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2話「呼び出し」
しおりを挟む俺は母親の名前を使い手紙を書き、ソフィア・バウムガルトナーを王宮に呼び出した。
母上の名を使ってあの女を呼び出したのは、王太子である俺の呼び出しより、王妃である母親からの呼び出しの方が断るのが難しいと思ったからだ。
ソフィアは呼び出しに応じて必ず登城する。
そのとき奴を婚約者候補から外し大恥をかかせてやる。
城の門番に金を渡し、ソフィアが登城したら俺の指定した応接室に案内するように指示しておいた。
手紙を送った翌日。
手紙を偽物だと疑うことなくソフィアは王宮にやってきた。
俺は指定した時間より早く応接室に行った。
ソフィアを早く泣かせてやりたくて部屋でじっとしていられなかったのだ。
応接室の扉を開けると、地味な色のドレスの女がソファーに腰掛けていた。
女は俺に気づくとソファーから立ち上がりカーテシーをした。
ソフィア・バウムガルトナーは黄金色の髪に青い瞳の絶世の美少女だと聞いていたが……実物はくすんだ金髪に灰色の瞳のぱっとしない顔立ちの女だった。
噂などのあてにならないな。
やはり俺のクロリスが世界一美しい!
「俺の名前はアルウィン・ドレクスラー。
この国の王太子でお前の婚約者候補だ。
知っているな?」
「王太子殿下お初にお目にかかります。
私は……」
「お前の自己紹介など聞きたくない!」
俺は女の言葉を遮った。
「単刀直入に言う!
俺はお前が嫌いだ!
俺がお前を嫌う理由はわかるな?
お前が王太子付きのメイドであるクロリス・ペトリに対し嫉妬し数々の嫌がらせをしたからだ。
あるときは掃除をしていたクロリスを故意に突き飛ばし彼女の頭の上からバケツの水をかけ、
またある時はクロリスに『男爵令嬢風情が生意気よ』と罵り熱々の紅茶をかけ危うく火傷させかけメイド服を汚し、
またあるときはクロリスが大切にしていた母親の形見のブローチを彼女の目の前で壊した!
そんな心の醜い女は王太子である俺の婚約者候補にふさわしくない!
よってお前をたった今王太子の権限を以て、婚約者候補から外す!」
俺は一気に言い切った。
「そして俺は真実の愛で結ばれたクロリス・ペトリと婚約する!」
王太子である俺にこれだけ言われたのだ、ソフィアは泣いているに違いない。
野暮ったい女の不細工な泣き顔を拝んでやろう。
きっと奴は、
「殿下お許しください! これからは心を入れ替えます! だから捨てないでください!」
と言って俺に泣いてすがりついてくるはずだ。
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