7 / 7
7話「王太子だった俺がドキドキする理由」最終話
しおりを挟む卒業パーティーのあと、ナディアの冤罪はすぐに晴れたこと。
ラーラは清純な女などではなく、食堂に来る客に色目を使うアバズレだったこと。
王都でラーラが誘拐されそうになったのは、過去にラーラが手酷く振った男の逆恨みだったこと。
僕が卒業パーティーでナディアに冤罪をかけ、公衆の面前でナディアとの婚約破棄したことで、僕は廃太子され王位継承権を剥奪されたこと。
間違いを犯した僕を塔に生涯幽閉するか、地方の男爵領に送るかで一カ月間もめていたこと。
被害者であるナディアが僕の厳罰を望まなかったので、僕はラーラとの結婚が許され男爵領に送られるという比較的軽い罰で済んだこと。
優秀なナディアを手放すのを惜しいと判断した父が、ナディアを弟の婚約者にしたこと。
僕は王都で王位継承権と完璧な淑女であるナディアを捨て、平民の尻軽女と結婚した間抜けと言われていること。
ラーラは男爵領に来てからも男遊びを繰り返していたこと。
ラーラが男爵領で男遊びしている噂はニクラス伯爵領にも届いていたこと……などなど。
ルイスの話を聞いて僕は言葉が出なかった。
ラーラの誘拐未遂はラーラの昔の男の仕業でナディアは無実だった?
僕は生涯幽閉されるところだった?
僕の窮地を救ってくれたのがナディア?
ナディアが弟の婚約者になった??
あまりに衝撃的な事実を次々に突きつけられて、思考がまとまらない。
真実を知らなかったのは僕だけだったのだな。
絶望が胸を支配し、心臓が嫌なリズムを刻む。
僕は……間違ってしまったのか……?
放心状態の僕を残し、ルイスは帰って行った。
僕はラーラの墓地の前からしばらく動けなかった。
☆☆☆☆☆
僕はラーラの死後、屋敷にこもるようになった。
現実を認めたくなかったからだ。
使用人が部屋に食事を持って来てくれるが、トレイに載っているのは硬いパンと豆のスープだけ。
僕が男爵の仕事をしないから、さらに家が貧しくなった。
そのうち僕は悪夢にうなされるようになった。
僕の捨てた者たちが僕をあざ笑う夢を……。
悪魔にうなされベッドから飛び起きることも増えた。
そういう日は、目が覚めた後も胸が騒いでいる。
ラーラと出会った時の心が躍るような鼓動ではない。
肌がジリジリと痛み、唇が乾き、体が小刻みに震える……そんな嫌なドキドキだ。
一人でいると「こんなはずじゃなかったのに……」という後悔が押し寄せてくる。
僕はただ愛する人と一緒になりたかっただけなんだ……。
なのに……すべてを失ってしまった。
――終わり――
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
2022年10月3日、アルファポリスに新作小説を5本投稿しました。
こちらもよろしくお願いします!
※5作品とも女性向け、完結保証、最終話まで予約投稿済みです。
※4作品は異世界が舞台の恋愛小説、1作品は現代が舞台のミステリー小説です。
【連載】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」異世界恋愛
【連載】「ループ三回目の悪役令嬢は過去世の恨みを込めて王太子をぶん殴る!」異世界恋愛
【連載】「婚約者は妹のことが好きなようです。妹に婚約者を譲ったら元婚約者と妹の様子がおかしいのですが」異世界恋愛
【連載】「王太子だった俺がドキドキする理由」異世界恋愛
【連載】「また異世界誘拐が流行り始めたんだってよ!」現代/ミステリー
28
お気に入りに追加
342
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中

醜い傷ありと蔑まれてきた私の顔に刻まれていたのは、選ばれし者の証である聖痕でした。今更、態度を改められても許せません。
木山楽斗
恋愛
エルーナの顔には、生まれつき大きな痣がある。
その痣のせいで、彼女は醜い傷ありと蔑まれて生きてきた。父親や姉達から嫌われて、婚約者からは婚約破棄されて、彼女は、痣のせいで色々と辛い人生を送っていたのである。
ある時、彼女の痣に関してとある事実が判明した。
彼女の痣は、聖痕と呼ばれる選ばれし者の証だったのだ。
その事実が判明して、彼女の周囲の人々の態度は変わった。父親や姉達からは媚を売られて、元婚約者からは復縁を迫られて、今までの態度とは正反対の態度を取ってきたのだ。
流石に、エルーナもその態度は頭にきた。
今更、態度を改めても許せない。それが彼女の素直な気持ちだったのだ。
※5話目の投稿で、間違って別の作品の5話を投稿してしまいました。申し訳ありませんでした。既に修正済みです。

婚約破棄された私の結婚相手は殿下限定!?
satomi
恋愛
私は公爵家の末っ子です。お兄様にもお姉さまにも可愛がられて育ちました。我儘っこじゃありません!
ある日、いきなり「真実の愛を見つけた」と婚約破棄されました。
憤慨したのが、お兄様とお姉さまです。
お兄様は今にも突撃しそうだったし、お姉さまは家門を潰そうと画策しているようです。
しかし、2人の議論は私の結婚相手に!お兄様はイケメンなので、イケメンを見て育った私は、かなりのメンクイです。
お姉さまはすごく賢くそのように賢い人でないと私は魅力を感じません。
婚約破棄されても痛くもかゆくもなかったのです。イケメンでもなければ、かしこくもなかったから。
そんなお兄様とお姉さまが導き出した私の結婚相手が殿下。
いきなりビックネーム過ぎませんか?

お姉様は嘘つきです! ~信じてくれない毒親に期待するのをやめて、私は新しい場所で生きていく! と思ったら、黒の王太子様がお呼びです?
朱音ゆうひ
恋愛
男爵家の令嬢アリシアは、姉ルーミアに「悪魔憑き」のレッテルをはられて家を追い出されようとしていた。
何を言っても信じてくれない毒親には、もう期待しない。私は家族のいない新しい場所で生きていく!
と思ったら、黒の王太子様からの招待状が届いたのだけど?
別サイトにも投稿してます(https://ncode.syosetu.com/n0606ip/)
【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。
美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?

双子の妹は私に面倒事だけを押し付けて婚約者と会っていた
今川幸乃
恋愛
レーナとシェリーは瓜二つの双子。
二人は入れ替わっても周囲に気づかれないぐらいにそっくりだった。
それを利用してシェリーは学問の手習いなど面倒事があると「外せない用事がある」とレーナに入れ替わっては面倒事を押し付けていた。
しぶしぶそれを受け入れていたレーナだが、ある時婚約者のテッドと話していると会話がかみ合わないことに気づく。
調べてみるとどうもシェリーがレーナに成りすましてテッドと会っているようで、テッドもそれに気づいていないようだった。

傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~
キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。
両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。
ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。
全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。
エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。
ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。
こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
たかっち様
ほめほめの感想ありがとうございます!(*´∀`*)✨✨✨💕💕💕
ですがなろうさんでもアルファさんでもあまりブクマ伸びなかったんですよね💦(;´∀`)
エブリスタの編集さんもたかっち様のように評価してくれたなら、コンテストに受かったんですけどね。💦賞にかすりもしませんでした(ノД`)シクシク