。
「ありがとうございます。
でも無理をなさらないでくださいね」
「ゲホッゲホッゲホッゲホッ!」
言ってるそばからカイン様が吐血。
「カイン様しっかり! ヒール!」
「持病の腰痛が……!」
「陛下しっかり! ヒール! 魔力切れで貧血が……」
陛下は腰痛を再発、聖女様は魔力切れで貧血。
この軟弱ども……。
「皆様心配は無用ですわ!
鋼の肉体を持って生まれ変わった私が、今までの二十倍働きますので、年寄りと病人と貧弱な異世界人はすっこんでいてくださいな!」
私の言葉を聞いた三人はポカンとしている。
あらいいけない。
機械の体だと思ったことをストレートに言ってしまいますわ。
ごめんあそばせ。
60
お気に入りに追加
322
あなたにおすすめの小説
私、幸せじゃないから離婚しまーす。…え? 本当の娘だと思っているから我慢して? お義母さま、ボケたのですか? 私たち元から他人です!
天田れおぽん
恋愛
ある日、ふと幸せじゃないと気付いてしまったメリー・トレンドア伯爵夫人は、実家であるコンサバティ侯爵家に侍女キャメロンを連れて帰ってしまう。
焦った夫は実家に迎えに行くが、事情を知った両親に追い返されて離婚が成立してしまう。
一方、コンサバティ侯爵家を継ぐ予定であった弟夫婦は、メリーの扱いを間違えて追い出されてしまう。
コンサバティ侯爵家を継ぐことになったメリーを元夫と弟夫婦が結託して邪魔しようとするも、侍女キャメロンが立ちふさがる。
メリーを守ろうとしたキャメロンは呪いが解けてTS。
男になったキャメロンとメリーは結婚してコンサバティ侯爵家を継ぐことになる。
トレンドア伯爵家は爵位を取り上げられて破滅。
弟夫婦はコンサバティ侯爵家を追放されてしまう。
※変な話です。(笑)
お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。
四季
恋愛
お前は要らない、ですか。
そうですか、分かりました。
では私は去りますね。
あなたをかばって顔に傷を負ったら婚約破棄ですか、なおその後
アソビのココロ
恋愛
「その顔では抱けんのだ。わかるかシンシア」 侯爵令嬢シンシアは婚約者であるバーナビー王太子を暴漢から救ったが、その際顔に大ケガを負ってしまい、婚約破棄された。身軽になったシンシアは冒険者を志して辺境へ行く。そこに出会いがあった。
私が消えたその後で(完結)
毛蟹葵葉
恋愛
シビルは、代々聖女を輩出しているヘンウッド家の娘だ。
シビルは生まれながらに不吉な外見をしていたために、幼少期は辺境で生活することになる。
皇太子との婚約のために家族から呼び戻されることになる。
シビルの王都での生活は地獄そのものだった。
なぜなら、ヘンウッド家の血縁そのものの外見をした異母妹のルシンダが、家族としてそこに溶け込んでいたから。
家族はルシンダ可愛さに、シビルを身代わりにしたのだ。
【完結】聖女の妊娠で王子と婚約破棄することになりました。私の場所だった王子の隣は聖女様のものに変わるそうです。
五月ふう
恋愛
「聖女が妊娠したから、私とは婚約破棄?!冗談じゃないわよ!!」
私は10歳の時から王子アトラスの婚約者だった。立派な王妃になるために、今までずっと頑張ってきたのだ。今更婚約破棄なんて、認められるわけないのに。
「残念だがもう決まったことさ。」
アトラスはもう私を見てはいなかった。
「けど、あの聖女って、元々貴方の愛人でしょうー??!絶対におかしいわ!!」
私は絶対に認めない。なぜ私が城を追い出され、あの女が王妃になるの?
まさか"聖女"に王妃の座を奪われるなんて思わなかったわーー。
妾を正妃にするから婚約破棄してくれないかと言われました。
五月ふう
恋愛
妾を正妃にしたいから、婚約破棄してくれないか?王は、身を粉にして王のために働いていたウィリにそう言った。ウィリには、もう帰る場所がないのに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる