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1話「偶然の出逢い」
しおりを挟む僕と彼女の出逢いは偶然だった。
街にお忍びで遊びに来ていた僕は護衛とはぐれてしまった。
道を横断しようとして馬車にひかれそうになった僕を、助けてくれたのが彼女だった。
「急に飛び出したら危ないでしょう! 死にたいの!」
と言って本気で怒ってくれた彼女に僕の胸はときめいた。
「道を横断する時は左右を確認する! 子供でも知ってることだよ!」
彼女は眉間にしわを作りそう言った。
「すまない。いつもは護衛が前後左右の確認をするので道を横断するとき左右を確認するという習慣がなかった」
王太子である僕にはいつも護衛がついていた。
僕が道を歩く時は護衛が左右を確認してくれた。
「はぁ? 何それ? 本気で言ってるの? だとしたらあなた相当いいところのおぼっちゃまだね」
そう言って呆れたように笑う彼女の横顔に胸がキュンとなった。
彼女は食堂で働いている平民の少女でラーラといった。
ラーラは栗皮色の髪に琥珀色の瞳、すっと通った鼻筋、形の良い唇、折れそうな細い腰、華奢な体躯、笑顔が可愛い可憐な少女だった。
僕はお礼を兼ねて彼女を食事に誘った。
「こんな服で高級レストランに入れない」という彼女にドレスとアクセサリーと靴をプレゼントした。
レストランで出される料理全てに「美味しい!」と言って顔を綻ばせる彼女を好ましく思った。
くるくると表情の変わるラーラは見ていて飽きなかった。
その後も僕は何度もラーラに会いに行った。
ラーラは僕に下町を案内してくれたんだ。
見るもの聞くもの全てが新鮮で、ラーラと一緒に過ごす間、終始僕の胸は高鳴っていた。
ラーラとずっと一緒にいられたら……だが僕には親が決めた婚約者がいる。
クロル公爵家の令嬢ナディアだ。
ナディアは銀色の髪にラベンダー色の瞳の同い年の少女。
ナディアは美人だと思う。しかし僕はナディアに対し心が華やぐような感情を抱いたことがない。
ナディアとは月に一度婚約者の公爵家を訪れ、一定時間一緒にお茶を飲むだけの関係だ。
ナディアの方は僕に惚れているようだが、僕はナディアに興味がない。
いつも笑顔を浮かべて僕の話にコクコクと頷くだけの綺麗なだけのお人形、それが僕のナディアに対する評価だ。
このまま行けば卒業後すぐにナディアと結婚することになる。
決められたレールの上を進むのが嫌で、僕はラーラにプロポーズした。
「ラーラ僕と結婚して欲しい。
僕は王太子だから親の決めた婚約者と結婚しなくてはいけない。
君は平民だから側室にはできないけど妾として囲うよ。
一生暮らしに不自由はさせない。
身分の差が邪魔して君を正室にできないのは口惜しいけど僕の心は君だけのものだ。
君だけを永遠に愛するよ!」
愛するものを妾として側に置き正室より寵愛する、それが僕の精一杯の反抗だった。
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2022年10月3日、アルファポリスに新作小説を5本投稿します。
※5作品とも女性向け、完結保証、最終話まで予約投稿済みです。
※4作品は異世界が舞台の恋愛小説、1作品は現代が舞台のミステリー小説です。
よろしくお願いします!
【連載】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」異世界恋愛
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